『日本語教育能力の判定に関する報告(案)』を読む(その7)。
『日本語教育能力の判定に関する報告(案)』を読む
シリーズの7回目。
原典はこちら。
『日本語教育能力の判定に関する報告(案)』
https://bit.ly/39LrGkw
今回は
「II 日本語教師の資格の概要」
のうちの
「2.日本語教師の資格制度の枠組み」
の前半です。
いよいよ本報告書の本丸ですね。
ここでは、大きく
【1】資格の名称
【2】資格の社会的な位置づけ
【3】資格の対象
【4】資格取得要件
の4項目で述べられています。
では、さっそく読んでいきましょう。
=======================
2.日本語教師の資格制度の枠組み
【1】資格の名称
日本語教師に求められる資質・能力を有する日本語
教師の資格の名称は,「公認日本語教師」とする。
【2】資格の社会的な位置づけ
「公認日本語教師」は名称独占の国家資格として設
計することが適当である。
「生活者としての外国人」や留学生,就労者,児童
生徒など国内外で増加する日本語学習者に,質の高
い日本語教育を提供する必要があることから,
公認日本語教師が日本語教育の専門家として求めら
れる資質・能力を有することを広く証明するため,
公的な資格とする必要がある。
日本社会におけるコミュニケーションの基盤となる
日本語教育の充実を図ることは,我が国の社会の安
定・活力につながるとともに,
国際競争力の強化にも資するものであることから,
日本語教育に従事する者の資質・能力を担保するこ
とは,日本社会にとって必要不可欠なものである。
また,国内外を問わず,学習者の多様性に対して専
門家としての日本語教師の活躍が期待されており,
公的な資格とすることが適当である。
技能実習や特定技能などの外国人労働者が日本社会
において力を発揮し,住民と共に地域社会の担い手
となっていくためには,
日本語の力が重要な鍵となることは言うまでもない。
留学生施策においても,高度人材の輩出や就職促進
などの成果を上げる上で,日本語教育は重要である。
人を育て社会を作る日本語教師には相当の資質・能
力が求められることから,社会的に認知される公的
な資格とすることが適当である。
資質・能力が証明された公認日本語教師が日本語教
育機関や地域の日本語教室,学校,企業等において
活躍することによって,
外国人の社会包摂に寄与するものである。
【3】資格の対象
「第二言語として日本語を教える体系的な知識・技
能を有し,日本語教師としての専門性を有する者」
を判定するため,
「養成・研修報告書」に示された日本語教師の養成
終了段階を対象とする。
【4】資格取得要件
「公認日本語教師」の資格を取得するための要件は,
以下の三点とする。
資格取得要件1
日本語教師の養成修了段階で身に付けておくべき基
礎的な資質・能力を育成するために必ず実施すべき
内容(以下,「必須の教育内容」という。)に基づ
いた知識の有無を測定する試験の合格を要件とする
ことが適当である。
資格取得要件2
日本語教師に求められる資質・能力のうち,日本語
教師に必要な技能・態度に含まれる実践力を身に付
けるため,教育実習の履修を要件とすることが適当
である。
資格取得要件3
これからの時代,多様な国籍,背景,ニーズを持つ
外国人と向き合い,対応できる日本語教師には幅広
い教養と問題解決能力が必要であることから,
学士以上の学位を有することを要件とすることが適
当である。
なお,年齢・国籍・母語を資格の要件としない。
===========================
おそらく最も関心があるのは、資格取得要件では
ないでしょうか。
資格取得には、要は、
1.現行の検定試験に代わる新たな試験の合格
2.教育実習の履修
3.学士以上の学位
が必要となるわけです。
もちろん、上記の要件を満たさなくても、つまり
「公認日本語教師」の資格を取らなくても、
日本語教師として活動することはできます。
ただし、「自分は公認日本語教師です。」と名乗る
ことはできないということ。
ですので、例えばボランティアで日本語教師をしたい
という方は、ことさら本資格を取らなくてもいいかも
しれません。
ただし、
「自分は公認日本語教師として生計を立てて行きたい。」
という方は、本資格を積極的に取りに行った方がいいで
しょう。
それから、「【3】資格の対象」の中で触れられている
「養成・研修報告書」とは、文化庁が2018年に出したこ
ちらの報告書を指します。
『日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)』
https://bit.ly/32tU3Bp
本報告書は、日本語教師の質の向上を目指して、現職教師
に対しても、そのキャリア(養成、初任、中堅)に応じて
研修を実施していこうというものです。
そのうち、本資格は最初の「養成」に位置付けられていると。
それから、今回の制度設計の大きな目玉は「教育実習の履修」
を義務付けている点です。
もちろん、単に実習時間だけでなく、その内容についても
なかなか細かく規定しています。
つまり、「実践力の向上」を強く狙っているわけですね。
ということは、今後の課題として実習先をどう確保するか
という問題があります。
例えば、我が大分県では、社会人を対象とした日本語教育実
習ができそうな施設がほとんどありません。
法務省認定の日本語学校が県下には1校しかありませんし、
日本語教員養成課程がある大学は別府大学ぐらい
(うちはできるよ(^_^))。
民間の養成講座もありません。
そのようなところは、大分県だけではないと思います。
そのような状況で、全国津々浦々、日本語教育の空白地域を
なくすことができるのか。
ただ、日本語教師を目指す方としては、それはそれとして
準備できるところをしっかり準備することが、未来への扉
を開けることになるのではないかと思います。