「みんなの日本語」から「あなたの日本語」へ(その1)。
日本語教育界は今、大きなパラダイムシフトの
ただ中にいます。
これを私なりに言い表すとすると、
【「みんなの日本語」から「あなたの日本語」へ】
「みんなの日本語」は、ある特定の教材を指して
いるのではなく、
言い換えれば「万人向けの日本語教育」。
つまり、どんなタイプ、どんな在留資格の学習者
であれ、
例えば、初級であれば同じ教材、同じ指導法で
授業を行うというスタンス。
これが今までの日本語教育の基本的なスタンス
でした。
確かに、留学生だけでなく、外国人児童生徒や
ビジネスパーソンなど学習者の多様化は20年
以上前から言われてはいました。
しかし、それぞれのタイプの学習者群は、
日本語学校や大学・大学院で学ぶ留学生と
比べると、
マーケットとしてはとても小さかったので、
あまり表舞台に出てくることはありませんで
したし、教材の種類も限られていました。
ところが、昨今の産業界の深刻な人手不足、
そして、それに後押しされる形で国が大規模な
外国人受け入れ政策に大きく舵を切ったことで、
大量の外国人労働者、そしてその家族が
国内に在留するようになり、
これまで主流だった留学生に加え、
▼ビジネスパーソン
▼技能実習生
▼外国人妻
▼外国人児童生徒
▼外国人介護士
など、さまざまなタイプの在留外国人が
それぞれ1つのマーケットを形成するまでに
成長しつつあるのです。
そして、彼らが必要としている日本語は、
実はそれぞれ違う。
しかも、それはニーズが分化する中級から
ではなく、初級からして違う。
初対面の挨拶で必要な日本語1つとっても
皆それぞれ違うのです。
その結果、各マーケットにしっかりマッチした
日本語教育が求められるようになっている。
つまり、「あなたの日本語」という指導スタンス
へシフトチェンジしているのです。
ところが、多くの養成講座で行う初級の実習授業
と言えば、
未だに文型積み上げ式のテキストを使った文型
導入→パタプラの授業。
なぜなら、日本語学校での就職を想定している
からです。
しかし、そのやり方が通用する学習者は今や
限定的。
それではもう対応しきれないんですね。
しかも、「あなたの日本語」の時代に、授業を
行う上で重要なのは、実は指導法ではないのです。
続きは、次回に。