『日本語教育能力の判定に関する報告(案)』を読む(その2)。
前回から始まりました
『日本語教育能力の判定に関する報告(案)』を読む
シリーズ。
国は、これから外国人との共生社会へと大きく舵を
切り、
その言語面のサポートとして日本語教師の育成の一環
として、
【公認日本語教師】
の制度設計を進めています。
今年中には、最終報告書が出され、制度の実装に動き
出すでしょう。
私たちとしては、国が動き出してから動き出したのでは
一歩も二歩も後れを取ってしまうわけで、
(これを世間では「後手後手」といいます。)
今ある情報をしっかりつかみ、その内容や方向性を分析し、
来るべき近い将来に向けて、しっかり準備を進めていく。
ということが、賢者の取るべき行動であると思います。
そこで、第2回目の
『日本語教育能力の判定に関する報告(案)』
https://bit.ly/39LrGkw
今回は「はじめに」を読みます。
こういうところを、決して読み飛ばしてはいけません。
なぜなら「はじめに」にこそ、
・議論の背景やこれまでの経緯
・問題意識、問題の所在
・今後の方向性
・関係者の思い
・報告書の要点
が凝縮されているからです。
「はじめに」の要点、ひいては本報告書のねらい
をまとめると、
【外国人との共生に向けて、質量ともに十分な
日本語教師を確保する】
の一言に尽きるでしょう。
そして、そのための社会的地位の付与ということで
「公認日本語教師」
という制度の成立に乗り出したというわけです。
それでは、読んでいきましょう。
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はじめに
この報告書は,日本語教師のキャリアパスの一環として,
日本語教師の資格制度を整えることにより,優れた日本語
教師を養成・確保して,
我が国の日本語教育の質を向上させることを提言するもの
です。
現在,我が国に在留する外国人は,令和2年現在約283
万人に上り,日本語学習者数も約26万人となっています。
これに対して日本語教師の数は約4万人にとどまっており,
日本語教育機関や学校,
地方公共団体が運営する地域日本語教室等における日本語
教師の量的な確保が課題となっております。
また,在留する外国人の国籍や職業等も多様化しており,
日本語学習ニーズは拡大するとともに,一層の多様化が進ん
でおります。
日本語教育は量的な課題とともに,その質を確保していく
ことも課題となっているのです。
即ち,日本語教育の質を担う専門家としての優れた日本語
教師の養成と確保が社会的な課題となっていると言ってよ
いと思います。
最近,このような在留外国人の増加等に伴い,質の高い日
本語教師の確保が喫緊の課題となる中,
日本語教師の資格に関する新たな立法・政策の動きがあり
ました。
令和元年6月には日本語教育の推進に関する法律が成立を
し,
第21条において,日本語教育に従事する者の養成及び研
修体制の整備,国内における日本語教師の資格に関する仕
組みの整備等の施策を講ずる旨の規定が盛り込まれました。
更に,外国人材の受入れ・共生のための関係閣僚会議が取り
まとめた
「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(改訂)」
(令和元年 12 月 25 日改訂)
においても,日本語教育人材の養成・研修プログラムの改
善・充実・普及を一層図るとともに,
日本語教師の資質・能力を証明する新たな資格を整備する
ことにより日本語教育全体の質の向上を図ることが盛り込
まれております。
一方,文化審議会では,平成24年に国語分科会日本語教
育小委員会の下に設置された
「課題整理に関するワーキンググループ」
において,日本語教育をめぐる状況の変化への対応につい
て検討し,平成25年に
「日本語教育の推進に向けた基本的な考え方と論点の整理
について(報告)」
をとりまとめ,今後日本語教育を推進するに当たっての主
な論点を整理しました。
その中に「論点4 日本語教育人材の養成・研修について」
とともに,「論点5.日本語教師の資格について」が盛り
込まれました。
その後,平成28年度からは,日本語教師の資格に関する
審議に先立ち,論点4の「日本語教育人材の養成・研修に
ついて」の審議を進め,
平成31年3月に,日本語教育人材の役割・段階・活動分
野ごとに求められる資質・能力,教育内容等を整理して,
「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)」
改定版」(以下,「養成・研修報告書」という)
を取りまとめました。
更に,平成30年度後半から,論点5の「日本語教師の資
格について」の審議を開始し,
