おばけと幽霊(『日本語中級J301』 第6課) スリーエーネットワーク

本文(第1段落)

怪談というと夏の夜のもので、夏はお化けの季節だなどというが、これはちょっとまずい。言うならば、夏は幽霊の季節である。

指導内容

「言うならば」の意味

授業の実際

T :では、この「言うならば」の意味は?
S1:……言いかえると?ほかの言葉で言うと?
T :そうですね。じゃ、どう言いかえてる?
S :……。
T :1番「くわしく言うと」、2番「たとえて言うと」、3番「簡単に言うと」、4番「正しく言う
と」。さあ、どれ?
S :……
T :ヒントは、前に「まずい」があるでしょ。この意味は何? 「おいしくない」ですか?
S2:違う。
T :じゃあ、何?
S3:正しくない。
T :そうです。じゃ、「言うならば」の意味は?
S :4番!
T :正解。じゃ、何が正しくなくて、何が正しいんですか?
S :「夏はお化けの季節」が正しくなくて、「夏は幽霊の季節」が正しい。
T :そうですね。じゃ、お化けと幽霊はどう違う?
S :……。
T :まだ分かりませんね。じゃ、次、読んでみましょう。

コメント

日本語学習者であれば(あるいは私たち日本人も)、「言うならば」は思わず読み飛ばしてしまいそうな表現かもしれません。しかし、そこをあえて立ち止まってその意味を考えてみると、実は分かったつもりで分かってなかったことに気づかされることがあります。そこにこそ読解のツボがあります。西林克彦『わかったつもり』(光文社新書)でも述べられていますが、「わかったつもり」から「分からない」ことの気づきへ、そして「わかった」へ、さらに「よりわかった」へ、これが文章を読み解く非常に大きな要素だろうと思います。中級前半の学習者にぴったりのタスクだと思います。