日本語の会話の教え方-ロールプレイのやり方(1)
ロールプレイとは、コミュニカティブ活動
の1つで、
学習者を2人組にし、双方にそれぞれ内容
の異なる指示書(これをロールカードと言い
ます)を渡して、
それぞれの指示書に沿って会話活動をする
というものです。
ロールカードの内容は、それぞれ異なり
ますので、
その情報差(これをインフォメーション
ギャップ)を埋めようとして、両者が活発
に会話をするという仕組みです。
で、このロールプレイ、うまくいくと
とても活発で、しかも学習者の会話力を
大きく引き上げることができますが、
授業設計や授業の進め方がうまくできない
と、
何とも言えないしどろもどろな授業に
なってしまいます。
かくいう私も、駆け出しのころは、
たくさんの失敗をしてきました。
そこで、今回から数回にわたって
「ロールプレイのやり方」
と題して、ロールプレイの効果的な
実施方法についてお話ししたいと思い
ます。
で、第1回は
「活動の目的を再確認する。」
です。
学習者にロールプレイをさせる
1番の目的は、
「タスク達成に必要な日本語力を
身につけさせる。」
ということです。
「当たり前じゃないか。」
と思われるかもしれませんが、
実はこれが結構奥深いのです。
この
「タスク達成に必要な日本語力」
とは何ぞや、その中身を分解して
考えてみると、
カナルとスウェインのコミュニケー
ション能力モデルに行き着きます。
(検定試験受験で勉強しましたね(^_^))
すなわち、
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1.文法能力:文法規則に沿って言語を
正しく使用・理解する能力。
2.社会言語能力:相手との社会的関係
や会話の背後にある社会的背
景あるいは文脈に即して適切
に言語を使用・理解する能力。
3.談話能力:複数の文によって談話を
構成し、まとまりのある内容
を効果的に作り出したり、あ
るいはまとまった内容のもの
を理解したりする能力。
4.ストラテジー能力:コミュニケーショ
ンがうまくいかなかった時に、
言い換えや繰り返し、あるいは
言語化されていない部分を推測
することによって、コミュニケ
ーションを修復・維持する能力。
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上記を有体に言うと、
「正しい日本語で(=文法能力)
相手との関係に配慮しながら
(=社会言語能力)
いい感じで話の流れを作り
(=談話能力)
ミスコミにも臨機応変に対応
しする(=ストラテジー能力)」
そんな日本語力を身につけさせれば
いいわけです。
従って、ロールプレイでは、これら
4つの能力を、
学習者の日本語力に応じて引き上げて
いくということが重要になってくる
わけです。
これが、つまりはロールプレイの
目的になるわけですね。
そして、上記の中でも日本語教師が
気をつけなければならないことは、
「ロールプレイ中に、教師が学習者の
会話の中に割って入らないこと。」
です。
なぜなら、学習者がせっかく会話を
通じて談話を自力で作っているのに、
その流れに水を差す形になってしまう
からです。
「だって、学習者の誤用が気になる
んだもの。」
そう思って、思わず会話に割って入っ
て指導する方がいますが、
これをやってしまうと、学習者は、
「あれ、さっきどこまで話したんだっ
け。」
となって、談話を最後まで続けること
ができなくなってしまいます。
正解は、誤用があってもその場では
訂正せず、会話が終わった後に、振り
返りの中で訂正を促す、です。
以上はすべて、検定試験で出題されて
いた内容ですが、
あらためて確認しておいてくださいね。