学習者の潜在ニーズをあぶり出す方法。

前回、学習者のニーズやウォンツを
掴みにくいのは、

とりもなおさず、学習者自分が自分の
のニーズやウォンツを明確に言語化す
るのが困難だから、

という話をしました。

ということは、

例えば、学習者からニーズを聞いたとしても
それはそれとして聞いておきつつ、

「まだ奥底に言語化されていない
ニーズやウォンツがあるのではないか。」

ぐらいに構えた方がいいということに
なります。

ここはすごく大事なことで、

「学習者が言語化したことがすべて。」

などとゆめゆめ思わないほうがいいん
ですね。

では、学習者の真のニーズやウォンツ
を引き出すには、どうしたらいいので
しょうか。

実は、ニーズとウォンツの聞き出し方は、
少し違うので、

今回は、より根本的なニーズの聞き出し
方をご紹介します。

前回ご紹介した通り、

ニーズは目的
ウォンツは手段

なわけですから、まずはニーズを明確にし、
その後にウォンツにアプローチするのが
定石です。

基本的には、学習者にさらに深掘り質問
をするわけですが、

前提として、自分の考えはある程度日本語
で表現できる、

JLPTで言えばN3かN2ぐらいは欲しいところ。

もし、学習者の日本語力が聞き取り調査
をするにはまだ不十分というのであれば、
できるだけ通訳を介したほうがいいです。

さて、ニーズには、

【顕在ニーズと潜在ニーズ】

があります。

顕在ニーズとは、顧客(ここでは学習者)
がすでに分かっていて、自分で言語化で
きるニーズです。

一方、潜在ニーズとは、学習者自身も
認識していない、

そのため俄かには言語化できない、より
深いニーズのことを言います。

潜在ニーズの方が、学習者にとっては
より根源的なニーズですので、

私たちは、彼らの潜在ニーズを質問に
よって探り当て、明らかにすることで、

彼らのより根源的な問題解決に貢献する
ことが求められるわけです。

では、どのような質問を学習者に投げかけ
ると、彼らの潜在ニーズを明らかにする
ことができるのでしょうか。

彼らの潜在ニーズを引き出す質問、
それは、「どうして?」です。

学習者の顕在ニーズやウォンツ
(学習者によってはウォンツから
しか言えない場合もあります)

に対して、「どうして?」という質問を
もうこれ以上答えようがないところまで
投げかけてみましょう。

そうすると、彼らの潜在ニーズに辿り
つくことができるわけです。

なお、その際、職務質問のようになら
ないためにも、

学習者の発話に対してあいづちを打っ
たり、共感したりすることも大切です。

例えば、このような感じです。

学習者:日本語が読めるようになりたい。
教師 :なるほど。どうしてですか。
学習者:子供が通う学校からの手紙が
読めるようになりたいから。
教師 :どうしてですか。
学習者:水筒やお弁当などの持ち物を
持たせるのを忘れたら、それが
原因で子どもがいじめられないか
心配だから。

つまり、この方の潜在ニーズは、

「子どもが学校でいじめられないように
したい」

になるわけです。

この部分を、学習者自身の口から言わせる
ことが大切です。

なぜなら、それによって学習者自身が自分の
ニーズを再認識することができ、

かつ、自分の潜在ニーズを引き出した教師に
対して信頼を寄せるようになるからです。

先ほどの会話の流れを示すと以下の通りです。

日本語が読めるようになりたい

(どうして)

学校からの手紙が読めるように
なりたいから

(どうして)

子供がいじめられないようにしたい
から

次に、私たち教師は、今の流れの逆を

「どうして」のかわりに「そのために」
という言葉で、学習者といっしょに辿ると、

日本語学習が潜在ニーズと明確に結びつき、

学習意欲を高めた状態で学習をスタート
することができます。

以下のような感じです。

子供がいじめられないようにしたい

(そのために)

学校からの手紙が読めるように
なりたい

(そのために)

日本語が読めるようになりたい

また、ここまで学習者と話すと、ウォンツの
内容もおおかたはっきりしてきます。

では、次の段階として学習者のウォンツを
より明確にするためには、どうすればいい
のでしょうか。

続きは、次回に。


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