管理職に外国人児童の日本語指導の必要性を理解してもらうには(1)
昨日登壇したおおいた国際交流プラザ主催
「日本語ボランティア スキルアップ講座
「日本語教室(経験者)編」
外国人に日本語を教える方法
-明日から使えるプロの技-」
事前に参加者の方からご質問を受け、
それにこたえる形でアラカルト的に
お話しさせていただきました。
その中で、こんなご質問が、
「管理職の方に外国人児童に対する日本語指導の
必要性をどのように分かってもらえるかが知りたい」
なるほど!
現場にいると、いろいろと歯がゆい思いを
することも多いですよね。
こういう場合、
やはり外国人児童生徒に言語指導(母語・日本語
とも)をしないことが、いかに取り返しのつかな
いことか、
そして、それは当人だけでなくひいては地域の治
安にまで関わる大きなリスクであるということ、
逆に、しっかり言語指導をすれば、当人の人生に
大きなプラスとして働くだけでなく、
ひいては地域の活性化や産業の優秀な担い手の創
出に繋がるということを伝える必要があります。
そういう意味で、伝える側は、相手を納得・説得
させるための専門知識を持っておくというのが
すごく大事なんですね。
そこで、私が講演でご紹介させていただいたのが
以下の3つ。
・臨界期仮説
・閾(しきい)説
・制限コードと精密コード
これらのうち、今回は「臨界期仮説」について
説明しますね。
臨界期仮説について、通信講座「篠研の検定試験対策」
の講義資料
「No.080 習得過程(第一言語・第二言語)
では、以下のように解説しています。
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生後、脳は成長とともに右脳と左脳で機能の分化が
起こります。
これを脳の一側化といいます。
脳の一側化は思春期で完了するといわれています。
レネバーグ(Eric Le-nneberg)は、脳の一側化が完
了するまでに第一言語を習得しなければ、
ネイティブのような完全かつ自然な言語習得は不可
能であると主張しました。
こうした言語習得の限界時期を臨界期といい、レネ
バーグのような主張を臨界期仮説といいます。
(p.15)
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つまり、母語習得期のリミットである臨界期を超えて
しまうと、
そのあと、どんなに学び直しをしようとしても、母語
習得は不可能だというのです。
では、その臨界期は何歳ぐらいかというと、だいたい
8歳から12歳までといわれています。
この歳までにしっかり母語形成しないと、取り返し
がつかなくなるというわけです。
母語が形成されないとどうなるかというと、思考の
ことばを持たないわけですから、
年相応の認知能力を持つことができなくなります。
抽象的な概念が理解できなかったり、高度な思考が
できなかったりするわけです。
そうなると、当然その児童の進学や就職に響きます。
場合によっては、定職につけなくなるかもしれません。
そうなれば、結婚だって難しくなりますよね。
しかも、成人になって、
「これじゃダメだ。母語の勉強をしよう。」
と本人が奮起して頑張っても勉強しても、
どうあがいても母語話者並みにはならないのです。
その児童は、一生言語的ハンデを背負って生きていく
ことになるのです。
「(管理職)さん、いま外国人児童にしっかりした
言語教育をしなかったら、
あなたもかわいそうな児童を生む片棒を担ぐことに
なるんですよ。
それでいいんですか。」
ということなんですね。
外国人、日本人関係なく児童生徒の言語教育というのは
私たちが想像するよりはるかに重要なことなんですね。
続きは、次回に。