日本語能力試験N1によく出るN2レベル以下の文法(2)
前回、日本語能力試験N2レベル以下の文法が
N1に出題される理由として、
1.言語形式自体はN2レベル以下でも
意味・用法がN1レベルだから。
2.N2レベル以下で学習したものの、なか
なか習得できない文法項目だから。
の2点があるとお話した上で、1の例として
「はずだ」をご紹介しました。
「はずだ」に限らず「ものだ」「ことだ」
「わけだ」のように形式名詞が絡んだ文型は
要注意です。
なぜなら、「ものだ」「ものの」「ものから」
「もので」のように似たような言語形式が
多く紛らわしいうえに、
「ものだ」であれば、
・子どもの頃、よくこの川で遊んだものだ。
(回想)
・目上の人には敬語を使うものだ。(当為)
・親に向かってよくそんなことが言えたものだ。
(驚嘆・詠嘆)
のように複数の意味用法を持つものが少なく
ないからです。
これらをマスターするためには、なんといっても
折に触れ、復習をするのが一番。
私はよく姉妹版のメルマガ「篠研の日本語教育
能力検定試験対策」で、検定試験受験予定の方に、
「学びは漆塗り」
といって、反復学習の重要性をお伝えしてい
ますが、
日本語学習についてもまったく同じことが
言えるんですね。
と、前説が長くなりましたが、今回は上記の
2つめ、
2.N2レベル以下で学習したものの、なか
なか習得できない文法項目だから。
についてお話します。
これに該当する文法項目の筆頭は、ずばりヴォイス
です。
なぜなら、ヴォイスには
・「視点の統一」という文作成上の操作が必要で
あること(←学習者は結構苦手)
・受身にしても使役にしても、実に幅広い用法が
あること。(特に使役は強制から自責まで幅広い)
・他の言語形式と結びついてさまざまな表現
(慣用的なものも含め)をつくること
(例:~させていただけませんか)
といった特徴があるからです。
そのため、受身、使役はN4以上のすべての試験の
文法問題で、「これでもか!」と言わんばかりに
出題されます。
例えば、N1レベルではこのような問題。
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5年前に植えた庭の桜が、今年初めて花を
( )。
1 咲いた 2 咲いている
3 咲かせた 4 咲いただろう
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正解は、3ですね。
使役自体は、だいたい初級後半で学習
しますが、
この問題は初級で扱う強制や許可の用法
ではありません。
しかも、主語が無生物と、学習者にとって、
見慣れた使役文とは異なる雰囲気。
こうした使役は慣用的な用法とされること
が多いようです。
そう考えると、使役の問題といえども
なかなか難易度が高いですね。
さらに、このような問題も出題されます。
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プリンターの調子が悪くなり、製造会社に
電話で問い合わせたら、向こうの担当者に、
あれこれ質問に答え( )あげく、対応
できないと言われた。
1 させた 2 させられる
3 させる 4 させられた
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正解は4番です。
このように、使役単体だけでなく、N1文型
である「V‐たあげく」との合わせ技で出題
されることもあるんですね。
いかがでしょうか。
このように見てくると、前回と同様、
「使役は既習文型だから、学生も問題なく
正解できるだろう。」
と高をくくっていてはダメで、
手を変え品を変え、あの手この手、四方八方
言っては言わせ、言っては書かせしながら、
「学びは漆塗り」
の如く、繰り返し指導していく必要がある
わけです。
今回は使役に絞ってお話しいたしましたが、
このような文法は、まだまだたくさんあります。
「なるほど。そのあたりをもっと知りたい。」
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