「若者」と「バカ者」の区別ができない学習者をどう指導するか。
今日は午前、
「音声指導の基本と具体的指導法
-その場でできる!発音がよくなる!-」
を行いました。
参加者16名、4人一組の島型×4つ。
音声指導の基本的な知識から具体的な指導方法
を説明した後、
セミナーの最後に、以下のようなタスクを
受講生の皆さんに投げてみました。
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【タスク2】
各グループで話し合って、学習者の音声上の
問題を1つ取り上げ、その指導方法を考えな
さい。
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後は、グループごとにディスカッション。
そうしたところ、ある方がグループ内で
問題提起。
「以前教えた学習者が、
『先生、公園でバカ者が騒いでいます。』
というので、どういうことかと聞いてみると、
どうやら、本人は『バカ者』ではなく
『若者』と言いたかったようでした。
そこで、『バ』じゃなくて『ワ』だよと
説明したのですが、
その学習者は、『どちらも『バ』と聞こえる。』
と言って一歩も引かない。
どう指導したらいいのでしょうか。」
なるほど!
そこで、グループで話し合い。
そこでいくつか指導方法が出されたのですが、
そのうちの1つがとても秀逸でしたので、
ここでシェアしますね。
曰く、
「今の段階では『バ』と『ワ』の区別が
つかない。
この段階で下手に『若者』と発音しようとして
『バカ者』と言ってしまったら、ミスコミュニ
ケーションを起こす可能性がある。
そこで、無理に『若者』と言わそうとせず、
『あかもの』と発音するよう指導する。」
これ、実はすごい発想です。
なぜなら、
「公園であかものが騒いでいます。」
と言っても、聞き手は、
「公園で若者が騒いでいます。」
と聞き取る可能性が高いからです。
そもそも、脳は耳にした音声を自動的に
意味ある文にしようとする性質があります。
母音の無声化が起こっても、聞き手のほうで
無意識に欠落した母音を差し込み、意味ある
文に再構築できるのもそのためです。
意味ある文に変換できないままだと、とっても
気持ち悪いんですね。
あるいは、場合によっては、自分のほうが
音を聞き逃したのではないかと考えるかも
しれない。
それを逆手にとって、利用するわけです。
そうやって、うまくごまかしている間に
「バ」と「ワ」の区別ができるように
すればいい。
「なんてやわらかいんだ!」(笑)
正しい発音を指導するだけが音声指導では
ないんですね。
こういうことがあるから、セミナーって
やめられないのです(^_^)