「地域における多文化共生推進プラン」(改訂)を読む(その2)

前回から始まりましたシリーズ

「地域における多文化共生推進プラン」(改訂)を読む。

 

第2回の今日は、

「1.改訂の背景」

を読みます。

ここを読むことで、これまでの経緯や課題、そして
改訂の根拠など、

今までの大きな流れをつかむことができます。

もちろん、中には今年の検定試験と関連する内容も
含まれている可能性も高いです。

なにより、これから現場に立ったときに、目の前の
状況がどういうスキームの中で起こっているのかが
俯瞰的に理解することができるでしょう。

それだけに、日本語教育に携わる人間にとっては
絶対に知っておくべき内容といえます。

かなり長いですが、しっかり読み込んで、流れを
掴んでおきましょう。

以下、本文。

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1.改訂の背景

(1)社会経済情勢の変化と多文化共生施策の変遷

(1)社会経済情勢の変化

(外国人住民数等の動向)

我が国の在留外国人は、人数が増加しているとともに、
多国籍化している。

地方においても、全ての都道府県に加え、全ての市区
町村の人口規模区分の外国人人口が増加している。

また、市区町村では、人口規模や所在地域にかかわらず、
人口に占める外国人人口の割合が高い団体、外国人人口
の増加率の高い団体がある。

(入国管理制度等の改正)

「技能実習制度」は、累次にわたり、技能実習の適正な
実施及び技能実習生の保護を図るための制度改正が行わ
れている。

平成22年7月には、在留資格「技能実習」を創設する
とともに、

雇用契約に基づき行う技能等修得活動について、労働
基準法、最低賃金法等の労働関係法令等が適用される
こととする等の制度改正が施行された。

また、平成 29 年 11 月には、制度の基本理念を定め、
国等の責務を明らかにするとともに、

監理団体の許可、実習実施者の届出及び技能実習計画
の認定の制度を設ける等の制度改正が施行された。

平成 31 年4月には、深刻化する人手不足に対応する
ため、

生産性向上や国内人材の確保のための取組を行っても
なお人材を確保することが困難な状況にある産業上の
分野において、

一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け
入れていく仕組みを構築するため、

在留資格「特定技能」が創設された。

平成24年7月には、中長期在留者に対して在留カードを
交付し、

在留情報の一元的、正確かつ継続的な把握を行う新たな
在留管理制度が導入されたこととあわせて、

外国人住民を住民基本台帳の適用対象に加え、外国人
住民の利便の増進及び市区町村等の行政の合理化を
目的とする制度改正が施行された。

(多様性と包摂性のある社会の実現)

平成27年(2015 年)9月に行われた国連総会において、
誰ひとり取り残さない持続可能で多様性と包摂性のある
社会の実現のため、

2030 年を年限とする17の国際目標を定めた「持続可能な
開発目標( Sustainable Development Goals)」
(SDGs)が全会一致で採択された。

政府は、「SDGs実施指針」(平成28年12月22日
SDGs推進本部決定、令和元年12月20日改定)
において、

あらゆる人々が活躍する社会を優先課題の分野の1つと
している。

また、「誰ひとり取り残さない」とのキーワードで表現
される「包摂性」は、SDGsの基本的理念であり、

政府が優先課題に取り組む際、主要原則の1つとして、
分野を問わず適用することとしている。

地方公共団体においても、多様性の推進を政策課題とし、
担当部署の設置、条例制定、計画策定等に取り組む動き
がある。

(デジタル化の進展)

世界的に急速なデジタル革命(第4次産業革命)が進む
中、

AI・ロボットによる自動化、IoT技術による遠隔・
リアルタイム化等、

新たな技術革新によって、社会課題を解決し、付加価値を
生む「Society 5.0」の実現が期待されている。

特に、概ね1人が1台保有するスマートフォンを活用した
音声翻訳アプリをはじめとする新たなサービスの普及が
進展しつつある。

また、多言語翻訳技術については、総務省が、2025年に
AIによる「同時通訳」を実現するための技術の研究開発
を行っている。

(気象災害の激甚化等)

近年、1時間降水量 50mm 以上の短時間強雨が頻発する
など、気象災害が激甚化しているとともに、

気候変動に伴い、こうした気象災害が今後さらに増加する
ことが予測されている。

また、関東から九州の広い範囲で強い揺れと高い津波が
発生するおそれのある「南海トラフ地震」、

首都中枢機能への影響が懸念される「首都直下地震」が、
今後 30 年以内に高い確率で発生することが予想されて
いる。

こうした中、国は、外国人が必要とする防災・気象情報に
容易にアクセスできるよう、

防災・気象情報に関する多言語辞書を作成し、スマート
フォンアプリ「safety tips」へ反映するなど防災・気象
情報の多言語化を推進している。

(新型コロナウイルス感染症の影響)

世界規模の新型コロナウイルス感染症拡大に伴う影響は
広範で長期にわたることが見込まれ、国内外の社会経済
に波及しつつある。

政府は、感染症が収束したポストコロナ時代を見据えて、
多様性を活かすことにより、

リスクに強い強靱性を高めながら、

「我が国が持つ独自の強み・特性・ソフトパワー」

を活かした「新たな日常」の構築を通じて、

誰ひとり取り残されない、国民の一人一人が「包摂的」で
生活の豊かさを実感できる質の高い持続的な成長の実現を
目指す方針を示している。

新型コロナウイルス感染症が拡大する中、我が国に
おいては、

在留外国人に対して、出入国在留管理庁が、帰国困難者の
「短期滞在」又は「特定活動」への在留資格変更を許可
する等の在留諸申請に関する措置を講じているほか、

新型コロナウイルス感染症の影響により解雇等され、
実習が継続困難となった技能実習生等の雇用を維持する
ため、

関係省庁と連携して雇用維持支援を行っている。

また、国、地方公共団体、地域国際化協会、NHK(NHK
WORLD-JAPAN)、NPO等が多言語での情報発信等を行い、
対応している。

(2)多文化共生施策の変遷

(国における動き)

