先行オーガナイザーの真の価値は、「マツコの知らない世界」?
前回、先行オーガナイザーについて紹介しました。
「先行オーガナイザー」とは、
「読解活動や聴解活動の際に行われる、本文の
テーマに関する知識を活性化させる活動のこと。」
https://www.kanjifumi.jp/keyword/senkooganaiza/
特に、検定試験試験IIIの読解、聴解の授業実践問題
では、必ず問われる項目ですので、しっかり覚えて
おきましょうね。
と、ここまでが検定試験対策レベルの話。
ここまでなら、検定試験の勉強をなさっている方で
あれば、おおかた知っていることではないかと思い
ます。
逆に言うと、巷の参考書や問題集では、せいぜい
ここまでの記述で終わっているのではないでしょうか。
ですが、プロの世界はここから先があります。
いや、ここから先の話こそ、プロの日本語教師として
生計を立てていけるかどうかにかかわる重要な話なの
です。
先行オーガナイザーの真の価値は、実は学習者の知識の
活性化ではありません。
確かに、知識の活性化も大事なことですが、それだけ
では学習者の心を鷲掴みにし、
「この先生の授業じゃなきゃ、やだ!」
と学習者に言わしめる授業を実践する視点を得ること
はできないのです。
先行オーガナイザーの真の価値は、
【学習者の授業前のテーマに関する知識、そして
テーマに関する知識を言語化する力を知る貴重な
情報源】
という点にあります。
そもそも学習者の心を鷲掴みにするような、魅力的で
価値ある授業というのは、学習者に
【 感動、驚愕、共感、納得 】
といった感情の激しい震えを伴う
「新しいことを知る喜び」
を体感させる授業に他なりません。
まさに、
「マツコの知らない世界」ならぬ
「あなた(=学習者)の知らない世界」
を、授業を通じて提供するところにあるのです。
そして、その喜びを最大化するコツは、
「学習者の現状の知識と言語力」と「学習内容」の
情報のギャップを最大化し、
そのギャップを学習者の能力を出発点にして丁寧に
学習素材を読み解きながら、
学習内容の頂点に学習者をエスコートすることで
実現できるのです。
その頂点こそが、
「マツコの知らない世界」ならぬ
「あなた(=学習者)の知らない世界」
になるわけですね。
そして、その出発点としての情報を得る極めて重要な
作業が、実は先行オーガナイザーなのです。
先行オーガナイザーによって、私たち教師は、学習
者の授業前の段階の
1.テーマに関する知識
2.テーマに関する知識を言語化する力
に関する情報を得ることができます。
1はいわば意味内容に関する情報。
2はいわば言語形式に関する情報。
この意味内容と言語形式は、FonFSとかFonMとか
いった言葉を持ち出すまでもなく、語学の授業を
構成する2大要素なわけで、
この2大要素の絶妙な配合によって授業は成り
立っているわけですから、
私たちプロと言われる教師は、先行オーガナイ
ザーによって学習者の上記1、2の情報を収集し、
それをもとに、
「なるほど、学習者はこのテーマのこの知識は
まだ知らないな。」
「学習者は、まだこの表現や言葉を知らなくて、
歯がゆい思いをしているな。」
と察知して、即座に頭の中で授業の組み立てを
チューニング、
学習者が最も「知る喜び」「出来る喜び」を感じる
ように演出をデザインしながら授業を進めるのです。
これによって、学習者は授業を通じて
【 感動、驚愕、共感、納得 】
という、感情が強く震える体験をし、
その快感を忘れられず、また体験したいと思い、
結果、
「この先生じゃなきゃ、やだ!」
と、学習者の心を鷲掴み状態にすることができるの
です。
この辺りのコツがつかめれば、授業がめちゃくちゃ
楽しくなります。
なぜなら、自分の授業で学習者がどんどんいい方向に
激変していくから。
その姿を目の当たりにすることができるなんて、
教師冥利に尽きると思いませんか。
それはまるで、ギリシャ神話に出てくる、触ったもの
全てを黄金に変える能力を持つミダースのようなもの。
これがプロの日本語教師の領域なのです。