【再掲】『日本語教育の参照枠』を読む。(その10)
シリーズ
「日本語教育の参照枠」
https://00m.in/nMZtU
を読む。
今回は第10回。
冒頭でもお話ししましたが、
「講習II」で講師を務めている
先生も
「『参照枠』は重要性です。」
とお話しなさっていました。
とにもかくにも、今後は「参照枠」
を軸にすべてが動いていきます。
しっかりインテイクしていきましょう。
以下、再掲。
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前回に引き続き
『日本語教育の参照枠報告』
https://qr.paps.jp/ShqFB
今回は、その10回目。
今日は、
「II 「日本語教育の参照枠」について」
の
「8 漢字を含む文字の扱いについて」
を扱います。
東日本大震災以降、国内の教育機関で
増えた非漢字圏学習者のことを考えると、
漢字の扱いや指導は非常に重要な課題です。
『参照枠』で漢字に対してどういった
スタンスをとっているのかは、
現場の人間としては、やはりしっかり
押さえておきたいところです。
以下。
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8 漢字を含む文字の扱いについて
(1)「日本語教育の参照枠」において
漢字を含む文字を取り上げること
について
○ 日本語には、平仮名・片仮名・漢字の
三つの文字がある。
環境によって自然習得されることもある
話し言葉とは異なり、
文字は意識的な学習によってしか習得さ
れないと言われていることから、
日本語教師には学習者の状況に応じて効
果的な文字学習の指導を行うことが必要
である。
○ 漢字を含む日本語の文字には、学習
者のレベルや置かれた状況によって、
・見て意味が分かればよいもの
・意味と読み方が分かればよいもの
・書けるようになることが望まれるもの
に分けられる。
日本語教師は、学習者のレベルや必要な
言語活動、言語使用場面などによって、
学習者に必要な漢字を含む文字を選定し
指導していく必要がある。
○ 学習の初期段階の学習者の中には
「読み書きは必要ないので、会話だけ勉
強したい」と言う者もいる。
全ての学習者に文字の学習を強制するも
のではないが、
文字は日本文化・習慣とも深く関わって
おり、
漢字を含む文字を学ぶことは日本社会に
対する理解を深め、
日本文化に親しむことにもつながること
から、
日本社会で生活する上での影響を丁寧に
分析し、文字を含めた漢字学習に対す
る動機付けを行い、
学習計画を提案することも大切である。
(2)「日本語教育の参照枠」における
文字の扱いについて
〇 日本語学習者を社会的存在として捉
えるという「日本語教育の参照枠」の理
念から考えると、
生活・留学・就労などの分野や学習者
が置かれた状況や年齢、
生活様式等によって必要な漢字や語彙は
異なることから、
レベルごとの単漢字数や熟語数を一律に
定め、示すことは難しい。
〇 しかし、特に日本社会で生活する者
には、安全安心で文化的な生活を送り、
社会に参加する上でも、平仮名・片仮名
・漢字・ローマ字などの文字に対する
理解が不可欠であり、
一定程度の習得(学習)が望まれること
から、
「日本語教育の参照枠」において、漢字
学習の基礎となる基礎漢字の目安や漢字
学習の方針を示すこととする。
(3)「基礎漢字」の選定について
〇 基礎漢字の検討に当たっては、日本
語教育の主教材や漢字指導教材等から
抽出した基礎漢字調査 25を材料として、
特に「基礎段階の言語使用者」であるA
2までの基礎漢字の目安を示すこととす
る。
○ 基礎漢字とは、日本語を学ぶ外国人
等が各分野やレベルに応じて漢字学習を
行っていく前提となる、
分野共通の核となる漢字を抽出したもの
とする。
○ 基礎漢字選定に当たっての検討の方針
については、以下のとおりとする。
1 分野を問わず、国内外全ての学習者
に共通する漢字とする
2 Aレベルでは読みの正確さや書き方
ではなく、意味の理解を優先する
3 既存の日本語教材分析で抽出した頻
度調査の上位 100 程度を候補とする
4 同類型(数字・曜日など)の漢字は
100 位圏外からでも追加する
5 「漢字出現頻度数調査(3)」(平
成 19 年 文化庁国語課)を参考と
して頻度が低い漢字を除く
○ 海外では、A2レベルの漢字数が定め
られている例がある。
例えば、ヨーロッパでは、フランスの
「後期中等教育修了試験(バカロレア)」
をはじめ、
複数の国で中等教育段階において学習す
べき漢字や数を具体的に定めており、
これらは尊重されるべきものである。
・ヨーロッパ日本語教師会の報告書 26
によれば、ヨーロッパ5カ国のA2レベ
ルの中等教育修了
資格試験における漢字リストの漢字数は
以下のとおりである。
アイルランド 101
英国 200
ドイツ 251
ハンガリー 150
