『日本語教育能力の判定に関する報告(案)』を読む(その6)。
『日本語教育能力の判定に関する報告(案)』を読む
シリーズの6回目。
原典はこちら。
『日本語教育能力の判定に関する報告(案)』
https://bit.ly/39LrGkw
今回は
「II 日本語教師の資格の概要」
のうちの
「1.日本語教師の資格制度創設の目的」
です。
「はやく制度の中身の話をしてくれよ。」
そんな声が聞こえてきそうですが、
それよりももっと押さえておくべきことは、
「そもそも、なぜこのような制度を作る必要が
あるのか」
という点です。
なぜなら、そもそもの問題意識や目的意識が制度設計
のすべてに影響を与えているからです。
目の前の表面的な現象にとらわれず、
常に本質的な部分に目を向けることが、
【正しい理解と正しい判断、そして正しい行動】
を私たちにもたらしてくれます。
ここでは、大きく
(1)日本語教師の質の確保
(2)日本語教師の量の確保
(3)日本語教師の多様性の確保
(4)日本語教師の資質・能力の証明
の4項目で述べられています。
では、さっそく読んでいきましょう。
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II 日本語教師の資格の概要
1.日本語教師の資格制度創設の目的
外国人等に日本語を教える日本語教師の資質・能力を
確認し証明するための資格を定めて,
日本語教師の質の向上及びその確保を図り,もって国
内外の日本語教育を一層推進し,
多様な文化を尊重した活力ある共生社会の実現・諸外
国との交流の促進及び友好関係の維持発展に寄与する
ことを目的とする。
(1)日本語教師の質の確保
日本が外国人材の受入れに当たり,日本におけるコ
ミュニケーションの基盤となる日本語能力の重要性に
鑑み,
専門家としての資質・能力を有する日本語教師の活躍
の促進による日本語学習環境を整備することは重要で
ある。
外国人に対する日本語教育の質を向上させることは,
外国人が我が国で安心して生活し活躍できる基盤を構
築することにつながる。
更には,日本に来て生活を考える外国人及びその家族
にとって大きな安心材料となる。
現在,地域における「生活者としての外国人」に対す
る日本語教育は,多くのボランティアにより支えられ
ている状況があるが,
外国人の増加及び日本語学習者の多様化等を受け,そ
の負担が増している。
日本語教師の質が確保されることにより,地域におけ
る日本語教育に携わるボランティアの負担を軽減し,
日本語学習環境の向上に大きく資するとともに,ボラ
ンティアの本来の活動を促進することにつながる。
また,専門家としての日本語教師の資質・能力の証明
がなされることにより,
外国人を雇用する企業や事業者,地方公共団体,学校
等が専門家としての日本語教師を雇用する際の判断基
準が明確になり,
質の高い日本語教育の普及につながる。
海外においても日本語学習熱の高まりを受け,世界中
で日本語教育の需要が増している。
資格制度の創設により専門家としての日本語教師像を
示すことにより,
海外における言語としての日本語のプレゼンスの向上
につながることが期待される。
職業としての日本語教師の資質・能力の向上のために
考えられる方策を一つの仕組みで解決するためには,
公的な資格制度を設けることが最も効果的である。
(2)日本語教師の量の確保
公的な資格創設により,専門性を有する日本語教師の
職業としての社会的認知を高めるとともに,
必要となる資質・能力を身に付けるための日本語教師
の養成教育を普及・推進することにより,日本語教師
の量の確保につながる。
政府の働き方改革などにより,女性やシニア層の活躍,
副業・兼業が一層進むことにより,
新たな職業分野として日本語教師への注目が高まるこ
とが考えられる。
資格創設がインセンティブとなり,日本語学習者が多
様化する中で,
多様な職業分野の専門性や豊富な経験を有する人材の
新たな活躍の場となることが期待される。
現在,日本語教育に関する専門的な教育を大学等の教
育課程で受けても,
日本語教師として活躍していない層が相当数存在する
と考えられる。
資格化により専門性を有する人材であることが明示化
されることにより,潜在する日本語教育人材の掘り起
こしにつながる。
