1を出すために10の準備。
私は、大学で日本語教員養成課程の実習授業を
担当しています。
実習生には、常日頃から
「1つのことを教えるために10の準備をせよ。」
と言っています。
1つのことを教えるのに、その1つだけの準備
しかしていないと、
それしか語れない薄っぺらな授業にしかなりません
し、
学習者からちょっと切り口の違う質問をされた時に
対応できません。
いかにもいっぱいいっぱいな、深みも広がりも
ない授業。
これでは、
「授業を受けるより、一人で参考書でも読んで
いるほうがよほどいい。」
学習者にそう思われても仕方ないですね。
1つのことを教えるのに、5の準備をしておくと、
その1つのことは余裕を持ってちゃんと説明できる
でしょうし、
気持ちにゆとりがある分、学習者の理解度に配慮
しながら授業をうまくコントロールすることも
できるでしょう。
指導項目をしっかり押さえながらも、柔軟性の
ある授業。
これなら、学習者から、
「あの先生の授業は分かりやすいし、面白い。」
という評価を受けるに違いありません。
すごくいいですよね(^_^)
ところが、1つのことを教えるのに、
10の準備をして授業に臨むとどうなるか。
軽快にテンポよく授業を進めながらも、
どんな状況にも動じない圧倒的な安定感と
迫力。
教師は学習者の質問に的確に答えるばかりか、
彼らの脳内に手を突っ込んで、彼らの思考を
うまく誘導し、
指導内容を学習者の脳内に摩擦係数ゼロで
さくさくインストールしていく。
学習者から、
「なぜかわからないけど、〇〇先生の授業
を受けると、何もかもよくわかり、すぐ
できるようになる。」
という印象を受け、結果、
「とにかく〇〇先生について行ったら
間違いない。」
という、絶大なる信頼を勝ち取ることに
なるのです。
もちろん、私自身もまだまだその境地には
まったく達していませんが、
いやしくも教師を名乗るのであれば、
そのレベルの高みを目指すべきだと、
私は思いますし、
実習生にもそう伝えているのです。
ところで、私が指導した実習修了生への
インタビューをYoutubeにアップしています。
日本語教員養成課程実習修了生インタビュー
日本語教師篠崎大司研究室
https://youtu.be/-IbxyHycsS0
2人とも中国からの留学生で、2人とも
非常に優秀でした。
5:29ごろ、右側の学生がこれから日本語教師を
目指す学生へのメッセージとして、この
「1を出すのに10の準備をする。」
ことの大切さを語っています。
彼女は、本学を卒業した後、九州大学大学院
に進学し、
博士課程まで進んだ後、今月から中国の大学で
教鞭をとります。
彼女は、教壇に立ってからもずっと、この
「1を出すのに10の準備をする。」
を愚直に守って学生と対峙することでしょう。
そういう教師が世の中にもっと増えるように、
私も微力ながら頑張っていきたいと思います。