ボランティアの品格、プロの品格(その2)。
前回、日本語教育にはボランティア
教師もプロの教師も必要で、
共存するためには重要なのはお互いのすみ
わけと相互のリスペクトなのではないか、
というお話をしました。
もちろん、私はこの場で、
▼ボランティアはかくあるべき
▼プロ教師はかくあるべき
というつもりはありません。
どの方も、それぞれのポリシーで活動
なさればいいと思っています。
ただ、これまで多くの日本語教師の方
と接してきて、一定数の方が、
「こんなはずじゃなかった」
とおっしゃるので、
であれば、
最初に各々のスタンスというか、
守備範囲をきめておけば、
(これをここでは「品格」と
表現しました)
無理なく楽しく充実した日本語教師
ライフが送れるのではないですか、
とご提案させていただければと
思う次第なのです。
で、まず、ボランティア教師から
ですが、
よく聞くのが、
「日本語を教えるのが、こんなに
大変だと思わなかった。」
ということ。
これは、とても素晴らしい気づき
だと私は思います。
ここから日本語教育に興味を持って
いただいて、
少しずつ専門的な知識を身につけて
いただけるといいなぁと思います。
一方で、
「授業の準備が思いのほか大変で、
正直しんどい。」
「学習者の要求がどんどん上がってきて
それにこたえるのが大変。」
「せっかく一生懸命授業の準備をして
臨んでいるのに、学習者は簡単に
授業を休む。」
といった話も聞きます。
これでは、確かに
「こんなはずじゃなかった。」
となりますね。
では、どのようなスタンスで臨めばいい
のか。
それは、あくまでも
【自分が機嫌よく、無理なく、楽しく
できる範囲でする。無理はしない。】
ということ。
具体的に言えば、
▼ここまでなら無理なく楽しくできる。
▼これ以上のことはできない。受け入れ
られない。
という線引きを予め決めておくという
ことです。
そして、それを具体的に箇条書きでいい
ので、文章化しておくというのが重要です。
そして、レッスンを始める前にその箇条
書きを学習者と確認して合意しておく。
これがとても重要なのです。
例えば、
・その場で答えられることは答えるが、
授業準備が必要な授業はしない。
・遅刻や欠席は、予め連絡すること。
無断欠席の場合は、授業をやめる。
など。
中には、こういう決め事をすることに
抵抗感を感じる方もいらっしゃいますが、
日本語教室というのは、文化的背景も
ライフスタイルも価値観もかなり違う
人間の集まりです。
「こんなの常識でしょ。
言わなくてもわかるでしょ。」
と思っても、それはかなり無理な注文
と考えておいた方が無難です。
なぜなら、そもそも日本語教室という
のは、さまざまな常識を持った人間が
集う場所ですし、
▼言わなくてもわかる事柄
▼言われてわかる事柄
▼言われてもわからない事柄
が、それぞれ人によって違うというのが
日本語教室という場所だからです。
こういう場所で、予め言葉で合意をとって
おかないと、
ミスコミュニケーション、ひいては
人間関係上のトラブルに発展すること
もあるのです。
とはいえ、学習者の中には、
「先生しか頼れる人がいないので。」
といって、過大に要求してくる場合も
あるかもしれません。
そういう場合は、潔く、
「これ以上をお望みなら、私では難しい
ので、プロの日本語教師を紹介します。」
と言えばいいでしょう。
以上をまとめると、
ボランティア教師としてお勧めする
スタンスは、
1.自分が機嫌よく、無理なく、楽しく
できる範囲でする。無理はしない。
2.できることとできないことを文章化し
授業の前に学習者と確認、合意しておく。
3.自分には無理と思ったら、勇気をもって
プロの日本語教師を紹介する。
参考になれば嬉しいです。
次回は、プロの日本語教師の品格について
お話ししましょう。