公認日本語教師で期待できること、できないこと。

「公認日本語教師」というのは、令和2年に
文化庁から出された報告書

「日本語教師の資格の在り方について(報告)」
https://bit.ly/39OqPBo

の中で謳われているもので、
(まだ読まれていない方は、是非一読を)

今後日本が多くの外国人を受け入れるにあたり、
充実した日本語教育の実現に向けて

(1)質の高い日本語教師の確保
(2)日本語教師の量の確保
(3)日本語教師の多様性の確保
(4)日本語教師の資質・能力の証明

を目的に、新たな資格を創設しようという流れで
検討されている名称独占資格です。

名称独占資格とは、その資格がなくても仕事に
従事はできるものの、有資格者以外はその名称
を名乗ることができない資格のことです。

この制度によれば、「公認日本語教師」と
いう資格を得るためには、

【要件1】 日本語教育能力を判定する試験合格
【要件2】 教育実習の履修・修了
【要件3】 学士以上の学位

が必要で、特に要件2については、実際に
条件を満たした実習先が全国にどれくらい
あるのか調査があったり、

(ちなみに、大分県下で条件を満たしたのは、
我が別府大学だけでした。)

また、本制度に対して文化庁が後ろ向きな
発言をしたことで、一時、

「公認日本語教師は、なくなるんじゃないか。」

といった話も上がったりました。

皆さんの中には、

「公認日本語教師、これからどうなるん
だろう。」とか、

「私には大卒の学歴がないから、早く検定
試験に合格しなきゃ。」

と、ハラハラしている方も多いと思います。

実は、今月25日に文化庁主催で

「日本語教師の資格に関する調査研究協力者
会議」

があるので、早速傍聴の申し込みをしました。

新たな情報が入りましたら、また皆さんに
お伝えしますね。

というわけで、

前置きが長くなりましたが、今回は、
公認日本語教師制度によって期待できるこ
とと期待できないことについて、

今現在の私見をお話ししたいと思います。

まず、期待できること。

それは、国家資格ということで、社会的
信用があがり、日本語教育界外に対して
契約交渉に有利に働くと考えられること。

世間一般は、まだまだ日本語教育がどのよう
なものか、

外国人に日本語を教えるということがどれく
らいの労力を伴うものなのか、

ほとんど理解していません。

一部上場企業の研修担当者であっても、
外国人社員の日本語研修の企画検討で、

「日本語ゼロですけど、半年でJLPTのN2に
合格させてください。」

といった要望を出してくることも珍しく
ありません。

「日本人だから、日本語ぐらい簡単に
教えられるでしょ。」

という感覚の人も決して珍しくないのです。

そういう中で、

「いやいや、公認日本語教師は国家資格で、
高い専門性がないとできないんですよ。」

という話ができれば、

「へえ、そうなんですか。」

となって、話を有利に運ぶことができます。

なので、これから企業研修やビジネスパー
ソン向けの日本語教育をやっていきたいと
いう方は、

然るべき準備をしておくといいでしょう。

一方、期待できないこと。

それは、既存の日本語学校のビジネス
モデルが変わらない限り、

国家資格化しても日本語教育業界の待遇
改善は見込めない、ということです。

待遇改善というのは、国家資格になるか
否かとは別次元の問題なんですね。

とはいえ、日本語学校勤務というのは
日本語教育界では、大学勤務に次いで
安定したキャリアです。

すでに、日本語学校で専任としてお仕事
をなさっていて、

今の職場に大きな不満がないのであれば、
あまり派手な動きはしないほうがいいかも
しれません。

ただ、今後のことを考えると複数の
収入源を持っておいた方が明らかに
有利です。

専任をしながら、勤務外で副業的にオン
ラインでビジネスパーソンに教えてみる、
とか、

非常勤の方も、複数をかけ持ちしながら、
ビジネスパーソンに教えてみるなど、

時流をとらえて戦略的にキャリアを積む
ことを意識なさるといいでしょう。

中国のことわざに、

「上に政策あれば、下に対策あり。」

というのがあります。

上の政策にいちいち賛否を唱えるより、
上の政策に応じて、適切な対策を打って
いく。

そういう、しなやかかつしたたかな生き
方が、機嫌よく日本語教師をし続ける極意
なのではないかと思います。


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