「日本語教育能力の判定に関する報告(案)」を読む(3)

先日、文化庁から発表された

「日本語教育能力の判定に関する報告(案)」
https://bit.ly/33JfmP9

を読む。

第3回の今日は、その本丸である

「日本語教育能力の判定に関する報告(案)」
(令和元年11月8日国語分科会)
https://bit.ly/2qTVBFZ

の2回目です。

この「読む」シリーズ、今回初の試みなのですが、
重要文献をじっくり読めて、いいですね。

去年から日本語教育の将来を大きく動かす重要文献が
矢継ぎ早に出されていますが、

意外とじっくり読む機会はないのではないでしょうか。

また、読んだとしても理解が浅かったり、誤解があったり、
早計な判断をしてしまったりといったこともあるかもしれ
ません。

正確に、しっかり理解するという意味で、こういう機会が
あるというのは、我ながらとてもいいかなと考えています。

さて、前置きはこれぐらいにして、今回は、

「1.資格制度の枠組み」

について読んでいきます。

この部分、新制度を正しくイメージするためには、
とても重要な部分です。

では、早速。

「(1)資格制度とは」

ここでは2項目あげられていますが、特に重要なのは、
2つ目の一文です。

○日本語教師の資格の名称は「公認日本語教師」とする。

「公認●●」というのは、例えば「公認会計士」「公認心理師」
などありますが、

日本語教師も、今までのような民間資格ではなく公的資格であると、
ここで謳っています。

ここがすごく重要なんですね。

次の、

「(2)資格取得の要件」

では、以下の4項目が掲げられています(どれも重要)。

○資格制度創設の目的である日本語教師の質を確保する観点から,
第二言語として日本語を教える体系的な知識・技能を有し,日本
語教師としての専門性を有する者を判定するため,平成31年3
月「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)」に
示された日本語教師の養成修了段階で身に付けておくべき基礎的
な資質・能力を育成するために必ず実施すべき内容(以下,「必
須の教育内容」という。)に基づいた知識の有無を測定する試験
の合格を要件とすることが適当である。

○日本語教師に求められる資質・能力のうち,日本語教師に必要な
技能・態度に含まれる実践力を身に付けるため,教育実習の履修
を必須要件とすることが適当である。

○これからの時代,多様な国籍,ニーズ,背景を持つ外国人と向き
合い,対応できる日本語教師には幅広い教養と問題解決能力が必
要であることから,学士以上の学位を有することを要件とするこ
とが適当である。

○年齢・国籍・母語を資格の要件としない。

 

エッセンスをまとめると、以下の3点。

(1)「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)」
を踏まえた内容。

これは文化庁が出した下記報告書のことです。

「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)」
について
https://bit.ly/2Kw1gJm

このサイトでは、概要と本文が掲載されていますが、まずは
概要を見て理解した上で、本文のpp.53-63までを読んでいいた
だけるいいでしょう。

個人的には、後々のことを考えて、「目的・対象別日本語教授
法」の重要性がかなり上がるのではないかと思います。

(2)実習の必須化

実践力重視ということですね。

理想としては、日本語学校で行われているような授業の実習
だけでなく、

外国人児童生徒や技能実習生など、対象別の実習経験も積めれ
ばいいと思います。

(3)学士以上の学位

これはやはり必要でしょう。

ですので、例えば高卒や短大卒の方は、放送大学や通信制大学
などを利用して、今から準備するといいと思います。

続いて、

「(3)試験実施及び登録の体制」

ここでは、4つの項目があげられていますが、最も気になるのは
この文言ではないでしょうか。

○受験機会を確保するため,受験回数,受験地域について検討が
必要である。

かつて年1回実施だった日本語能力試験も、今では年2回。

しかも、開催地も格段に増えました。

おそらく、それが念頭にあるのではないかと思いますが、
実際問題、問題作成や運営負担などから考えると、

受験回数を増やすとしても年2回がいいところではないかと
思います。

2回になるだけでも、受験者の受験スケジュールも今よりは
かなり柔軟にできますね。

 

最後に、

「(4)有効期限の設定」

ここは、以下の1項目のみ。

○日本語教師に求められる資質・能力の維持の観点から,有効
期限を設けることとし,その期限は10年程度が適当である。

つまり、10年経ったら更新の講習を受けてくださいね、という
ことです。

学校教員の資格有効期限も10年だそうですので、それに準じた
形と言えます。

日本語教育界も変化が激しく、

「かつての常識は、今の非常識」

というものも少なくありません。

数十年前の常識を振り回す「化石化教師」にならない
ためにも、この縛りは大事ではないかと思います。

私も検定試験をここ数年毎年受けていますが、これによって
「知の更新」がうまくいっています。

いずれにしても、「様子見」「何もしない」というのが、
自己実現・自己成長のためには一番してはいけないこと。

思いついたことから、とにかく行動してみるというのが
実は一番効率的な判断だと思います。


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