どうして韓国語母語話者は終助詞「よ」を過剰に使うのか。
以前読んだこちらの本から。
庵功雄・山内博之編
『データに基づく文法シラバス』
https://amzn.to/3vS8wox
この本は、言語コーパスを中心とした
客観的な言語データの分析を通じて、
今までにない文法シラバスの構築を
目指した論文集です。
今後は、現場の経験則だけではなく、
こうしたデータに基づいたシラバス
構築がどんどん提案されていくの
だろう。
そんなことを予感させる良書です。
さて、その中で私の目を特に引いた
のは、第12章
高恩淑
「対照言語学的知見から文法シラバス」
この論文の一節に、韓国人学習者の終助詞
「よ」の過剰使用が紹介されています。
確かに、韓国人学習者の中には、やたらと
「~ですよ」を使う学習者、いますよね。
私も以前からちょっと気になっていました。
この点について、本書では以下のように
述べられています。
=====ここから==========
日本語の文末表現には、聞き手の知らない
事実を伝えたり、自分の判断や意見、また
は命令や依頼を表したりする終助詞「よ」
があるが、韓国語にはこれに対応する形式
がない。(p.244)
=====ここまで==========
なるほど。
そうすると、文法的な負の言語転移が原因
ではないわけですね。
本書では、つづけて以下のような記述が。
=====ここから==========
音声的に韓国語の丁寧形(日本語の「です、
ます」に相当する)の用言語尾「-yo」と同
音であることから、韓国語話者において過
剰使用が見られる
(同上。ハングル表記省略。)
=====ここまで==========
なるほど。それが原因だったのか。
こういうことを知るにつけ、対照言語学って
やっぱり大事だなと思いますね。
確かに、韓国人同士が韓国語で話している
とき、よく「~よ」「~よ」と言っています。
(もちろん正しくは「~よ」ではなく「-yo」。)
そういえば、かつてハワイに移住した日本人の
ピジン英語では、be動詞を「~da」と言う、
という話を何かで見たことがあります。
これはまさに日本語の「~だ/です」からの
転移なんでしょう。
そう考えると、韓国人学習者の「よ」の過剰
使用もさもありなんです。
では、こうした誤用を防ぐためはどうしたら
いいのでしょうか。
本書では続けて以下のように述べられていま
す。
=====ここから==========
終助詞の「よ」は話し手の意思や判断、主
張などを表す感情表現であるため、話し手
によっては相手に強要するような印象を与
えることをきちんと説明することにより改
善が期待できる。(同上。)
=====ここまで==========
なるほど。
単純かもしれませんが、きちっと説明する
ということがまずは一番なんですね。
逆に言うと、きちっと説明しないまま流して
しまっていることが結構多いということ。
学習者の誤用には1つ1つ丁寧に対応して
いきたいものですね。