『日本語教育の参照枠』を読む。(その12)
前回に引き続き
『日本語教育の参照枠報告』
https://qr.paps.jp/ShqFB
今回は、その12回目。
昨日の田嶋先生のセミナーで、
スイスのCEFRについていろいろ
お聞きしました。
そうしたところ、CEFRのレベル評価
の社会的評価は「参照」(=参考)
などではなく、
就職や進学の際には必ず提出が求められる
非常に重要なものであること、
そして、テスターの養成や試験もしっかり
やっていて、
テスターもその職で生活ができるほどの
待遇が用意されている、
とのことでした。
日本もそれぐらいのレベルで運用する
のであれば、とても意義があると思います。
当然、相応の継続的な予算措置が必要に
なってくるでしょう。
さて、文化庁にその力があるか。
というわけで、
今日は、
「III 日本語能力評価について 」
の
「1 「日本語教育の参照枠」における言語
教育観に基づく評価の三つの理念」
です。
以下。
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III 日本語能力評価について
1 「日本語教育の参照枠」における言語
教育観に基づく評価の三つの理念
(1)「日本語教育の参照枠」における
言語教育観の柱
○ 国内外における日本語学習者の日本語の
習得段階に応じて求められる日本語教育の
内容及び方法を明らかにし、
外国人等が適切な日本語教育を受けられ、
評価され、また自己評価できるようにする
ため、
「日本語教育の参照枠」の考え方に基づき、
日本語能力を判定する参照枠の在り方につい
て策定する。
○ CEFR(2001)参考に、言語知識を測
定する筆記試験等による評価だけでなく、
パフォーマンス評価及びポートフォリオによ
る評価などの多様な評価の在り方を示す。
○ 国内外で様々な日本語能力を測定し判定
する試験が実施され、
個々の指標に基づき、レベルや判定基準等が
設定されているが、学習・教育内容の多様化
が進む中、
各試験はそれぞれ異なる目的をもって開発さ
れるため、
レベルや判定基準は各試験で異なるものが設
定されるものであるが、
一方でそれらの背後に汎用性及び透明性の高
い共通の参照枠を整備し、利用できるように
する必要がある。
○ 「日本語教育の参照枠」では、「日本語教
育の推進に関する法律」第一条に掲げる
「多様な文化を尊重した活力ある共生社会の
実現に資するとともに、諸外国との交流の
促進並びに友好関係の維持及び発展に寄与
する」
ことを理念として示し、
言語教育観の柱として以下の三つを示した。
全ての指標はこの考えに基づいて示されてい
る。
【言語教育観の柱(再掲)】
1 日本語学習者を社会的存在として捉える
学習者は、単に「言語を学ぶ者」ではなく、
「新たに学んだ言語を用いて社会に参加し、
より良い人生を歩もうとする社会的存在」
である。
言語の習得は、それ自体が目的ではなく、
より深く社会に参加し、より多くの場面で
自分らしさを発揮できるようになるための
手段である。
2 言語を使って「できること」に注目する
社会の中で日本語学習者が自身の言語能力
をより生かしていくために、
言語知識を持っていることよりも、その知
識を使って何ができるかに注目する。
3 多様な日本語使用を尊重する
各人にとって必要な言語活動が何か、その活
動をどの程度遂行できることが必要か等、
目標設定を個別に行うことを重視する。
母語話者が使用する日本語の在り方を必ずし
も学ぶべき規範、最終的なゴールとはしない。
(2)「日本語教育の参照枠」における評価
の三つの理念
○ この三つの言語教育観の柱に基づき、
「日本語教育の参照枠」における三つの評価
の理念を示す。
下記の三つの評価の理念のうち、1と2は評
価の目的、
つまり何のために評価を行うかについての理
念であり、
3は、評価を行う上での手法に関する理念で
ある。
【「日本語教育の参照枠」における評価の三
つの理念】
1 生涯にわたる自律的な学習の促進
「日本語教育の参照枠」における評価は、生
涯にわたる自律的な学習の促進 28を目的とす
る。
2 学習の目的に応じた多様な評価手法の提示
と活用推進
「日本語教育の参照枠」では、日本語を使用し
て、何が、どのように、どれくらいできるのか
を言語能力記述文等を用いて具体的に示すとと
もに、
それがどの程度達成できたかを把握するために、
多様な評価手法を提示し、
その活用を後押ししていくための考え方や事例
を示す。
3 評価基準と評価手法の透明性の確保
日本語学習者、教師ばかりでなく、一般の日本
人等にとっても参照しやすい、
日本語で「できること」に注目した評価基準を
示し、
その評価手法の透明性を確保することを通して、
日本語教育に関わる全ての者の間で評価に関す
る共通認識を醸成する。
これにより、日本語学習者がいつ、どこにいて
も、一貫した学びを継続できる環境の整備を目
指す。
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いかがでしょうか。
非常に高い理想だなぁと思いました。
ただ、高い理想を掲げるだけでは意味がなく、
実際にそれに基づいて関係者、関係団体が
しっかり行動しなければ意味がありません。
今後の動向に注視したいですね。