検定試験の過去問、ただ解けばいいってもんじゃないです。
「検定試験の勉強は、過去問に始まり
過去問に終わる。」
といわれます。
「えっ! 勉強の初めから過去問をやるの?」
という方がいらっしゃいますが、
早いうちから検定試験の出題傾向や出題レベル、
問題の切り口を知っているかどうかは、
その後の勉強に大きく影響します。
本試験間際になって初めて検定試験の
問題に触れ、
「今までの勉強とこんなにレベル差が
あるなんて。」
と愕然としても、遅すぎますよね。
実際、今の時期に過去問をどんどん解いて
いるという方も多いでしょう。
確かに、今の時期に過去問に触れておく
ことは大切です。
ですが、ただ解いて答え合わせをして
「当たった。外れた。」
と一喜一憂しているだけでは、
ほとんど意味がありません。
第一、過去問と同じ問題が今年出題される
確率など、かなり低いわけですから。
では、どうすれば本試験の得点アップに
繋がるかというと、
出題内容の奥にある
▼問題の本質
▼出題者の意図
▼教育現場の実態
にまで思考を深めるということが
大切です。
そうすることで、初めて応用力が身に
つき、
目先の難解な問題文に振り回されること
なく、
落ち着いて正解を導くことができるの
です。
例えば、平成24年の試験I問題2、【 】内
の誤用と種類が異なる誤用を選ぶ問題の中に
次のようなものがあります。
========ここから==========
【彼の話は面白いだ。】
 ̄
1 明日雨が降るらしいだ。
 ̄
2 一緒に映画を見たかっただ。
 ̄
3 古い建物は美しいだ。
 ̄
4 去年広島へ行っただ。
 ̄
========ここまで==========
この問題の答え、わかりますか。
ちょっとご自身で考えてみてください。
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
正解は、4番ですね。
この場合、【 】内の誤用は、
名詞文やナ形容詞文の文末に使われる
「だ」
例)私は日本人だ。
をイ形容詞文の文末にまで適用して
しまったために起こった誤りであると
考えられます。
こうした誤用を、過剰般化といいます。
そうすると、こうした日本語学習者は、
「イ形容詞も、名詞文やナ形容詞文と同様、
文末に「だ」をつける。」
という独自の中間言語を作ったと考えられる
わけですね。
しかも、この問題を見ると、そうした学習
者の過剰般化はイ形容詞にとどまらないと
いうことが選択肢1、2をみるとわかります。
実際、1「らしい」と2「たい(←たかった)」
は、いずれも助動詞ですが、
「い」で終わるということもあって、活用の
仕方はイ形容詞に準じています。
例) 面白い → 面白くない
→ 面白かった → 面白くなかった
見たい → 見たくない
→ 見たかった → 見たくなかった
そうすると、
「なるほど、だから学習者は1、2のような
誤用もあわせて起こすんだな。」
ということがわかります。
ちなみに、選択肢3「美しい」はイ形容詞です
から【 】内の誤用と全く同じ。
つまり、
「【 】内のような誤用を起こす学習者は
選択肢1~3のような誤用も起こしている
可能性があるから、
将来教師になって、こういう学習者に出会っ
たら、ちゃんとチェックして指導してくだ
さいね。」
ということなんですね。
ところが、選択肢4の「行っただ」は「動詞+だ」。
今までの「イ形容詞(それに準じた表現)+だ」
とは異なります。
なので、この問題の答えになるわけですが、
つまりは、
「『行っただ』のような誤用は、ほかの誤用と
原因が異なるから、
別途対応を考えてあげてくださいね。」
という出題者からのメッセージというわけ
なんですね。
たったこれだけの問題で、
学習者の思考過程から指導のポイントまで
いろいろなことが見えてくるわけです。
「出題内容の奥にある
▼問題の本質
▼出題者の意図
▼教育現場の実態
にまで思考を深める」
とは、つまりこういうことなんです。
翻って言えば、
そこまで深く勉強せずに、ただただ正解
ばかりを追いかけるような勉強をしても、
全く意味がないということなんですね。