『日本語教育能力の判定に関する報告(案)』を読む(その12)。
『日本語教育能力の判定に関する報告(案)』を読む
シリーズの12回目。
今回で最後となります。
原典はこちら。
『日本語教育能力の判定に関する報告(案)』
https://bit.ly/39LrGkw
今回は
「II 日本語教師の資格の概要」
のうちの
「2.日本語教師の資格制度の枠組み」
のうち今回は、
「【9】更新講習」
を見ていきます。
現職日本語教師向けの講習といえば、真っ先に
思い浮かべるのが、文化庁が平成31年3月に出し
た下記報告書でしょう。
「日本語教育人材の養成・研修の在り方について
(報告)改定版」
https://bit.ly/2TpQx8g
ただ、ここで謳われている研修は、今のところ、
日本語学校設置基準の教員要件と連動しているわ
けでもなければ、
自治体や学校現場で日本語教師を雇用する際の条件
となっているわけでもありません。
ただただ、「日本語教師の質の向上」を高らかに
謳っているに過ぎない。
例えば、日本語学校の教員がこの研修を受講する
場合、受講料は学校負担か、それとも個人負担か
それさえ議論されていないわけです。
正直、制度として宙ぶらりんな印象がぬぐえない
というのが、私の率直な印象です。
では、果たして「公認日本語教師」制度は、この
「養成・研修」をどうとらえているのでしょうか。
「更新講習」は、どういった形のものを想定して
いるのでしょうか。
では、さっそく読んでいきましょう。
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【9】更新講習
(1)目的
資格制度創設の目的である日本語教師の質を確保
する観点から,
日本語教師が資格取得後も,求められる資質・能
力を維持できるよう,
平成31年3月「養成・研修報告書」に示された
「必須の教育内容」を踏まえた更新講習を受講す
ることとする。
更新講習は,日本語教師が定期的に最新の知識技
能を身に付けることで,自信と誇りを持って教壇
に立ち,
日本語学習者に質の高い日本語教育を提供できる
ようになることを目指すものである。
公認日本語教師の資質・能力を維持・向上するた
め,一定時間以上の更新講習の受講・修了を求め
ることとする。
なお,更新講習は,初任・中堅等の現職日本語教
師研修とは区別して考えることが適当である。
(2)対象
更新を希望する公認日本語教師に対して,例えば
10年間程度の有効期限を経過する前に,更新講
習の受講を義務付けることとする。
(3)内容
更新講習の教育内容は,資格制度創設の目的であ
る日本語教師の質を確保する観点から,
日本語教師が資格取得後も,求められる資質・能
力を維持できるよう,
平成31年3月「養成・研修報告書」に示された
「必須の教育内容」を踏まえた内容とする。
教育内容のうち,必修・選択の区分及び単位時間
の配分等については,別途検討を行った上で,定
めることが適当である。
(4)講習実施機関及び実施体制
日本語教師養成課程を実施する大学及び文化庁届
出受理日本語教師養成研修実施機関とする。
更新講習の実施方法については,日本語教師が受
講しやすいように時期を設定するとともに,
通信や e ラーニング・放送による受講が可能な仕
組みを認めることが適当である。
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ここでいう「必須の教育内容」とは、先の「養成・研修」
報告書p.43に出てくる表12の中で示された内容です。
一部だけ表示しますね。
https://gyazo.com/cc7976fe321d57e85c6bee4bce3e8a68
もちろん
「「必須の教育内容」を踏まえた更新講習を受講」
とありますから、この内容に沿って行われるわけではなく、
あくまでもこの内容をふまえた内容でなされることになり
ます。
そうすると、本制度は「養成・研修」と連動したものなの
かなとも思いますが、
一方で、
「更新講習は,初任・中堅等の現職日本語教師研修とは
区別して考えることが適当」
と、「養成・研修」とは一定の距離を取っています。
ただ、10年戦士の日本語教師ともなると、日本語学校
でも主任クラスですので、
結構突っ込んだ内容が扱われる可能性は大きいですね。
いずれにしても、(今までの繰り返しになりますが)
常に学び続ける教師、日々成長する教師に、
政府は明るい道を用意していると言えるのではないか
と思います。