『日本語教育能力の判定に関する報告(案)』を読む(その3)。
『日本語教育能力の判定に関する報告(案)』を読む
シリーズの3回目。
原典はこちら。
『日本語教育能力の判定に関する報告(案)』
https://bit.ly/39LrGkw
やはり、プロであれば一次情報を取りに行く
ということが大事です。
伝言ゲームよろしく、人から聞いた話は、
だいたい尾ひれがついています。
だから、何事も根拠のない話、出所の分からない
情報は、50%OFFで聞くぐらいがちょうどいいです。
というわけで、本題へ(^_^)
今回は、
「I 養成研修体系の中における日本語教師の資格の
位置付け」
の1回目。
今回は
「1.日本語教師の資格や養成に関する課題」
と、
「2.日本語教師の資格の位置付け」
の途中までを扱います。
この項目は、なかなか長く、しかも図が多く出てきます。
ですので、図表については、キャプチャーしたURLを
参照してください。
それでは、読んでいきましょう。
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I 養成研修体系の中における日本語教師の資格の位置付け
1.日本語教師の資格や養成に関する課題
現在,日本語教師の資質・能力を証明する公的な資格はな
い。
出入国在留管理庁が定める「日本語教育機関の告示基準」
の教員要件はあるものの,
日本語教師の資質・能力を正面から担保する仕組みは必ず
しも十分とは言えない。
大学の日本語教師養成課程や民間の日本語教師養成研修の
教育内容及び質が均質とは言えず,
養成された日本語教師の資質・能力にばらつきが生じてい
る。
そのため,日本語教育が必要な学校をはじめとする教育機
関や企業・事業者,地方公共団体等が専門性を有する日本
語教師の確保に苦慮している。
また,ボランティアによる日本語学習支援が行われている
が,人員的にも専門的にも限界である。
2.日本語教師の資格の位置付け
日本語教師としての資質・能力を証明するための「資格」
の具体的な制度設計に当たっては,
「養成・研修報告書」に記載された養成・研修の考え方を
前提とする。
日本語教師の養成・研修の体系は「養成・研修報告書」に
おいて以下の図のとおり示されている。
https://gyazo.com/116d9cb569e153d7b4011c254133533c
「養成・研修報告書」においては,日本語教師を含む日本
語教育人材を役割,段階,活動分野に分け,次のように整
理した。
https://gyazo.com/1b136e670a393b1e45fd521c6b2f4a72
今回検討を行う日本語教師の資格とは,
「日本語学習者に直接日本語を指導する者」
としての日本語教師の資質・能力(専門性)を判定するた
めの制度である。
この資格制度を通じて,日本語教師を目指し,日本語教師
養成課程等で学ぶ者」(いわゆる,養成修了段階の日本語
教師)の資質・能力(専門性)が判定されることになる。
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「1.日本語教師の資格や養成に関する課題」
で重要なのは、まさに最初の、
「現在,日本語教師の資質・能力を証明する公的な資格はな
い。」
という一文。
日本語教育能力検定試験は、あくまでも民間試験。
しかも、認定試験ではなく検定試験。
両者の大きな違いは、認定試験は国や行政機関が
「この人、能力ありますよ」とお墨付きを与える試験。
一方、検定試験は、民間でもなんでも何か資格を与え
る際に、「この人、能力ありますよ」と、その適否を
検定する試験。
当然、前者の方が国や行政がバックについている分、
社会的信用度は高いです。
今回の「公認日本語教師」で行う試験では、特に「認定」
を明言しているようではありませんが、
国が出す資格ですので、認定試験と位置付けられるように
なるでしょう。
そして、もう1つ見過ごせないのが、この一文。
「また,ボランティアによる日本語学習支援が行われている
が,人員的にも専門的にも限界である。」
文化庁が平成30年に出した
『平成30年度国内の日本語教育の概要』
https://bit.ly/38OOQGH
によれば、日本語教師の55.4%がボランティア。
(p.7をご参照ください。)
これでは、
「国家施策としての日本語教育がボランティア頼みじゃ
ダメでしょ。」
ということになりますね。
ということは、日本語教師の職場の確保と待遇改善を
国主導で実施していく、という流れになるのかなという
秘かな期待と、
とはいえ、文化庁、ひいてはその親分である文部科学省は、
比較的予算配分が少なく、しかも決定権の少ない省なので、
「やっぱり日本語教師を薄給でこき使うのかな。」
と、一抹の不安も拭えないというのが、私個人の正直な
印象です。
次に
「2.日本語教師の資格の位置付け」
ですが、
ここで「養成・研修報告書」という言葉が何度か出て
きますが、これは平成31年に文化庁が出した
『日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)』
改訂版
https://bit.ly/2HLf9S2
これは、現在のように検定試験や420時間養成コースの
ように、
日本語教師の人材育成がスタートアップの段階に止まり、
現職教師のスキルアップを目指した組織的な研修プログ
ラムがないということで、
教師養成から初任、中堅、主任と日本語教師のキャリア
に沿った研修プログラムの構築を目指した報告書です。
現在、各段階の研修プログラムが民間団体等で構築、
試行実施されているところです。
(実は、私も一部関わっています。)
この報告書もいずれ本メルマガで読んでみてもいいですね。
というわけで、今回はここまで。