政府は、国内で就労・生活する外国人について、社会の
一員として受け入れるとともに、

日本人と同様の公共サービスを享受し生活できるような
環境を整備するため

「『生活者としての外国人』に関する総合的対応策」(平成
18年12月25日外国人労働者問題関係省庁連絡会議決定)、

「日系定住外国人施策に関する基本指針」(平成22年8月
31日日系定住外国人施策推進会議決定)、

「日系定住外国人施策に関する行動計画」(平成23年3月31日
日系定住外国人施策推進会議決定)

等を策定し、各般の施策等を実施することとした。

また、政府は、「特定技能」の在留資格創設を踏まえつつ、
外国人材の受入れ・共生のための取組を、より強力に、
かつ、包括的に推進していく観点から、

「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」
(平成30年12月25日外国人材の受入れ・共生に関する関係
閣僚会議決定)

を策定し、

1.外国人との共生社会の実現に向けた意見聴取・
啓発活動等、

2.外国人材の円滑かつ適正な受入れの促進に向けた取組、

3.生活者としての外国人に対する支援及び

4.新たな在留管理体制の構築等の施策

を実施することとしている。

また、総務省は、「地域における多文化共生推進プラン」
(平成18年3月)策定後も、累次にわたって多文化共生の
推進に関する研究会等を開催し、

優良事例を把握して共有や横展開を図るとともに、東日本
大震災や熊本地震の経験を踏まえた防災対策のあり方の検討
等を行ってきた。

(地方公共団体における動き)

地方公共団体において、多文化共生の推進に係る指針・
計画を策定が進んでいる中、

地域の実情に応じて、多文化共生の推進に係る指針・計画に
独自の施策を盛り込む動きが出てきている。

近年、特徴的な事例として、外国人の視点に立ったインバ
ウンド関連事業をはじめとする地域が持つ新たな魅力の創
出や、

地域特産品のグローバルな販路開拓をはじめとする海外との
積極的なつながりによる地域の活力の創出等、

地域の活性化やグローバル化への貢献につながる取組が見
られる。

また、外国人支援の視点を超え、外国人住民を地域社会の
担い手として社会参画を促す取組も見られる。

(2)社会経済情勢の変化等を踏まえた地域における課題

上記(1)の社会経済情勢の変化等を踏まえて、地域に
おける多文化共生の推進に当たって、次のような課題があ
る。

1.コミュニケーション支援

・外国人住民の国籍が多様化する中、地域における外国人
住民等の人数や国籍等の状況に応じて、希少言語ややさし
い日本語を含めて多言語対応が必要である。

・多言語翻訳技術の高度化と社会実装が進んでいる中、
スマートフォンのアプリをはじめICTを積極的に活用し、
多言語対応を図ることが必要である。

・増加を続ける外国人住民が日常生活及び社会生活を地域
住民と共に円滑に営むことができる環境の整備を図るため、
日本語教育を推進することが必要である。

2.生活支援

・外国人住民の増加に伴い、日本語指導が必要な児童生徒が
増加する中、外国人の子供の就学促進や教育環境の整備が
必要である。

・激甚化する気象災害をはじめとする災害、新型コロナウイ
ルス感染症等に備えた外国人対応を進めることが必要であ
る。

・外国人住民の増加に伴い、医療・保健サービス、子ども・
子育て及び福祉サービスについて、多言語対応を図ること
が必要である。

・新たな在留資格創設に伴う外国人材の受入れ環境を整備す
るとともに、大都市圏その他特定地域への集中防止策を講
じることが必要である。

3.意識啓発と社会参画支援

・「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた
取組の推進に関する法律」(平成28年法律第58号)の制定
も踏まえて、

本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けて、
相談体制の整備、教育の充実等及び啓発活動等に努める
ことが必要である。

・ポストコロナ時代の誰ひとり取り残されることない
「新たな日常」を見据えて、多様性と包摂性のある社会
の実現に向けて、

地域社会やコミュニティ等において必要となる人の交流や
つながり、助け合いを充実するための環境を整備すること
が必要である。

・身分に基づく在留資格を持つ者や留学生といった中長期的
な在留展望を持つ外国人住民が増えていること、

外国人住民の年齢構成が若いこと等を踏まえ、地域社会に
おいて、外国人住民がその担い手となる取組を推進するこ
とが必要である。

4.地域活性化の推進やグローバル化への対応

・人口減少・少子高齢化が急速に進展する中、地域の活性化
を通じて、持続可能な地域づくりを推進するため、
外国人住民と連携・協働を図ることが必要である。

・急速に進展するグローバル化に対応し、その恩恵を地域に
もたらすため、外国人住民の知見やノウハウの活用を図る
ことが必要である。

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いかがでしたでしょうか。

メルマガで読むと、なかなか長いですね(苦笑)

ですが、本文ではたかが5ページ分。

いろいろな施策が出ていますが、しっかり整理して
おきましょう。


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