オンデマンド授業が自律的学習に繋がらない理由(その3)
シリーズの3回目。
今回でこのシリーズはおしまいです。
前回までの話で、オンデマンド授業が
自律的学習に繋がらない理由がお分かり
いただけたかと思います。
で、今回は、
学習者にどのような教育を提供すれば、
自律的な学習者に育っていくのか。
という話です。
その前に、前提として2つのことを
抑えておく必要があります。
1つは、
「学習者は、教師が思うほど日本語の
勉強が好きだというわけではない
ということを前提に、授業設計を
するほうが無難。」
ということ。
もう1つは、
「教師からの十分な働きかけがなければ、
学習者は自律的な学習者に育っていか
ない。」
ということです。
特に、2つ目は矛盾じゃないかと思わ
れるかもしれませんが、
そもそもコース開始当初の学習者は
自律的ではないわけで、
そこを、最終的には自律的な学習者に
していくわけですから、
自律的な学習者になるように、教師が
しっかりサポートしていく必要がある
わけですね。
では、どのような働きかけをすれば
いいのか。
細かいことを言いだせばいくらでも
ありますが、
今回は、大事な働きかけを2つご紹介
します。
まず1つ目は、
「目標とプロセスを共有する。」
ということ。
最終的にどうなりたいのか。
そして、
そこに到達するために日々どのような
プロセスを踏まなければならないのか。
これを、事あるごとに学習者に考えさせ、
学習者の口から言わせることが重要です。
優れた教師は、同じ生徒に同じ指導を
700回すると言われますが、
学習者の体に沁み込むぐらい、繰り返し
考えさせ、言わせることが重要です。
目標が定まれば、やるべきプロセスも
概ね決まってくるので、
学習者は自然と自律的に行動するように
なります。
ただし、
間違っても、教師が学習者の目標や
プロセスを決めてはいけません。
なぜなら、人から与えられた目標は
学習者にとって真に求める目標では
ないからです。
そんなものを与えられた日には、
学習者は自分の言動に責任を持た
なくなりますし、
そもそも本気になりません。
なので、あくまでも学習者が本当に
求めている目標と、実現可能なプロセス
を考えさせることが大切です。
その上で、教師はプロの立場から
いろいろアドバイスをするといいし、
その過程で、プロセスに変更が出ても
かまいません。
ただし、目標を見失ってはいけないと。
2つ目は、
「学習状況を逐一チェックしながら、
常に褒めたり励ましたりする。」
ということ。
自律的学習がスムーズに進むためには、
学習者自身に、自律的学習を引き起こす
だけの自己効力感や自尊心がなければ
なりません。
自己効力感とは、簡単に言うと
「私はやればできる。」と思えること。
自尊心は「私は尊い存在だ。」と
自分自身を肯定的に捉えられること。
この2つが高ければ、
「俺って、結構すごいやつだし、
やればできるから、やってやるぜ。」
となって、未来の自分に対して肯定的に
なれるので自律的学習に入りやすい。
逆に、この2つが低ければ、
「俺って、つまんないやつだし、
どうせやってもダメだから、やらねぇ。」
となって、未来の自分に対して否定的に
なってしまうので自律的学習に入りにくい
わけです。
で、この自己効力感と自尊心は自力で
高めることもできないことはありませんが、
自力でできる人は、精神的に相当タフな
人で、
一般的な人は、なかなか自力で高める
ことはできません。
なので、教師つまり他力による褒めや励まし
が必要なのです。
教師からの褒めや励ましによって、承認
欲求が満たされ、
それによって、自己効力感と自尊心が高まる
ことで、
学習者は、徐々に自律的学習ができるように
なっていくのです。
つまり、自律的な学習者に育てるためには
学習の方法論より、メンタル面のサポートが
非常に重要になってくるわけです。
オンデマンド授業は一見スマートな学習形態
のように見えますが、
メンタル面のサポートがどうしても手薄に
なってしまうので、離脱率が高くなってしま
うのです。