“好き”を仕事にするためには(その2)。
前回の続き。
8月15日放送、『日曜日の初耳学』より。
ゲストは、モーニング娘。を生んだ
アーティストプロデューサー、つんく♂。
インタビューアーは、林修。
つんく♂は、
「天才たちに勝つためには、とにかく
数をこなさなければダメだ。」
と考え、来る日も来る日も曲作りに
明け暮れた。
そして、モーニング娘。のプロデュー
サーをする頃には、
実に、年間100曲もの作品を作るまでに
なっていた。
しかし、これほどの量の曲を作れば、
中には、
「この曲は、ちょっと短すぎるなぁ。」
とか、
「これは、今いちパンチがないなぁ。」
と、自分の中では納得いかないものも
出てくる。
しかし、そこで自分の判断でボツにして
しまっては、
すべてが自分好みの楽曲になってしまい、
ファンの多様なニーズに応えることが
できなくない。
そこで、自分の中では必ずしも満足いか
ない曲であっても、ひとまず関係者に
披露することにした。
そうすると、予想に反して、
「今回の楽曲、ショートでインパクトが
あって、いいですね。」
「この曲を聞くと、なんか癒されます。」
と、意外にいい反応が返ってくることが
あった。
もちろん、中には、やはりボツになった
ものもあったが、
自分の判断だけで曲を選別していたら、
リリースできた曲の数も限られただろうし、
何より全体的に自分好みのもので固められ、
多様なファンの心を掴むことはできなかっ
たはずである。
「なるほど、結果を出すためには、
最後の判断は相手に委ねたほうが
いいんだな。」
そうして、つんく♂は数々の曲を世に出し、
歴代シングル総売り上げ5位の実績へと
繋がったのである。
当時を振り返えり、
自身が好きな音楽で成功できた理由を、
「“好き”を仕事にするためには
好きなことを好きなようにやっては
いけない。
プロである以上ビジネスの成功を考え、
常に結果が出る方法を考えなければ
いけない。」
と述懐する。
◆ ◆ ◆
「好きなことをして生きていく。」
YouTubeのCMのコピーで、一時とても
流行った言葉です。
好きなことをしながら一生暮らして
いけるなんて、こんな素晴らしいこと
はありませんよね。
私が日本語教師という職業を選んだ
のも、根底にはそんな感覚があった
からかもしれません。
ですが、だからといって、自分の
好きなようにやって生計が立てられる
ほど、世の中甘くはない。
自分勝手な教師に日本語を教わろう
などとは誰も思わないでしょうし、
仕事のオファーがなければ、途端に
生活できなくなってしまいます。
そもそも、ビジネスは「他者評価」
が基本。
自分にとって気持ちがいいかどうか
ではなく、
顧客である学習者やクライアントが
自分をどう評価するか、がすべて
なんですね。
そして、その評価にしっかり応え、
その対価として正当な報酬を受け取り
続けられて初めて、
「好きなことをして生きていく」
ことが可能になるのであり、
それを体現できる教師こそが、
「プロの日本語教師」
と言えるのではないか、
そのように思います。