「技能実習制度のあり方」(たたき台)を読む(その7)。
引き続き、法務省のサイト
技能実習制度及び特定技能制度の在り方
に関する有識者会議(第5回)
https://bit.ly/43rLO7M
より。
本シリーズは今回でひとまず終了です。
中間報告書 ( たたき 台 )
https://bit.ly/3L6RgpH
このうち、今回は
「第4 検討の方向性」
についてみていきます。
議論のポイントをまとめていますので、
しっかり見ていきましょう。
以下。
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第4 検討の方向性
1 技能実習制度と特定技能制度の制度
趣旨について
(1) 制度目的(人材育成を通じた国際貢
献)と実態(国内での人材確保や人材
育成)を踏まえた制度の在り方(制度
の存続や再編の可否を含む。)(技能
実習)
○ 技能実習生が国内の企業等の労働力と
して貢献しており、
制度目的と運用実態のかい離が指摘され
ていることにも鑑みると、
今後も技能実習制度の目的に人材育成を
通じた国際貢献のみを掲げたままで労働
者として受入れを続けることは望ましく
ないことから、
現行の技能実習制度を廃止し、人材確保
及び人材育成を目的とする新たな制度の
創設を検討すべきである。
○ 技能実習制度が有する人材育成機能は、
未熟練労働者として受け入れた外国人を
一定の専門性や技能を有するレベルまで
育成することで、
国内で引き続き就労する場合は身に付け
たスキルを生かして活躍でき、国内産業
にも貢献するとともに、
帰国する場合はそのスキルを生かすこと
により国際貢献につながるため、
新たな制度にも目的として位置付けるこ
とを検討すべきである。
(2) 外国人が成長しつつ、中長期に活躍で
きる制度(キャリアパス)の構築(両制
度の対象職種の在り方を含む。)
○ 新たな制度と特定技能制度は、外国人が
キャリアアップしつつ国内で就労し活躍
できるわかりやすい制度とする観点から、
新たな制度から特定技能制度への移行が円
滑なものとなるよう、
その対象職種や分野を一致させる方向で検
討すべきである。
○ 人材育成の観点から、外国人が修得する
主たる技能等について、
育成・評価を行うことによるスキルアップ
の見える化を前提として、
特定技能制度への移行を見据えた幅広い業
務に従事することができる制度とする方向
で検討すべきである。
その際、修得した技能の習熟度を客観的に
測定することは重要であり、
技能評価の在り方についても、技能検定や
技能実習評価試験等の運用状況も踏まえな
がら、
最終報告書の取りまとめに向けて具体的に
議論していくこととする。
○ さらに、我が国の企業等が魅力ある働き
先として選ばれるために、
外国人や雇用主のニーズに応じて、我が国
で修得した技能等を更に生かすことができ
る仕組みとする方向で検討すべきである。
(3) 受入れ見込数の設定等の在り方(特定技
能制度における現行の取扱いを含む。)
○ 人材確保をも目的とする制度において、国
内の人手不足状況に対して的確に対応する
ために、
人手不足状況の確認や受入れ見込数の設定
については、
様々な関係者の意見やエビデンスを踏まえ
つつ判断がされる仕組みとするなど透明性
や予見可能性を高める方向で検討すべきで
ある。
2 人権侵害の防止その他外国人にとっても
我が国にとってもプラスとなる仕組みとす
るための方策について
(1) 転籍の在り方(技能実習)
○ 現行の技能実習制度では、限られた時間内
に計画的かつ効率的に技能等を修得する観
点から、
一つの実習先で実習を行うことを原則とし
ているが、
新たな制度においては、人材育成そのもの
を制度趣旨とすることに由来する転籍制限
は残しつつも、
制度目的に人材確保を位置付けることから、
制度趣旨及び対象となる外国人の保護を図
る観点から、
従来よりも転籍制限を緩和する方向で検討
すべきである。
○ その際、転籍制限の在り方については、
受入れ企業等における人材育成に要する期
間、
受入れ企業等が負担する来日時のコスト、
産業分野や地方における安定的な人材確保、
我が国の労働法制との関係など新たな制度
の目的である人材確保や人材育成との関係
を踏まえた総合的な観点から、
最終報告書の取りまとめに向けて具体的に
議論していくこととする。
(2) 管理監督や支援体制の在り方
ア 監理団体や登録支援機関の監理及び支援の
在り方(存続の可否を含む。)
○ 日本語能力やスキルレベルが未熟練の外国
人材を海外から積極的かつ円滑に受け入れ、
適切な人材育成等を行うためには、現行の技
能実習制度において監理団体が担っている国
際的なマッチング機能、受入れ企業等に対す
る適正な受入れの監理・支援の機能、
外国人に対する職業生活から日常生活までの
全般的な保護・支援等の機能や、現行の特定
技能制度における登録支援機関が担っている
外国人に対する支援の機能は必要不可欠なも
のである。
○ 他方、現行制度下の監理団体の中には、受
入れ企業等における人権侵害や不適正な就
労を防止・是正できていない団体も少なくな
く、
そのような団体は厳しく適正化又は排除して
いく必要がある。
また、現行制度の登録支援機関についても、
法人か個人かを問わず登録できることから、
その中には外国人に対する職業生活から日常
生活までの全般的な支援を行うことができな
いものも少なくなく、同様に是正が必要であ
る。
○ 新たな制度においては、監理団体は、国際
的なマッチング機能や受入れ企業等や外国人
に対する支援等の機能を適切に果たすことが
できる優良な団体のみが認められるようにす
るため、
