イマージョン教育って、ホントのところはどうなんですか。
「イマージョン教育」とは、学校教育で行われる
バイリンガル教育の1つです。
有名なのは、カナダで行われている英語とフラン
ス語のイマージョン教育。
どういうのかというと、
例えば、月水金は理科の社会も算数もすべて英語
で行い、
火木土は理科も社会も算数もすべてフランス語で
行う。
そうすることによって、英語もフランス語もネイ
ティブ並みに引き上げようというわけです。
イマージョンとは、もともと英語で「浸す」と
いう意味。
つまり、学習者を外国語にどっぷり浸すわけです
ね。
検定試験対策本などを見てみると、
「この教育プログラムは大成功を収めた。」
的なことが書かれていることが多いようですが、
そこは所詮、人間が作ったもの。
「そんなにうまくいくわけないでしょ。」
と思うのは、天邪鬼な私だけでしょうか。
実は、いい面がある反面、問題点もあります
(所詮、人間の作ったものなので。)
だから、私たちとしては、人の評価を鵜呑みに
せず、
長所・短所をしっかり把握しておくことが必要
です。
この点について、
中島和子(2001)『バイリンガル教育の方法-増補改訂版』
アルク
https://amzn.to/3jWybqH
では、カナダのフレンチ・イマージョンの問題点として、
以下の4点をあげています。
なお、上記書籍は2016年に完全改訂版が出されています。
『完全改訂版 バイリンガル教育の方法 (アルク選書)』
https://amzn.to/33bjLgu
=========================
1.間違いが訂正されず、教室内方言ができることこと
ばの間違いを注意されたり、訂正されたりする機会
が少ないため、間違いが定着してしまう。
また英語も分る仲間同士の間でフランス語を使うの
で、安易に英語を混ぜて通じる混用型の2言語使用
になりがちだという。
2.聞く力と話す力の差
教師が視聴覚教材・教具を駆使して、手とり足とり
教えるため、教師中心の授業になりがちである。
そのため生徒の「聞く」力はネイティブ・スピーカ
ーと同じぐらいまで伸びるが、「話す」力は思うよ
うに伸びない。
3.文化学習を伴わない
ネイティブ・スピーカーは教師だけ、家庭ではフラ
ンス語を話す親・兄弟がいないし、町の中でもフラ
ンス語を聞くチャンスがないので、フランスの言語
・文化の直接経験、特に同年齢のフランス語の母語
話者との交流が欠けている。
4.習っても使うところがないため、保持するのが難し
い
フレンチ・イマージョンのいちばんの悩みは、教室
の中で使うだけで、一歩学校を離れると習ったフラ
ンス語を使う場がないことである。(pp.105-106)
==========================
このように問題点もあるイマージョンプログラムですが、
だからといって、このプログラムを否定するわけではあ
りません。
今、入国児童に対する教科言語指導の指導法として注目
されているCLIL (Content and Language Integrated
Learning:内容言語統合型学習)などは、
このイマージョンプログラムを下敷きにしています。
大事なことは、繰り返しになりますが、長所と短所を
しっかり把握しておくこと。
そして、実施の際は長所を最大限活かし、短所を最小限
にするよう工夫すること。
これは、あらゆる教授法や指導法に対する基本姿勢です
ので、覚えておいてくださいね。