学習者の自己評価を成績評価に反映させるべきか。(後半)
続々と
「絶対盛り上がる!中級会話授業ワークショップ」
にご参加いただいた方々からご感想メールを頂戴して
おります。
早速S.S様より頂戴したご感想をご紹介。
S.S様、セミナーご参加並びにご感想メールを
ありがとうございました。
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篠崎先生、
お世話になります。ワークショップでは、
貴重なことを惜しげもなく、伝授して
いただきありがとうございました。
具体的にロールプレイを久々に体験できた
ことで、改めて受講生の感覚、気持ちが
わかりました。
そしていろいろな自分なりの気づきが
ありました。
また先生が、将来への展望まで自分で導き
出せるよう、
考えての会話授業をなさっておられることに
感銘を受けました。
ちょうど中級会話を任されているので、さっそく
取り入れさせていただきたいと思います。
誠にありがとうございました。
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> 貴重なことを惜しげもなく、伝授して
> いただきありがとうございました。
どういたしまして(^_^)
今回ご紹介したノウハウは、経験の少ない
教師の方でも簡単に導入でき、
また、学習者やクラスの状況に合わせて
いくらでもアレンジできるものですので、
ぜひ、いろいろ授業で試してみてくださいね。
さて、前回に引き続き、セミナーの受講生の
方から頂いた、下記質問
「学生の自己評価についてどのように考えて
いらっしゃいますか。
また、自己評価を成績評価に組み込むこと
について、どのようにお考えですか。」
についてのお答えの続き。
前回は、
「自己評価はやったらいいですよ。
でも、成績評価にリンクさせるのはNGです。」
というお話をさせていただきました。
ここまでは、セミナーの質疑応答の際に
お答えした内容。
今回は、その補足説明です。
自己評価をする際、できれば他者評価もした
方がいいです、という話。
どうしてかというと、
自分に対する自分の認識と、自分に対する他人の
認識というのは、往々にしてずれていることが
多いからです。
(この辺り、ジョハリの窓を思い起こしていただ
ければわかりやすいですね。)
有体に言うと、実は自分って自分がよく見えて
いないのです。
しかも、そのずれは結構大きいにもかかわらず、
普段それを意識する機会がほとんどない。
だから、やる意味があるわけですね。
例えば、ある学習者は自己評価で自分のことを
「言いたいことは言えるけど、文法の間違いを
よくする。
JLPT-N1にも合格しているのに、会話のとき
時々、テ形の間違いもある。
自分はまだまだだと思う。」
というような評価をしたとします。
文法に対してかなりコンプレックスを持って
いますよね。
ところが、その学習者のことを他の学習者に
評価してもらうと、
「とても発音がきれいで、話し方も上手。
文法の間違いもほとんどなく、すごいと思う。
でも、時々自分の意見をあまり言わないとき
があるので、もっと積極的に話したらいいと
思う。」
というような評価が返ってきたりします。
「文法に対する評価が全然違うじゃん。」
と思われるかもしれませんが、自己評価/他者
評価をすると、こういうことが普通に起こり
ます。
どうしてそうなるかというと、
この学習者は、実は全体的には文法の間違いが
ほとんどなく、せいぜいテ形の誤用をたまにする
程度なのだけれど、
本人はそれをとても気にしていて、それが文法
コンプレックスにつながり、
これまで自分の意見を言うシーンで思わず躊躇
してしまうことが多かった、というわけです。
従って、他者評価をこの学習者にフィードバック
してあげると、
「なんだ、そんなに気にすることなかったんだ。
それより、もっと喋っていいんだ。」
と、自分の日本語に対する認識が変わり、
今までよりもリラックスして会話を楽しむことが
できるようになるのです。
そうすると、不思議なことにテ形の誤用など気に
ならなくなるだけでなく、
実際に誤用そのものも減っていくのです。
だから、自己評価だけでなく他者評価もやった方
がいいというわけなんですね。
と同時に、自己評価は極めて主観的かつ本人の
思い込みや勘違いも多分に含まれていますので、
安易に成績評価にリンクさせるべきではない
となるわけですね。
ちなみに、皆さんも、ご自身の自分に対する
認識と
周囲の人の持つ皆さんの印象は相当違うはず
です。
「私って、どういう風に見える?」
「私に似合う色は?」
「私って、地味? 派手?」
「私ってインドア派? アウトドア派?」
など、周囲の人に聞いてみてください。
かなり然違いますよ(^_^)