日本語初級、漢字の授業で非漢字圏学習者に最初 に教えるべきこと
ここ10年で日本語学校でも地域の日本語教室でも、
非漢字圏の学習者が多くなりました。
そんな中、現場の先生方にとって一番の課題は
やはり漢字指導。
「どうやったら、途中で折れることなく漢字を
学習してもらえるか。」
これは、本当に大きな課題ですよね。
ただ、途中で心が折れてしまう学習者を見ていて
思うのは、
「具体的な漢字学習の前の時点で躓いているな。」
ということです。
つまり、
「そもそも漢字とは、どういう文字か。」
ということについての理解ができていない。
理解できていないから、
「ただただ読み方がたくさんあって
字形が複雑なめんどくさい文字」
というイメージから漢字学習を始める。
これでは、途中で折れてしまうのもむべなる
かなです。
こうしたことを避けるために、非漢字圏学習者に
対する漢字指導で一番最初に指導すべきこと。
それは、「表語文字とは何か。」
ということについて、しっかりかつ魅力的に
説明するということです。
表語文字とは、音と意味の両方を併せ持った
文字のこと。
代表的なのが漢字ですが、エジプトの古代文字
ヒエログリフも表語文字にあたります。
例えば、漢字の「山」であれば、
「土地が隆起した部分」という意味と、
訓読み「やま」、音読み「サン・ザン」という
2種類の読みがありますね。
こういう文字を表語文字というわけです。
ところが、多くの非漢字圏学習者の母語の文
字は、「表語文字」ではなく「表音文字」です。
アルファベットを思い起こしていただくとわか
ると思いますが、表すのは音だけです。
だから、1つの文字が意味をあらわすという
ことが、いまいちピンとこないんですね。
だから、授業の最初に「表語文字とは何か。」
ということについて、
しっかりわかりやすく、かつ魅力的に説明する
必要があるというわけです。
では、どうやって説明すればいいのか。
おおむね以下のことを説明すればいいでしょう。
できれば、翻訳付だといいですね。
(1)漢字は、かなと違い1字で「読み」と
「意味」の両方を持っていること。
「例えば、『肉』はどんな意味だと思いますか。」
といいながら、こんなイラストを提示すると、
興味を持ってもらえるのではないかと思います。
http://www.jpf.org.uk/language/kanjifiles/89.PDF
出典はこちら。とっても便利なサイトです。
(2)「読み」は漢字1字で1つではなく、
いくつかあること。
「例えば、英語の『a』も『ア』と読んだり、
『アー』と読んだり『エ』と読んだり、『オー』と
読んだりしますね。読み方は
単語によって違います。日本の漢字も同じです。」
こんなふうに説明すれば、受け入れられやすいの
ではないかと思います。
(3)漢字の「読み」には、「音読み」と「訓読み」
があって、「音読み」は主に中国から来た言葉
を表す時に、
「訓読み」は主にもともと日本にあった言葉を
表す時に使うこと。
「例えば、『学』の音読みは『ガク』で『学校』は
『がっこう』と読みます。
訓読みは『まな』で『学ぶ』で『まなぶ』と読みま
す。」
といった感じです。
(4)漢字を学習するときは、まず漢字の意味を
絵などを交えながら理解する。次に、言葉を
覚えながら読み方を覚える。
その後、書き方を覚えるようにすると、ス
ムーズに身につけられること。
だいたいこんな感じでしょうか。
特に、(1)を魅力的に提示することが肝かな、
と思います。
非漢字圏学習者に対する漢字指導でお悩みの方。
一度試してみてください。