なぜ、陳君は支援学級に送られたのか。
例えば、一人の外国人児童生徒が
いるとします。
名前は、陳君。国籍は中国。
両親の仕事の都合で日本の小学校に
入学しました。
入学時の日本語力はゼロでしたが、
半年ほど日本語支援を受けたので
生活日本語はまあまあできるように
なりました。
というわけで、日本語支援は終了。
担任の先生も、入学直後は両親も含め
日本語がまったくできなかったため、
対応に苦慮していましたが、
半年もたって日本語ができ、クラスの
友だちとも仲良くやっているようなので
一安心。
ただ、学業は相変わらず低迷。
担任の先生曰く、
「取りあえず日本語の問題はクリア。
学業については、あとは個人の努力
の問題なので、何とかなるでしょう。」
そんな冬のある日。
授業が終わって、ホーム―ルームで。
担任の先生曰く、
「皆さん、今日は寒いので、ちゃんと
制服の上にコートを着て帰りましょう。」
子どもたちは一斉に、
「はーい。」
というが、陳君はけげんな顔をする。
陳:制服の上?
陳君はよくわからないといったような
顔をしながらも、
「先生の言ったことだから。」
と、コートを丁寧にたたみ、おもむろに
頭の上に置いた。
先生:陳君、何やっているの!
コートを着なさい!
陳君は、まわりの子どもを見て、
「そういう意味か。」
とばかりにコートを着た。
担任の先生は、
「この子、大丈夫かしら。
もしかしたら、発達障害なのかも
しれない。
支援学級の先生に相談してみよう。」
かくして、学校は陳君の両親を呼び出し、
支援学級が適切であると説明する。
両親も、事情がよく把握できなまま、
「学校がそういうのなら。」
ということで、言われるままに。
ところが、
陳君があのような行動に出てしまった
のには理由がある。
中国語では、
「制服の上にコートを着る。」
 ̄
という言い方ではなく、
「制服の外にコートを着る。」
 ̄
という言い方をする。
文字通り、コートを制服の外側
に着るからだ。
ところが、担任の先生が「上」と言った
ため、とっさに頭の上に置いてしまった
のである。
決して発達障害によるものではない。
ところが、担任教師も学校側もそのような
事は知る由もなく、
また、生活日本語がある程度できたという
安心感も手伝って、
日本人児童と同じように対応してしまった
のである。
これって、教育現場では決して珍しいこと
ではありません。
原因は、周囲の大人の理解不足。
このギャップを埋められるのは、やはり
私たち日本語教師ではないでしょうか。
「陳君のような児童を出してはいけない。」
そういう思いで本セミナーを企画しました。
【残席5】となっております。
お急ぎください。
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