公認日本語教師がなくなる?(その2-雑多)

前回の話の続き。

事の発端は10月21日に行われた

「日本語教育推進議員連盟 第十三回総会」
の報告
https://bit.ly/3jYWlPQ

の中の報告書

「日本語教師の資格創設及び日本語教育機関
の類型化に関する検討状況」
https://bit.ly/3oWSJlq

の中の、文化庁国語課長柳澤好治氏の
発言。

以下、引用。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<法律に基づく国家資格とすることの必要性>

・「日本語教育の質担保や対外的な公証性」を
目的とするならば、

個人や団体等を法律以外の告示などにより国
が認証する制度を創設すること等による担保
も可能であり、

国家資格の創設という手段を取る必要性を法
制的に説明することが難しい。

・日本語教師の要件を強化するのであれば、既
存の法務省告示日本語教育機関の教員要件を
引き上げることで措置ができる。

<定義の明確化>

・日本語教師の業の範囲が曖昧。

日本語教師が教えるプログラムの内容と、教
育責任主体たる日本語教育機関を定義するの
が先であり、

教師という要件だけに着目する理由が乏しい。

・附則第2条の日本語教育機関の範囲と併せて
検討した方が、日本語教師の業の範囲を明確
にしやすい。

(この場合でもなぜ日本語教育機関を法律上
で定める必要性があるのか、整理が別途必
要)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

分かりやすく言うと、

「なにも国家資格などを作らなくても、
現行の運用の範囲で何とかなるんじゃ
ないの。」

「そもそも日本語教師の仕事の範囲が
はっきりしない。教育機関の範囲も
一緒に考えた方がいいんじゃないんの。」

というものです。

今回は、その裏側を少しお話しします。

文化庁の指摘のうち、私が重視して
いるのは後者、

つまり、日本語教師の仕事の範囲が
はっきりしない、という点です。

この裏側には、「学習者が多様性」という
日本語教育ならではの事情があります。

ご存知の通り、日本語学習者には、

▼留学生(大学など・日本語学校)
▼外国人児童生徒
▼技能実習生・特定技能
▼外国人看護師・介護士候補生
▼ビジネスパーソン
▼日本人の配偶者
▼日系ブラジル人・ペルー人
▼中国帰国者
▼難民
▼短期滞在者

などなど。

彼らには、日本語教育はもちろん
のこと、

それに付随して、出席管理やら生活
支援やら、

いろいろな仕事が紐づいているわけ
です。

つまり、日本語教師の業務を一言で
言うことがなかなかできないんですね。

また、彼ら学習者を管理すべき省庁も
それぞれ違う。

例えば、留学生(大学など)や外国人
児童生徒であれば文部科学省。

技能実習生であれば、法務省と厚生
労働省。

上記学習者は国内を想定して書き
ましたが、

海外にだって学習者はいるわけで、

彼らに指導する日本語教師もまた
特有の仕事があるわけです。

ちなみに、海外の日本語教育は、
外務省所管の国際交流基金が
ほぼ一手に担っています。

「縦割り行政」などと言いますが、
複数の省庁にまたがると、

「結局誰が仕切るんだ!」

となって、なかなかまとめられない
のです。

ですが、この問題はもっと深いところに
あります。

それは、本報告書にも書かれています。

以下、引用。

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(2)日本語教育機関の類型化

○省内の検討会で検討を進めているほか、
法務省告示日本語教育機関関係の6団体の
関係者とも意見交換を実施。

○日本語教育機関の範囲や制度の在り方に
ついては、関係団体ごとに要望内容に相違
が大きく、団体全体としての意見の集約が
困難な状況。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

つまり、日本語教育業界自体にまとまりが
ないのです(もうバレちゃっているのね)。

例えば、弁護士であれば「日本弁護士
連合会」が業界の窓口としての役割を
担っていると思いますが、

日本語教育界には、そのような窓口的
組織がないのです。

例えば、上記にある

「法務省告示日本語教育機関関係」

とは日本語学校のことで、

その6団体とは、以下の団体のことです。

▼全国各種学校日本語教育協会
▼全国専門学校日本語教育協会
▼全国日本語学校連合会
▼全日本学校法人日本語教育協議会
▼日本語教育振興協会
▼日本語学校ネットワーク

文化庁が令和元年度に行った調査に
よると、

全国の法務省告示機関(日本語学校数)
は618機関。

たかだか600ぐらいしかないのに、それ
を取りまとめる団体が6つもあるわけ
です。

そして、6つの団体がそれぞれ違った
主張やロビー活動を政府に対して展開
する。

そりゃ、代議士や省庁もいい加減
嫌気がさして来るというものです。

「えっ!日本語教育学会がしっかり
取りまとめてるんじゃないの?」

そう思われるかもしれません。

確かに日本語教育学会は、日本語教育
では最も規模の大きい学会です。

とはいえ、会員数は4,000人弱。

日本語教師は国内外に約12万人
いますから、

とても業界を取りまとめているとは
言えないのです。

かくして、日本語教育界というのは、
よく言えば、

▼多種多様
▼ダイバーシティ

悪く言えば、

▼てんでんばらばら
▼種種雑多

つまり、まとまりがないんですね。
(ほんとそれがよくも悪くもありで。)

そういうこともあって、文化庁から、

「本当に『公認日本語教師』という括りで
全体を束ねられるのか。」

という問題提起が出されたのではないかと
私は理解しています。

それはもう、おっしゃる通り。

ただ、私としては、

「そんなこと、最初から分かっていた
はずでしょ。

それよりも、在住外国人の増加を背景に
日本語教育を国を挙げて強化していかな
ければならないという事情があった。

だから、日本語教育基本法も施行したし、
公認日本語教師の議論もそちらが起こし
たんでしょ。

今さら何言ってるの?」

というのが、今のところの正直な印象
です。

皆さんは、どのような印象を持たれ
ましたでしょうか。

ただ、私は、こうした外野の動きに惑わ
されることなく、

日本語教師としてもっと本質的な活動に
専念すれば、

決して未来は暗くない、むしろ明るいと
考えています。

続きは、次回に。


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