フランス 145
〇 共生社会実現に向けて外国人等に配
慮した情報伝達を行う際に、
基礎漢字以外の漢字に振り仮名を付ける
など、基礎漢字を参考にすることができる。
基礎漢字の目安とレベル・分野別漢字学
習のイメージ
https://00m.in/xEJNE
(4)漢字学習の方針について
漢字の学習においては、以下の点に十分
配慮することが求められる。
○ 学習者のレベルや置かれた状況によっ
て、見て意味が分かればよいものと、
意味と読み方が分かればよいものと、
書けることが望まれるものとを区別する
ことが必要である。
○ 個々の学習者が各レベルの言語活動
を達成する上で必要となる漢字を設定
することが必要である。
その際、学習者に過度な負担とならない
よう、教える漢字の数及び指導方法につ
いて配慮が必要である。
〇 語彙例を併せて示すこととし、読む
こと(意味を理解できること)を中心と
する。
個々の学習者が各レベルの言語活動を達
成する上で必要となる漢字及び語彙の選
定を行うことが重要である。
○ 単に形や書き順を覚えることに注力
するのではなく、漢字の成り立ちや意味、
漢字から平仮名や片仮名が生まれたこと
など、漢字に興味を持たせる工夫をする
ことが大切である。
○ 書くことについては、基本的には住
所・名前など学習者が真に書く必要があ
るものを中心に段階的な指導計画を立て
ることが望ましい。
書くことによって字形を認識できるよう
になることから、
必要に応じて、指導に取り入れることも
有効である。
○ 必要な漢字には個人差があることから、
今後の自律学習につなげるための学習方
法や学びを促進するような活動を行うこ
とが必要である。
○ 学習者が漢字圏出身者か非漢字圏出身
者かによって、
漢字学習における留意点は異なるため、
指導する上で留意する必要がある。
漢字圏学習者の場合、発音や意味の面で
母語の干渉を受けやすく誤用が生じやす
い点について配慮が必要である。
また、非漢字圏学習者の場合は、漢字の
特性に慣れるところから丁寧に指導を行
う等、一層の配慮が必要である。
○ ICTなどの様々な学習リソースを
活用することも現代社会においては有効
な手段となる。
(5)漢字に関する今後の検討課題につ
いて
〇 漢字については、CEFRの正書法の
能力や読字能力などを参考として、言語
能力の一つとして捉え、
レベル別の大まかな枠組みを示すため、
引き続き調査検証を行いつつ、検討を進め
ていくことが適当である。
○ 今後の検討に当たっては、CEFR2020
補遺版において新たに設定された「オンラ
インでのやり取り」、「テクストの仲介」
などについての言語活動を踏まえる必要が
ある。
○ 言語活動の「書くこと」については、日
常生活の中で電子メールやSNSなどでの
やり取りが増え、
ICTを活用するために文字を「入力する」
ことが言語活動として求められるようになっ
てきている。
国語分科会報告「分かり合うための言語コ
ミュニケーション」(平成 30 年 3 月 2 日)
では
話し言葉の要素を多く含む新しい書き言葉を
「打ち言葉」と呼び、
新しいコミュニケーションの形としている。
日本語教育においても、社会状況の変化に
対応した「書くこと」の中において漢字学
習を検討していくことが期待される。
〇 生活・就労・留学などの分野別漢字を
示すためには、対象グループの言語活動調
査を行い、
各分野で必要となる漢字の抽出を行った上
で、作成することが適当である。
〇 ICT技術の発達に伴い、漢字を理解す
るためのツールを使うことにより目的を達
成できるような社会の変化も踏まえつつ、
日本人の漢字使用の現状に照らして、外国
人の日本語教育における漢字の扱いを引き
続き、検討していく必要がある。
〇 学習者に常用漢字 2136 字の理解・習
得を一律に求めるのではなく、実際の日本
人の漢字使用状況等を踏まえて検討する必
要がある。
<参考>
漢字学習の方針を示すための参考資料として、
文化庁国語課が実施した「漢字出現頻度数調
査 (3)」(平成 19 年)がある。
この調査によると、出現頻度上位の 457 字
で新聞、雑誌に出現する漢字の約7割を占
め、
1、063 字で出現する漢字の約9割を占める
という結果が出ている。
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いかがでしょうか。
上記で指摘している通り、漢字1つとっても
学習者によって多様な対応が求められます。
であれば、徒にお上が統一的にまとめようと
しないで、
従来通り、現場に任せておけばいいのでは
ないかと思うのですがいかがでしょうか。
特に、学校サイドとして何かインセンティブが
あるわけでもあるまいし(あっ、言っちゃった)。
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ここまで。