受入れ企業等からの独立性・中立性の確保や、
監理・保護・支援に関する要件を厳格化する
方向で検討すべきである。
その要件については、特定技能制度における
登録支援機関の機能や要件を含めて、
最終報告書の取りまとめに向けて具体的に議
論していくこととする。
○ 事業者が安心して優良な監理団体及び登録
支援機関を利用できるように、
その事業活動の評価などを公表し、
特に優良な団体等にはインセンティブを与え
るような方向で検討すべきである。
○ 両制度において、受入れ企業等に対する支援
と外国人に対する支援のそれぞれについて、
監理団体や登録支援機関による支援と自治体
等による支援の適切な役割分担の在り方を検
討すべきである。
イ 国の関与や外国人技能実習機構の在り方
(存続の可否を含む。)
○ 外国人技能実習機構が担ってきた法令に基
づく監督指導や相談窓口などの援助は、
一定の効果があり適正な受入れに不可欠で
あることから、
体制を整備した上で引き続き活用する方向
で検討すべきである。
○ 技能実習生と同様、在留資格「特定技能1
号」の外国人についても、
日本語能力や有する技能等の関係上、職業
生活から日常生活まで一定の支援を要する
が、
その全てを受入れ機関側に委ねることは限
界がある。
また、受入れ機関側に対しても国による中
立的で法令に基づく指導監督を行うことが
適切な場合もある。
したがって、特定技能制度についても、受
入れや支援の実態把握や分析を進めつつ、
登録支援機関の在り方や行政の指導監督体
制の在り方を引き続き検討すべきである。
○ 制度横断的な対応のみならず、業界特有の
事情を踏まえ、適切に対応するためには、
新たな制度においては、業界を所管する省
庁やそのイニシアチブの下にある業界団体
が相互に連携し、
受入れに際しての業界ごとの生産性向上・
国内人材確保の取組や当該取組を行った上
での人手不足状況の確認、
また、受け入れる外国人に対しての受入れ
の支援や業界内の受入れの適正化など、
より良い受入れを後押しする役割を担う方
向で検討すべきである。
また、特定技能制度においても、これらの
取組について、業界を所管する省庁等によ
る更なる対応の強化を検討すべきである。
ウ 国際労働市場の実態及びメカニズムを踏
まえた送出機関や送出しの在り方
(入国前の借金の負担軽減策、MOCの更
なる強化方策を含む。)
○ 国際労働市場においては求人者と求職者が
離れていることから、
その職業紹介のコストを受入れ企業等や外
国人本人などの関係者が負担して監理団体
や送出機関などが介在することで仲介機能
が働いている実態がある。
このプロセスの中に悪質なブローカーや送
出機関が関与し、
外国人本人が不当な費用を負担して多額の
借金を負うことになれば、
来日後の活動に悪影響を及ぼすこともあり
得ることから、
悪質なブローカーや送出機関の排除など更
なる対応を検討すべきである。
○ この点、政府機関自らが国際的な職業紹
介の機能を担うこととしても、
政府機関にたどり着く前に悪質なブロー
カーが介在する可能性は排除されるわけで
はない等の指摘も見られる。
その点も踏まえつつ、新たな制度の仲介機
能については、
国際的な職業紹介のプロセスでの外国人の
負担をできる限り軽減するよう、
職業紹介における費用負担の国際的なルー
ル、
送出国の送出制度や関係法令との整合性、
諸外国の受入れ制度の運用状況、費用対効
果などの総合的な観点から、
最終報告書の取りまとめに向けて具体的に
議論していくこととする。
〇 過大な手数料の徴収の防止や悪質な送出機
関の排除に向けて、
新たな制度においても、相手国との間で実
効的な二国間取決め(MOC)を締結する
など、
外国人材の適正な受入れに関する国際的な
取組を強化する方向で検討すべきである。
(3) 外国人の日本語能力向上に向けた取組
(コスト負担の在り方を含む。)
○ 外国人労働者が来日する際に日常生活及び
職業生活に必要な最低限の日本語能力を有
することは重要であることから、
安定的な人材確保に与える影響なども十分
に考慮しながら、
日本語能力に関する要件化も含めて就労開
始前の日本語能力の担保方策について検討
すべきである。
○ 外国人労働者の来日後においても、引き
続き日本で働き生活していく中では、
日本語能力の向上は重要であり、
適切な技能形成や長期的な就労を可能とす
る上でも必要であることから、
日本語能力が段階的に向上する仕組みを設
ける方向で検討すべきである。
○ 外国人労働者を国内企業等において労働
力として受け入れるに当たり、
外国人労働者に対する来日後の日本語教育
に掛かる費用は、
基本的に受入れ機関の負担として日本語教
育の機会を充実させる方向で検討すべきで
ある。
以上
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結局のところ、
本施策の成功の鍵は、
【日本企業がいかに稼げる体制を
構築できるか。】
にかかっていると思われます。
いくら人手不足と言っても、外国人を
雇用するには、相応のコストが生じます。
言葉も文化も異なる外国人を雇用する
わけですから、
日本人雇用よりも余計にコストがかかる
と考えなければなりません。
また、その負担は雇用主である受入
企業だけではなく、
自治体も負担しなければならないでしょう。
つまり、税金の投入です。
それがいい悪いというのではなく、
私達も相応の負担を覚悟しなければなら
ないということです。
日本はよく、
「一流の従業員と、三流の経営者からなる国」
と言われますが、
一流になるための努力が、いま日本の中小
零細企業の経営者に求められているのでは
ないかと思います。
自戒を込めて。