『日本語教育の推進に関する基本的方針』を読む(その2)

前回からのシリーズ。

『日本語教育の推進に関する基本的方針』を読む

の第2回目です。

報告書はこちら。

日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進
するための基本的な方針の閣議決定について:文化庁
https://bit.ly/3hTmIai

前回は概要をざっと見てみましたが、今回から
いよいよ本文に進みます。

というわけで、今回は、

「はじめに」

ややもすると読み飛ばされがちな部分ですが、こういう
ところに本報告書の背景や作成の趣旨が書かれています
ので、しっかり目を通しておきましょう。

以下、引用。

============================

はじめに

近年,我が国の在留外国人数は増加している。

「出入国管理及び難民認定法」(昭和 26 年政令第 319 号。
以下「入管法」という。)が改正された平成2年末の約108
万人(総人口の約 0.87%)と比べて,

令和元年末現在で約293万人(総人口の約 2.33%)に増加し,
日本で就労する外国人は,令和元年 10 月末現在で166万人
となり,それぞれ過去最多を記録している。

この間,国内の日本語学習者の増加と多様化が進み,日本語
学習者数は平成2年11月の約6万人から,平成30年11月現在
で約 26 万人に増加している。

また,世界の142か国・地域において日本語教育が実施され
ていること(過去最多),日本語学習者数は約385万人に上
ることが平成30年度の調査(速報値)で確認され,

海外における日本語教育の需要についても引き続き高い水準
を維持している。

政府としては,関係閣僚会議において「外国人材の受入れ・
共生のための総合的対応策」(平成30年12月25日決定,令和
元年12月20日改訂),

「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策の充実につ
いて」(令和元年6月18日)を取りまとめ,

在留資格を有する全ての外国人を社会の一員として受け入れ,
外国人との共生社会を実現するために必要な施策を着実に進
めている。

平成31年4月から,新たな外国人材の受入れ制度(在留資格
「特定技能1号」及び「特定技能2号」)が開始され,今後
も在留外国人の増加が見込まれる中で,

外国人を日本社会の一員として受け入れ,外国人が社会から
孤立しないようにするためには,

日本語を習得できるようにすることが極めて重要である。

我が国に在留する全ての外国人が日本社会で生活していく上
で必要となる日本語能力を身に付け,

教育・就労・生活の場でより円滑に意思疎通できる環境を整
備するため,

学習目標を明確化するとともに,日本語教育の更なる充実が
求められている。

令和元年6月28日には,日本語教育を推進することを目的と
して,「日本語教育の推進に関する法律」(令和元年法律第
48号。以下「日本語教育推進法」という。)が公布,施行さ
れた。

同法において,国は,法の基本理念にのっとり,日本語教育
の推進に関する施策を総合的に策定し,実施する責務を有す
ること等が定められた。

本方針(以下「基本方針」という。)は,同法第10条の規定
に基づき,日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果
的に推進するための基本的な方針を定めるものである。

=============================

こうした報告書には必ずある全体的な統計情報、そして、
これまでの経緯についてはしっかり押さえておきましょう。

ただ、これだけを見ると、

これまでの『総合的対策』や『日本語教育推進基本法』で
示された基本方針と照らしてみて、特に目新しいものはな
いような印象です。

ただ1つ気になるのは、本文中にもあるように、

「外国人を日本社会の一員として受け入れ,外国人が社会から
孤立しないようにするためには,」

と外国人との共生社会を目指す姿勢を示しながらも、

一方で、政府は外国人留学生に対する緊急給付金の支給条件に
一定の学業成績を課すといった、差別とも受け取れる措置を
取っていることです。

例えば、こちらの記事。

▼「明らかな差別」学生への緊急給付金、留学生には“成績
基準“設定で批判殺到 文科省の見解は:Yahoo!JAPANニュース
https://bit.ly/3hTQBHs

これにより外国人に対して、

「日本政府は、言うこととやることがちぐはぐではないか。
信用できない。」

といった印象を与え、ひいては日本が選ばれない国になって
しまわないかと、やや危惧しています。

皆さんはどうお考えですか。


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