学習者との最適な距離感とは。
今回は、こちらの書籍から。
横溝紳一郎『日本語教師のためのTIPS77 クラスルーム運営』
http://u111u.info/m9KP
横溝紳一郎先生といえば、日本語教育における
授業改善の第一人者。
今まで、以下のようなご著書を出されています。
『ドリルの鉄人―コミュニカティブなドリルからロールプレイへ』
『日本語教師のためのアクション・リサーチ』
『成長する教師のための日本語教育ガイドブック』〈上〉〈下〉
『生徒の心に火をつける―英語教師田尻悟郎の挑戦』
ところで、皆さんは、学習者と日々
どういうスタンスで接していますか。
あるいは、接したいと思っていますか。
「学習者とはできるだけ仲良くしたいので、
友達のように接したいと思っている。」
という方もいらっしゃるでしょうし、
「学習者とはある程度距離を保って接しないと、
クラス運営がうまくいかない。」
という方もいらっしゃるでしょう。
あるいは、
「できればある程度の距離感を保ちたいが、
指導していくとどうしても近くなり過ぎ、
負担に感じることがある。」
という方もいらっしゃるかもしれませんね。
実際、仲良くなろうと親しく接した結果、
学習者からアパートの保証人を依頼されたり、
かなり深いプライベートな問題について相談
されたりして
対応に困ったという経験のある方もいらっしゃる
のではないでしょうか。
こうした学習者との距離感について、本書で
横溝氏は、
「私個人は『きちんと線引きをしたほうがいい』と、
若い頃からずっと思っています。」(p.112)
と述べたうえで、その理由を以下のように述べて
います。
=====ここから===============
・授業における役割期待決定への影響
(前略)私は学期の初めに「教師がすべきこと」「学習
者がすべきこと」を双方の話し合いで決めて、それを順
守していくというクラスルーム運営の方式をとっていま
す。線引きがきちんとできていないと、この方式を行う
ことは難しいです。
・学習者への公平さ・公正さの保持への影響
ある特定の学習者と友だち関係になると、どうしてもそ
の学生を無意識のうちに(あるいは意識的に)特別扱い
するようになってしまいます。すべての学習者に公平・
公正に接するべきだと私は思っています。(同上)
======ここまで==============
この点については、私も同感です。
日々学習者と接していると、
友達感覚的な対応からだけでなく、
親切心でやったことが、結果的に不公平を
生んでしまうということがあります。
「学習者に冷たくしろ。」
「教師の威厳を保て。」
というわけではありませんが(それは論外。)
学習者とは、ある程度の心的距離を保っていたほうが、
教育的な支援がしやすいだけでなく、
公平・公正で、息の長い日本語教師ができると
私は思います。