『日本語教育能力の判定に関する報告(案)』を読む(その8)。

『日本語教育能力の判定に関する報告(案)』を読む

シリーズの8回目。

原典はこちら。

『日本語教育能力の判定に関する報告(案)』
https://bit.ly/39LrGkw

今回は

「II 日本語教師の資格の概要」

のうちの

「2.日本語教師の資格制度の枠組み」

の後半です。

そのうち今回は、

「資格取得要件1:試験」

を見ていきます。

「新しい試験は、今の試験とどう違うの?」
「やさしくなるの?難しくなるの?」

いろいろ気を揉むこともあるかと思いますが、
いつの時代も変わらないのは、

【コツコツ実力を積み上げた者は必ず残る】

ということです。

とはいえ、気になりますよね(笑)

では、さっそく読んでいきましょう。

=======================

資格取得要件1:試験

(1)受験資格

受験資格は設けないこととする。

例えば,大学在学中に受験・合格し,大学卒業と
同時に,資格取得要件を満たした上で,登録する
ことは可能とする。

(2)内容

日本語教師としての専門性を有する者を判定する
ための試験の内容は,

平成31年3月「養成・研修報告書」に示された
日本語教師の養成修了段階で身に付けておくべき
基礎的な資質・能力を育成するために

必ず実施すべき内容である「必須の教育内容」に
基づくものとする。

試験の内容のほか,試験の方法について今後検討
する必要がある。

<必須の教育内容>

【社会・文化・地域】

(1)世界と日本の社会と文化
(2)日本の在留外国人施策
(3)多文化共生
(4)日本語教育史
(5)言語政策
(6)日本語の試験
(7)世界と日本の日本語教育事情

【言語と社会】

(8)社会言語学
(9)言語政策と「ことば」
(10)コミュニケーションストラテジー
(11)待遇・敬意表現
(12)言語・非言語行動
(13)多文化・多言語主義

【言語と心理】

(14)談話理解
(15)言語学習
(16)習得過程
(17)学習ストラテジー
(18)異文化受容・適応
(19)日本語の学習・教育の情意的側面

【言語と教育】

(20)日本語教師の資質・能力
(21)日本語教育プログラムの理解と実践
(22)教室・言語環境の設定
(23)コースデザイン
(24)教授法
(25)教材分析・作成・開発
(26)評価法
(27)授業計画
(28)教育実習
(29)中間言語分析
(30)授業分析・自己点検能力
(31)目的・対象別日本語教育法
(32)異文化間教育
(33)異文化コミュニケーション
(34)コミュニケーション教育
(35)日本語教育とICT
(36)著作権

【言語】

(37)一般言語学
(38)対照言語学
(39)日本語教育のための日本語分析
(40)日本語教育のための音韻・音声体系
(41)日本語教育のための文字と表記
(42)日本語教育のための形態・語彙体系
(43)日本語教育のための文法体系
(44)日本語教育のための意味体系
(45)日本語教育のための語用論的規範
(46)受容・理解能力
(47)言語運用能力
(48)社会文化能力
(49)対人関係能力
(50)異文化調整能力
===========================

全体的にみると、現行の日本語教育能力検定試験
の出題項目から、

さしあたり緊急性の高くない項目が除かれて、
全体的には、一回り小さくなった感じです

ただし、これはあくまでも

<必須の教育内容>

というものであり、しかも

「試験の内容のほか,試験の方法について今後検討
する必要がある。」

という但し書きがありますので、ふたを開けると
現行の検定試験と出題範囲はあまり変わらなかった
となる可能性は否定できません。

しかも、現行試験にはない項目も散見されます。

例えば、以下。

(3)多文化共生
(10)コミュニケーションストラテジー
(21)日本語教育プログラムの理解と実践
(27)授業計画

(3)は、昨今の日本語教育の流れからいえば
当然の項目ですし、

(10)は、日本人の多くが学校教育でコミュニ
ケーションストラテジーを学んだことがない、

しかも、これから外国人とコミュニケーションを
していかないといけないということを考慮すれば、

確かにうなづける項目です。

さらに、(21)(27)は現場で即戦力となる人材
育成を考えれば、非常に重要な項目ですね。

この辺りも、ある程度内容のイメージはつかめる
ものの、

具体的な部分については、ふたを開けてみなければ
わからない、といったところでしょう。

そう考えると、

「コロナもあるし、今年はスルーして来年がんば
ろうか。」

よりも、

「対策が立てられる今年のうちに合格しておこう」

という方が、賢明な判断ではないかと思います。

よしんば、今年結果を出せなかったとしても、
来年に向けての大きな伏線になることは間違い
ありません。


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