外国人にはなぜ日本人の声が「コス、カス、コス、カス」と聞こえるのか。
何年か前に、テレビでフランスのCMを
見たことがあります。
それは現地のフランス人が日本人に扮して
しゃべっているというものでしたが、
その話し方が
「コス、コス、カス、カス」
と言っているんですね。
もちろん、フランス在住の日本人が
「コス、コス、カス、カス」
と喋っているわけではないと思いますが、
少なくとも現地のフランス人には、
日本人の日本語が
「コス、コス、カス、カス」
と聞こえていると推察されます。
なぜそういう風に聞こえるのでしょうか。
その理由の1つに、「母音の無声化」
があげられます。
「母音の無声化」というのは、
無声子音(カ行、サ行、タ行、パ行、ハ行)
に挟まれた母音「i」「u」が
口の形はそのままで実際は発音されない
現象のことを言います。
例えば、「くつした」という単語を
ナチュラルスピードで話すとどうなる
でしょうか。
「ku・tsu・shi・ta」
と発音するでしょうか。
あるいは、
「k・ts・sh・ta」
というふうに発音するでしょうか。
おそらく、多くの方は後者で発音している
のではないでしょうか。
つまり、これが「母音の無声化」と
言われるものです。
私たちはこのように無声子音に挟まれた
「i」「u」が発音されずに脱落しても、
聞いた時に意味のある単語として理解
しようとして、
無意識に「i」「u」を補完して認知して
いるために問題なく理解できるわけですが、
外国人にそういった思考回路はもともと
ありませんから、どうしても
「コス、コス、カス、カス」
と聞こえるわけです。
では、ここで問題。
「国際都市として発達した。」
の文で、母音の無性化はどのように
起こっているでしょうか。
無声子音に話された「i」「u」を( )で
くくってみますと、
「kok(u)saitosh(i)tosh(i)te hattats(u)sh(i)ta」
なるほど、これでは外国人が、
「コス、コス、カス、カス」
と聞こえてしまっても当然というわけです。
日本語教師になって現場に立った時に、
時々学習者から、
「日本人の日本語はとても速すぎます。
『コス、コス、カス、カス』
としか聞こえません。」
といわれた時に、
もし、母音の無声化が理解できなければ、
単に
「ああ、日本人が速いスピードで喋っているんだ。」
としか理解できないかもしれません。
しかし、この知識があれば、より適切に学習者に
アドバイスや指導ができるのではないでしょうか。