「授業中、母語禁止!」は、実は逆効果。
私は、日本語の授業で学習者同士が母語で話して
いても、あまり頓着しません。
母語で話しているからといって、
「私語はやめなさい。」とか
「母語禁止!」とか
そうやって制止することはほとんどありません。
逆に、
「今なんて言ったの?日本語で教えて。」
のように興味を示すことが多いです。
どうしてかというと、
彼らの会話の内容が必ずしも無駄な私語とは
限らず、
▼教師の説明で不明な部分を友人に聞いたり、
▼自分の理解が正しいか友人に確認したり、
むしろ彼らにとっては、学びの上で必要な
情報交換だったりするからです。
先日、おおいた国際交流プラザ主催の日本語の
教え方セミナーに登壇しました。
そこで、参加者の方(ほとんどが日本語ボランティ
アか教育経験の少ない日本人。自治体関係者。)を
対象に、
直接法による外国語学習を体験していただきました。
そうしたところ、レッスン中にもかかわらず、
多くの人が、
「これって、こういう意味だよね。」
「あっ!わかった。こういう意味か。」
「えっ、どういうこと。どういうこと。。」
と、とにかく日本語で隣の人といちいち話し
たがるのです(笑)
私はそのたびに、わざと
「母語禁止っ!」(←ここは日本語)
と言って抑えました。
それでも、日本語がなくなることはあり
ませんでしたが(笑)
そして、一通りレッスンが終わった後に、
「皆さん。皆さんが日本語で教えているときに
学習者が母語で話をしていたら、
『私語禁止!』『母語禁止!』
と言ってやめさせたりしていませんか。
でも、実際学習者の立場に立つとできない
ですよね。」
と言ったら、一同「あっ!」(笑)
「もし、授業中に母語の使用が禁止されたら、
理解の確認も状況把握もできずに、
相当ストレスが溜まりませんか。」
一同、納得(^_^)
そういうことなんですね。
つまり、授業中の母語禁止は、実は言語学習
という点では、逆効果になることが多いのです。
ところで、最近こんな本を読んでいます。
『CLIL(クリル) 内容言語統合型学習 上智大学外国語
教育の新たなる挑戦 第1巻 原理と方法』
https://amzn.to/2Gaig5W
CLILは、日本語教育でも最近注目されている
指導方法ですね。
イメージとしては、理科や社会や算数の授業を
目標言語(=外国語)で行う授業です。
ヨーロッパでは、多くの教育機関で行われている
そうです。
そして、このCLILの指導方針の1つに、
「授業中での学習者の母語使用を妨げない。」
というのがあります。
教師はもちろん目標言語でコミュニケーションを
しますが、
学習者同士が母語で課題を行っていても
特にそれを禁止したりはしないのです。
その理由は、先ほど述べた通り。
最先端の教授法でも、母語禁止は学習上逆効果
であると知っているのですね。