日本語教師の量の確保と共に,日本語学習支援者とし
て日本語教室に関わる人材に対する研修機会を充実さ
せることにより,
日本語教育人材の裾野が広がるように努めることも併
せて必要である。
(3)日本語教師の多様性の確保
日本語教育が必要な分野・層が拡大する中,多様な背
景を有する日本語教師が求められている。
そのため,社会人を含む幅広い層に目指される職業と
なることが求められている。
特に,就労者(技能実習や特定技能を含む)及び就労
希望者に対する日本語教育を担う人材が不足しており,
職業分野別あるいは業種別の日本語教育プログラムを
実践できる日本語教師が求められている。
このほか,「生活者としての外国人」や留学生,日本
語指導が必要な児童・生徒等,難民等に対する日本語
教師のほか,海外に赴く日本語教師など,
日本語教育が必要な分野は広がっていることから,日
本語教育の専門性に加えて,様々な経験を生かし多様
な人材が活躍できる職業となっている。
上記の理由から,社会人経験者を対象とした日本語教
師養成研修など,
多様なルートから日本語教師を目指せるよう,配慮す
ることも必要である。
同時に,多様な職業分野で日本語教師の資格が活用さ
れることも考えられる。
例えば,学校教員や人材派遣等の企業の担当者が日本
語教師の資格を取得することにより,
職業現場において日本語教育の質が向上することにつ
ながる。
日本語教師が日本語学習者の多様性に対応する上で,
教師として基礎となる資質・能力を身に付けた者が,
初任・中堅といった段階別の研修あるいは児童生徒や
就労者といった対象別の研修を受けることで,
基礎力を有する日本語教師が一層の専門性を高められ
るようになる。
(4)日本語教師の資質・能力の証明
日本語教師の資格制度は,専門家としての日本語教師
の資質・能力の証明のために,設けるものである。
専門家としての日本語教師の資質・能力の証明がなさ
れることにより,
日本語教育機関をはじめ,外国人を雇用する企業や事
業者,地方公共団体,学校等が日本語教師を雇用する
際の判断基準が明確になり,
質の高い日本語教師が確保しやすくなる。
専門性を有する日本語教師が,自らの資質・能力の証
明を資格制度によって容易に行えるようになることで,
日本語教師を目指す人材の増加とともに,日本語教育
業界における,より良い職業選択につながりやすくな
ることが期待される。
専門家としての日本語教師の資質・能力の証明がなさ
れることにより,
日本語教育機関の教育の質の向上につながり,国内外
の外国人に対する日本語教育の推進にも資すると考え
られる。
なお,本報告においては,日本語教師の養成終了段階
の資格について検討を行ったが,
日本語教師のキャリアパスとして,初任・中堅・日本
語教育コーディネーター等の段階・役割も示されたこ
とから,
今後は日本語教師のキャリアパスに応じた研修等の充
実も併せて必要である。
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いかがでしょうか。
日本語教師の質、量、多様性にこれだけ国が言及するという
ことは、
今後、日本語教師の需要が日本語学校だけでなく、企業や
学校現場、さらには海外に至るまで、
これまでとは比べ物にならないほど増えてくるという未来予
想図を描いているからにほかなりません。
そう考えれば、日本語教師の未来は極めて明るいと言えるで
しょう。
しかしながら、それは同時に、これまで以上に社会的責任を
負うということも意味しています。
だから、【質】にこだわるのです。
であれば、今からしっかりそのための準備をし、
来るべき未来に備えておくべきではないか。
というのが私の考えです。
これは、皆さんに言っているだけではありません。
私自身も、私の果たすべき役割を全うできるよう、
今からしっかり準備をしていくつもりです。
というか、すでにしています。
準備は、早ければ早いほどいい。
すくなくとも、今から
「今からしっかり準備をし、
来るべき未来に備えておこう。」
というマインドセット、そしてそのための第一歩
を踏み始めることが、
チャンスをものにする唯一無二の方法だと確信します。
「何から?どこから?」
何から始めてもかまいません。
大事なのは、【今、最初の一歩を踏み出す】ということ
なのです。