なぜ英語の動詞は三単現にだけsがつくのか。
かつて大学の授業の「言語習得概論」で、
「どうして日本語には英語の三単現のような
文法がないのか。」
という質問を受けたことがあります。
たしかに日本語にはそういった文法はないわけですが、
考えてみればそもそもなぜ英語には三単現にだけにsが
つくのか、
不思議に思いませんか。
しかもsという摩擦音なので、どうかすると聞き逃して
しまうような微妙な文法です。
であればいっそのことなくなってしまえばいいんじゃないかと
思うわけですけども、
どういうわけか、「三単現にはsがつく。」というルールが
残っているわけですね。
これについて調べているうちに面白いサイトを見つけました。
「なぜ三単現だけにsがつくのか」
https://ipa-mania.com/third-person-s/
このサイトを見ますと、以下のように書いてあります。
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さて、英語の動詞では三人称単数の場合のみにsが付きますが、
ヨーロッパの諸言語を見てみると英語は少し異質なことが分か
ります。
というのも、他の言語では一人称だろうと複数だろうと動詞は
常に活用して末尾が変化するんです。
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確かにフランス語だと人称と、単数か複数かによって
動詞が変化します。
しかし英語は三単現以外は動詞が変化することはない、
そういう意味で英語は少し異質だと言えると思います。
実際、英語も昔は他のヨーロッパ言語と同じように人称
によって動詞が活用していたんですね。
それが長い年月をかけて簡略化され、いまのような
形になったわけです。
ではどうして三単現のsのみ残ったのでしょうか。
これについてこのサイトでは以下のように述べています。
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では、何故三単現の活用のみが残ったのでしょうか。
それを考える前にそもそも動詞が人称に応じて形を変える
理由を考えてみましょう。
もし英語が各人称ごとに活用するなら、動詞を聞けばその文
の主語が誰か分かることになります(つまりどういった人に
関する話なのかが容易に想像が付くことになります)。
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たしかにそれはそうですね。
日本語の場合、それはむしろ色濃く出ていて
日本語では主語はよく省略されますけれども、
どうしてかというと授受動詞や敬語などを思い
うかべていただくとわかるとおり、
動詞を見れば主語が誰なのか想像できるから
です。
だから、主語を省略しても問題ないわけですね。
このサイトでは以下のようにも言っています。
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実際に三人称単数以外の場合でも活用していた頃の英語は
主語を省くということがなされていたようです。
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なるほど。
昔は英語も主語を省略してよかったわけですね。
しかし、今では英語は主語を省略することができません。
それはひとつには動詞の活用がなくなったために、
主語が省略されると主語がだれなのかがわからなく
なってしまうからです。
というわけで英語は主語を必ず明示することになって
いるのですが、
主語を明示すればすべて解決するかというと、そういう
わけでもありません。
サイトでは以下のように書いています。
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主語を決して省かない場合は一人称と二人称は簡単に区別が
付くことは分かりますか。
日本語は一人称なら私、俺、僕、私たち、俺ら、など、二人称
は貴方、お前、君、あなた方、お前らなどあります。
しかし、英語はI,we,you,と各々の場合に付き一種類
しかありませんから一人称と二人称は主語があれば簡単に分か
るのです。
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確かにその通りですね。
ではなぜ三人称だけにsをつける必要があるのか。
これについてさらにこう述べています。
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では固有名詞やその他の名詞が存在する三人称はどうでしょう
か?
ためしに下の問題をやってみて下さい。
以下の****に入る動詞を(1)、(2)から選んでください。
Monkeys **** apples.
(1)eat (2)eats
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おそらく多くの方は主語の「Monkeys」が複数形だから、
三人称複数で答えは(1)のeatだと考えるのではない
でしょうか。
普通に考えればそうだと思います。
しかしながら、サイトでは以下のように述べています。
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「Monkeys」という固有名詞だったらどうでしょうか。
漫画のペンネームでこういう人がいたらこれは三人称単数と
なります。
つまりこれだけでは正確には答えはわからないということです。
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指摘のようにもし「Monkeys」が固有名詞で
誰かの名前であった場合、
三単現になりますので答えは(2)になりますよね。
つまりもし動詞の後ろにsがなければ三人称の場合
その主語が複数なのか単数なのかがはっきりしない
ということになるわけです。
これは三人称特有の問題で、つまり、固有名詞が
三人称に含まれるからこういう混乱が生じるわけです。
こういった混乱を解消するために、三単現の動詞の後ろ
にはsを付けるとなるわけです。
なるほど。
たしかにパーティー好きの欧米人にとって、
来るお客が1名か複数かと言うことは大きな問題
でしょうから、そういうことも原因なのかもしれ
ませんね。
このように、
一見非常にめんどくさいと思われるような文型でも、
それが現在も残っているのは、
それ相応の理由があるということがこの一例から
見て取ることができます。
逆に、
なぜその文法があるのかということを知っておく
ということは
誤解なく効果的なコミュニケーションをするうえで
非常であるということが言えるでしょう。
日本語を教えていると、
「日本語には、なぜこんな文法のルールがあるんだろう。」
と疑問に思うこともないわけではありません。
しかし、
それがなかったら、どういうコミュニケーション上の
支障をきたすかということにに思いをはせると
「なるほど。確かにこういうルールがないとまずいよね。」
という話になると思うんですね。
日本語教育の場で「なぜこういうルールがあるのか」と
疑問に感じたら一度しっかり調べてみてはいかがでしょうか。