AI不正にどう対処するか。(その5)

シリーズでお伝えしている

「AI不正にどう対処するか。」

今回は、その5回目。

下記論文を読みながら、

寺門・菅谷(2024)「日本語学習における
AI 機械翻訳の活用方法」
https://00m.in/oXiDe

思うことをつらつらと綴っています。

では早速。

前回、機械翻訳の有効性について述べまし
たが、

本論文は、機械翻訳をもろ手で推奨して
いるわけではありません。

技術的な問題で注意すべき点も述べられて
います。

以下。

===================

ただし,ひらがなで書かれた文章は誤訳が起き
やすい点に注意しなくてはいけない。

・私とともだちはたくさんしゃしんをとりまし
 た
・からいとあまいとすっぱいと言ます

これらは学習者が書いた文章を機械翻訳で訳出
した際に,誤訳が起きた文章の例である。

機械翻訳に入力する際に修正を加えなかった場
合,

「私とともだちはたくさんしゃしんをとりまし
 た」

という文章は,

「友達と私はランチをたくさん食べました」

という意味が大きく異なる文章に翻訳された。

「しゃしん」を漢字に修正すると,

「友達と私はたくさん写真を撮りました」

と正確に翻訳された。

「からいとあまいとすっぱいと言ます」

という文章は,修正を加えなかった場合,

「カラ,スイート,サワーと呼ばれています」

という不自然な文章になってしまった。

こちらも先ほどの文章と同様,正しく認識され
ていない「からい」の部分を漢字に修正すると,

「辛くて甘酸っぱいと言われています」

という自然な表現の文章に翻訳された。

初級者が書く文章はひらがなが多く,短い簡単
な文であるため誤訳が起きやすい。

機械翻訳を通して文章を確認する際は,翻訳さ
れた文章の意味を確認し,単語を漢字で表記す
る,

誤字を直すなど自分自身で修正を加える必要が
ある。

初級者の場合,日本語の文章を修正するのが難
しいこともある。

その際は,学習者の使用言語で翻訳した文章を
確認し,修正することで正しい日本語の文章を
確認することができる。

ただし,学習者が自身の使用言語で作成した文
章を日本語に翻訳すると,

難易度の高い単語や表現が多用された文章と
なってしまう可能性がある。

まずは自分自身で日本語の文章を書いてみるこ
とが重要だと考えた。
===================

なるほど。

初級学習者のネックの1つ「漢字」の不使用
が誤訳を生み出す原因になってしまうという
事なんですね。

「正しく翻訳してもらうためにも、漢字を
 覚えた方がいいよ。」

そんな指導になるのでしょうか。

ただ、私が気になったのは、以下の文。

> ただし,学習者が自身の使用言語で作成した文
> 章を日本語に翻訳すると,
>
> 難易度の高い単語や表現が多用された文章と
> なってしまう可能性がある。
>
> まずは自分自身で日本語の文章を書いてみるこ
> とが重要だと考えた。

確かにそういう考え方もあるでしょう。

ですが、学習者が自身の使用言語(=母語)で
書いた文章が、

もともとそれなりに難易度の高い単語や表現で
書かれたものであった場合どうするか、という
問題があります。

成人の学習者であれば、十分あり得ることか
と思います。

そうすると、難易度が高くてもこれほどぴっ
たり来る単語や表現はないし、

いい機会だから覚えた方がいいという判断も
あり得るかと思います。

本論文の調査対象は学生が多いので、上記の
ような指摘になったかと思いますが、

学習者が社会人やビジネスパーソンの場合、
言葉の難易度よりも必要性が優先される
ケースもあるかと思います。

このあたりは、私たち教師も臨機応変に対応
していく必要がりますね。

このあたりの判断で重要なのは、

「最終目標をどう設定するか。」

ということ。

もし、「作文力を上げる」というような目標
であれば、本論文が示す通り、

「まずは自分自身で日本語の文章を書いてみ
 ること」

が重要でしょう。

ですが、もし「魅力的な社内プレゼンをする」
というような目標であれば、

あらかじめ母語で書いた原稿を機械翻訳にか
けて、

アウトプットされた日本語文を内容重視で
修正して、

後はひたすらプレゼン練習ということになる
でしょう。

こちらのほうが、『日本語教育の参照枠』に
近い指導のような気もします。

このあたりも下記セミナーで触れるかもです。

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https://www.kanjifumi.jp/chukyusakubun_seminar/

この論文、まだまだ続きますが、ここで一旦
筆をおきます。

ぜひ最後まで読んでみてくださいね。

寺門・菅谷(2024)「日本語学習における
AI 機械翻訳の活用方法」
https://00m.in/oXiDe


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