中上級の授業が教師の「調べもの発表会」にならないために。
クラスも中上級になると、
指導項目がそれまでよりさらに多く
なるだけでなく、
扱う日本語や話題がより複雑に、かつ、
より抽象度が高くなってきます。
それにつれて、授業準備での調べ物も
膨大な量になると。
中上級の授業を準備するたびに、
何冊もの辞書をひっくり返したという方も
多いのではないでしょうか。
(と言いますか、私自身がそうなんですが(笑))
そして、
自分の手で調べたものは、どれも大事なものの
ように思え、
「すべて授業で学習者に教えたい。」
そんな衝動に駆られてしまう。
その結果、
授業がまるで教師の調べ者発表会のように
なってしまい、
気がついたら、学習者が皆ポカンとしていた(笑)
そんな経験をしたことのある方も、
いらっしゃるかもしれませんね。
(と言いますか、駆け出しのころの私が
まさにそう(苦笑))
一般に、経験の浅い日本語教師が陥りがちな
指導上の問題に、
「授業が教師の「調べもの発表会」になって
しまっている。」
というのがあります。
授業準備で調べたことを、授業時間の範囲の中で
とにかく学習者に伝えなければならない
と思うあまり、
授業が教師の一方的な説明に終始してしまう、
というケースです。
具体的に見てみましょう。
下の例は、中級のクラスで読解の授業の前に
行った新出語彙導入のワンシーンです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(T:教師 L:学習者)
T:はい、では、新しい言葉を勉強しましょう。
まず、「並べる」 皆さんでどうぞ。「並べる」。
L:並べる(コーラス)。
T:はい、いいですね。
この「並べる」は、2つのものや2人の人が隣り
合っているという意味です。
そして、これは他動詞です。
例えば、このように使います。
(T、例文「教室の机をきれいに並べる。」を
板書。)
はい、それから「並べる」に対応する自動詞は
「並ぶ」ですね。
例えば、このように使います。
(T、例文 「あのレストランの前に、たくさん
の人が並んでいる。」を板書。)
それから、「並べる」を使った慣用句もいろいろ
あります。
例えば「机を並べる」。
この言葉の意味は、同じ職場で一緒に仕事をした
り、同じ学校で一緒に勉強したという意味です。
例えば、このように使います。
(T、例文「彼と私は、高校時代に机を並べた仲
だ。」を板書。
わかりましたか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
日本語教育に限らず、大人数の学習者を相手にする
講義形式の授業では、よく見られる風景かもしれま
せん。
ですが、これでは、学習者がどこまで理解したかの
確認できていません。
また、学習者の日本語レベルによっては 「隣り合う」
や「慣用句」など、すぐには理解できない語彙も含ま
れています。
さらに、学習者の授業参加を促す工夫がみられない
ことから、学習者の 集中力も途切れやすく、学習
効率が下がることが予想されます。
なにより 「並べる」という言葉を使う機会を学習者
に与えていません。
こうした問題を改善するためには、教師はまず、
学習者の日本語レベルから、
既習文型や既習語彙がどのようなものか、について
大雑把に踏まえた上で
(学習者によって学習歴が異なることもありますので、
ここは大雑把で構いません。)、
「説明をして理解してもらう。」ではなく「学習者との
インタラクションを通じて理解度をみる」という意識と、
それに沿ったコミュニ ケーションスタイルを身に
つける必要があります。
先ほどの指導例を改善するとすれば、以下のように
なるでしょう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(T:教師 L:学習者)
T:はい、では、新しい言葉を勉強しましょう。
まず、「並べる」皆さんでどうぞ。「並べる」。
L:並べる(コーラス)。
T:はい、いいですね。
この「並べる」の他に「並ぶ」がありますね。
(T、例文「教室の机をきれいに_____。」と
「あのレス トランの前に、たくさんの人が
_____いる。」を上下に板書。
上の例文を指しながら)
ここは、「並べる」「並ぶ」どっちですか。
L:「並べる」です。
T:そうですね。
(T、上の例文の下線部に「並べる」を板書。)
では、「並べる」は自動詞ですか、他動詞ですか。
L:他動詞。
T:そうですね。じゃあ、下は何が入りますか?
L:「並びて」??
T:??
(T、「ちょっと違う。」という表情をする。)
L:「並んで」。
T:そうですね。
(T、下の例文の下線部に「並んで」を板書。)
ということは、「並ぶ」は?
L:自動詞。
T:そうですね。
それから、「並べる」を使った言葉もいろいろ
あります。例えば……。
(T、例文「彼と私は、高校時代に机を並べた
仲間だ。」を板書。
「机を並べた」の下に下線を引く。)
この 意味は何ですか。
L:???
T:わからない人はすぐに辞書で調べましょう。
分かりましたか。
L:「同じ職場で一緒に仕事をしたり、同じ学校で
一緒に勉強した」という意味です。
T:そうですね。
ですから、このクラスの皆さんは、みんな机を
並べた仲なんですね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
このように、学習者とのインタラクションをこまめに
しながら授業を展開すれば、
先のような問題をかなりの部分解消できるだけでなく、
学習者が理解できていない場合にも、素早く対応する
ことができるわけです。
これは、語彙の指導に限らず、読解や文法、会話など、
程度の差こそあれ、すべての授業にあてはまること
ですので、しっかり覚えておきましょう。
ましてや、会話の授業で教師が喋りまくったら
最悪(>_<)
「わかっちゃいるけど、学習者が喋らないから
どうしてもこうなってしまう。」
いいえ、その原因帰属がそもそもの間違い。
改善する方法はあります。
皆さんは、大丈夫ですか。
残席6です。
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▼「ハードル競争式会話授業」とは
▼ハードル競争式会話授業の実際
▼「ハードル競走式会話授業」の基本
▼「ハードル競走式会話授業」の理論
▼ワーク1‐場面設定のネタ出しをしよう!
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