日本語教師としての資質・能力を証明するための「資格」
の制度設計の枠組みについて,「養成・研修報告書」に記
載された養成・研修の考え方を前提に,
日本語教育小委員会やその下に設置したワーキンググルー
プにおいて,ヒアリングや意見募集を行いつつ,
精力的な審議を重ね,「日本語教育能力の判定について」
(以下,「本報告書」という。)の取りまとめに至ったも
のです。
本報告書は,2部構成となっております。
まず,第1部では,日本語教師のキャリアパスの中で日本
語教師の資格を位置付けています。
日本語教師のキャリアパスについては,平成31年3月4
日の「養成・研修報告書」において示しております。
「養成・研修報告」では,日本語教師のキャリアパスにつ
いて,
日本語教師を目指して学習を行う「養成段階」から,様々
な学習者に対応した研修を受ける「初任段階」,
自立したベテランの日本語教師向けの研修を受ける「中堅
段階」,
多様な学習ニーズに対応してカリキュラムを作成できる
「コーディネーター段階」を設定し,
各段階において学習すべき内容を明示しております。
日本語教師の資格は,これらの段階のうち「養成段階」の
修了,即ち,日本語教師となるための資質・能力を確認す
るための制度とすることとしております。
次に,第2部では,日本語教師の資格の制度的な枠組みを
示しています。
最初に,制度の目的として,日本語教師の質の確保,日本
語教師の量の確保,日本語教師の多様性の確保,日本語教
師の資質・能力の証明の4点を掲げております。
また,資格制度の枠組みとして,
(1)資格の名称を「公認日本語教師」(仮)とすること,
(2)名称独占の国家資格とすることが望ましいこと,
(3)資格の取得要件として,
1)試験,2)教育実習,3)学士を必要とすること,
(4)資格の有効期限を設けること等を提言しております。
平成28年に「日本語教育人材の養成・研修の在り方につ
いて」の審議を開始して以来,
およそ3年間にわたる精力的な審議を経て,今般,本報告
書を取りまとめるに至りました。
本報告書は,共生社会の実現という時代の要請に応えるべ
く,
日本語教師の資格制度を提言することにより,優れた日本
語教師を養成・確保し,日本語教育の質の向上を目指すも
のです。
今後,日本語教育機関,学校,地方公共団体の地域日本語
教室,企業の研修など,多様な日本語教育の場で,
日本語教師の活躍の場が一層広がり,質の高い日本語教育
が各地に行き渡ることにより,
外国人の日本における円滑な社会包摂の実現の一助となる
ことを望むものです。
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おそらく、最も関心がある部分はこちらでしょう。
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また,資格制度の枠組みとして,
(1)資格の名称を「公認日本語教師」(仮)とすること,
(2)名称独占の国家資格とすることが望ましいこと,
(3)資格の取得要件として,
1)試験,2)教育実習,3)学士を必要とすること,
(4)資格の有効期限を設けること等を提言しております。
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「名称独占の国家資格」とは、
資格がなくてもその業務に従事する事はできますが、資格
取得者だけ「公認日本語教師」という資格名称(肩書き)
を名乗ることができ、
資格のない人がこの名称を名乗ることができない資格のこ
とをいいます。
つまり、日本語教師の中にも「公認日本語教師」とそうで
ない日本語教師という2つの格付けができるわけですね。
当然、前者の方が社会的評価は高く、就職や就職後の待遇
にも差が出ると思われます。
そして、特に関心があるでしょう(3)の資格要件。
「1)試験」は、おそらく今の日本語教育能力検定試験に
近いものだろうと考えるのが自然です。
であれば、まだ検定試験に合格していないのであれば、
今年試験を受ける受けないに関わらず、
検定試験合格レベルの知識は、しっかり勉強して今のうち
から身につけておくべきでしょう。
また、「2)教育実習」については、まだ経験がないので
あれば、今のうちからボランティア教室で経験を積むなり、
教育実習に関する書籍を読んで勉強しておくなりしておく
ことが必要でしょう。
さらに、「3)学士」の学歴がないのであれば、通信制で
も放送大学でも、学士を取る準備をする必要があるでしょ
う。
いずれにしても、必要になってから準備を始めても
「後の祭り」
なわけで、必要になったときに間に合うよう今から準備を
進めておくことが、チャンスをものにする要諦です。