雑学こそが授業に広がりと深みを持たせる。

まだ初級レベルだと、とにかく日常会話をちゃんと
話せるようにすることが至上命題であり、

また、学習者自身もまだ日本語力が限定的なことも
あって、

授業内容も語彙の導入や文型の導入、会話練習など、
とにかく日本語そのものの勉強が主となります。

 

それが、だんだん中級レベルになると、ある程度
まとまった文章、しかもさまざまなジャンルの、
さまざまなテーマの内容のものを読ませたり、

あるいは、それらについてディスカッションを
させたりと、扱う話題がどんどん広がっていく、

また、学習者もある程度日本語で表現をすることが
できるので、

自分の知識や考えをどんどんいうようになって
いく。

つまり、中級以降になると初級に比べると
だんだん言語重視から内容重視の授業になって
いくんですね。

 

そうすると、教師に求められる知識も徐々に
変わってきて、

日本語そのものに関する知識から、広い教養的な
知識や発想が求められるようになるのです。

 

例えば、外国人が理解できない日本人の行動の
1つに「過労死」があります。

どうして死ぬまで働くのか。

日本人だって、別に死ぬほど仕事が好きなわけ
ではないでしょう。

なのに、どうして過労死はなくならないのか。

実は、その根底には宗教観があります。

例えば、一神教たるキリスト教圏の人々にとっての
労働を一言で言うと「罰」です。

かつて、アダムとイブは禁断の果実を食べたことで
神様の逆鱗に触れ、

「お前ら!これからは自分のことは自分でしろ!」

とばかり下界に突き落とされた。

それ以来、自分のことは自分でしなければならなく
なった。

これが労働の始まりです。

だから、キリスト教圏の人々は、労働は神から与え
られた罰のシンボルであり、

従って、労働はしなくて済むならしないほうがいい
できればしたくない、という考えが根底にある。

というわけで、かつての天上の生活を何とか今の
世界に再現できないかというところで生み出した
のが株式会社制度というシステム。

株式会社の株をもった資本家になれば、働かなくても
株の配当金で生活することができますから。

 

一方、神道に基づいた多神教を信奉する日本人に
とっての労働を一言で言うと、「社会的役割」です。

日本人は無宗教という方がいますが、決してそんな
ことはなく、

初詣お宮参りをしたり、家や会社に神棚を飾ったり、
生活のいたるところに神道が浸透しています。

多神教社会では、例えば学問の神様や交通安全の神様、
家内安全の神様など、多くの神々がそれぞれの役割を
担っており、

それぞれの神々がそれぞれの役割を担うことで、社会の
バランスを保っているわけです。

もし、ある神様が自身の役割を放棄すれば、だんだん
社会全体のバランスが崩れ、いたるところで不都合が
生じてしまう。

周りに迷惑をかけてしまう。

だから、それは極力避けたい。

この考え方は、日本人の思考や行動にも深いレベルで
強い影響を与えており、

「周りに迷惑をかけることになるから、なかなか
有給休暇が取れない。」

となって、これがエスカレートすると過労死に繋がって
しまうのです。

 

「なるほど!」

こんな話を中級以上の学習者にすると、結構前のめりに
なります(彼らの常識では考えられないことなので。)

 

こういう雑学を知っていると、例えば中級の読解の
授業で過労死を扱った文章を読んだ場合、

上記の内容を交えながら学習者とインタラクションを
しながら読解活動をすれば、

スキミング、スキャニングなどといった通り一遍の
授業ではない、広がりと深みのある授業を展開する
ことができるでしょう。

もちろん、そうしたやり取りの上に「言葉」が
有意味に、そしてインパクトを持って乗っかって
いくのです。

だからこそ、中級以降の授業で教師に求められる知識は、
中級以上の日本語の知識に加え、こうした雑学が非常に
重要になるのです。

では、こうした雑学はどうすれば身につくのか。

 

長くなりそうなので、続きは次回に(^_^)


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