「~てある」の自然で効果的な導入(その1)
いきなりですが、
皆さんは、「~てある」の導入を
どのようになさっていますか。
初級の教科書でよくあるのが、教室に
設置されているものを指して、
「教室にポスターが貼ってあります。」
「教室にテレビが置いてあります。」
というもの。
確かに、間違いではないし、「~てある」
の用法にも沿っています。
ただ、駆け出しのころの私は、この導入に
ちょっと違和感を感じていました。
というのも、そこにわざわざ「~てある」を
使う必然性を感じなかったからです。
「ポスターもテレビも、いちいち言わなくても
見りゃわかるじゃん。」
「そんな説明臭い日本語、わざわざ普段の
生活で言うかなぁ。」
そんな感じです。
とはいえ、他にもっといい導入方法が
思いつかなかったので、仕方なくこの
方法で導入していました。
あれから、25年。
最近、こちらの書籍を読みました。
江田すみれ・堀恵子『習ったはずなのに
使えない文法』くろしお出版
https://amzn.to/3kd8Z1E
の中の、
太田陽子「『文脈化』という視点
-『~てある』の練習の検討を例に-」
の中で、「~てある」の効果的かつ自然な
導入がいくつか紹介されていましたので、
紹介します。
私も、この導入を見たとき、
「なるほど!これなら極めて自然だし、
『~てある』を使う意味がある!」
と、思わず膝を打ちました。
本書では、イラストと合わせて提示して
います。
1つでも気に入ったものがあれば、ぜひ
授業で使ってみてください。
また、本書にあるイラストの説明をしま
すが、できれば、本書を手に取って確認
してみてくださいね。
では、まず1つ目。
自分の自転車に「駐車違反」の札が貼られて
驚いている男性のイラストを見せながら、
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留学生:あの、自転車にこれが貼ってあった
んですけど、なんて書いてあるんで
すか。
友人:あ~、停めちゃいけない場所だったん
ですよ。(p.33)
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2つ目。
クーポン券のイラストを見ながら。
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学生A:このクーポン、まだ使えるかな。
学生B:見せて。あ、ここに31日までって
書いてあるよ。残念!先月で終わり
だったんだ。(p.34)
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3つ目。
食堂で席を探しているイラストを見ながら。
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(混雑する食堂で空いている席を探して
いる。)
学生A:あ、あそこ、空いているんじゃない
ですか。
学生B:あ、荷物が置いてあるますよ。だれ
かいますね。(p.34)
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最後、4つ目。
社員と掃除のおばちゃんが会話している
イラストを見ながら。
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A:寒いと思ったら、窓が開いていますよ。
B:開けてあるんですよ。
A:どうして。
B:さっきまでたばこのにおいがしていた
から。(p.35)
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いかがでしたでしょうか。
どの導入例もとても自然で、なおかつ
「~てある」が効果的に使われています。
ぜひ、「これはいいな。」と思うものが
あれば、授業で使ってみてくださいね。
ところで、上記の導入例が効果的なのは、
たまたまそうなったのではなく、
【効果的な導入を組み立てるための
セオリー】
に沿って作ったから効果的なんですね。
それはすなわち、
「『文脈化』という視点を持つ」
ということ。
プロの教師は、こうした舞台裏の仕組みに
目を向けることが大切です。
続きは、次回に。