「に限らず」と「だけでなく」はどう違うか(その2)。
前回、「に限らず」と「だけでなく」の
違いを探るべく、
「に限らず」にしか使えない例文と「だけでなく」
にしか使えない例文をそれぞれ10個ずつあげてみる。
という宿題を出しましたが、やってみましたか?
両表現の違いを見るためには、
「に限らず」も「だけでなく」も接続表現ですので、
「Aに限らずB」「AだけでなくB」として、
AとBの間にどのような関係差があるかを
見ていけばいいわけです。
いくつか例を挙げてみましょう。
まず、「に限らず」
・このサッカーチームは、彼(○に限らず ×だけでなく)
全員ブラジル人だ。
・この店は、週末(○に限らず ?だけでなく)いつも
客でいっぱいだ。
・この歌は、若者(○に限らず ?だけでなく)あらゆる
年齢層に広く歌われている。
・かかりつけ医は一人(○に限らず ?だけでなく)
複数持つことが望ましい。
続いて、「だけでなく」
・私は猫(×に限らず ○だけでなく)犬も好きです。
・太郎(×に限らず ○だけでなく)次郎も合格した。
・この料理は、辛味(×に限らず ○だけでなく)甘味も
感じられる。
・この歌は、若者(×に限らず ○だけでなく)お年寄り
にも広く歌われている。
分かりましたでしょうか。
「Aに限らずB」は、AとBを合わせると成員全部
を表わす。
図で示すと、こんな感じ。
┌─────┐
│┌─┐ │
││A│B │
│└─┘ │
└─────┘
要は、
「Aだけでなく、それ以外のBも含め全部」
というのが「Aに限らずB」の意味になるわけです。
一方、「AだけでなくB」は、Aに付け加えてBも
といった意味を表わす。
図で示すと、こんな感じ。
┌─┐┌─┐
│A││B│
└─┘└─┘
要は、
「Aに付け加えてBも」
というのが「AだけでなくB」の意味になるわけです。
このように、よく似た語彙や表現の違いを分析する
際には、
片方しか言えない例をできるだけたくさんあげて
みて、
その中から法則性を見出していくというのが
基本的なやり方です。
こうした分析を、めんどくさがらずに
頭に汗をかいてやっていくと、
日本語に対する観察力も身につきますし、
自身をもって授業に臨むことができ、
ひいては、学習者から信頼される教師へと
成長することができるのです。
ちなみに、
大阪YWCA専門学校『くらべてわかる日本語表現文型辞典』
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には、「に限らず」について以下のような指摘があります。
============================
Aに限らずB(もC)
聞き手が持っているAはCだという考え方に対し、より広い範
囲のBもC。(p.221)
============================
確かに、そうした聞き手の先入観などを加味した文だと
なお、「に限らず」感が際立ちますね。
日本語も、なかなか奥が深いです(^_^)
語彙の分析については、通信講座「篠研の検定対策」の
7月2日配信
「No.040 意味体系」
で詳しく述べています。
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