独坐大雄峰(どくざだいおうほう)

昔、中国に百丈禅師という高僧がいた。

百丈禅師にある僧が質問をした。

「いかなるかこれ奇特(きどく)の事」と。

奇特とは、めったにないこと、すばらしいこと。

修行をしていくとどんなすばらしい事が
あるのかと聞いたのである。

それに対し、百丈禅師は、

「独坐大雄峰(どくざだいおうほう)」

と返答。

大雄峰は百丈禅師がいた、中国に実在する
山の名前。

つまり、今自分がこの山にこうして坐って
いることだと答えたのである。

坐禅していると、どんなすばらしい事が
起こってくるのか、

なにかめったにないようなことが起きるのか
思うかもしれないが、

ここにこうして坐っている、このこと以上に
すばらしく貴いことはないのである。

ありがたいことは、めったにないことの
中にあるのではなく、

日々の当たり前の中にひっそりと佇んで
いる。

そこに気づくことが大切なのである。

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この話は、最近、とある若いお坊さん
(日本人)の方に教えていただいた
話です。

そのお坊さんは、この話を聴いて

「ぜひその大雄峰に登ってみたい。
 その山頂に登って、悟りの境地に
 至った百丈禅師に思いを馳せて
 みたい。」

そう思って、実際に中国まで行かれた
そうです。

そうして、宿泊先のホテルから車で
向かったところ、あいにくの雨。

しかも、土砂降り。

しかも、道も舗装されておらず、
車酔いしそうなほど車内は揺れた
そうです。

「うゎ、最悪。」

それでも、

「頂上まで行けば、きっと雲の上
 だろうから、いい天気だろう。」

そう思っていたのですが、

実は、この大雄峰、そんなに高い
山ではなかった。

山頂まで行っても、やっぱり土砂降り
だったそうです。

「なんだよ、せっかく来たのに。」

そう思っていたところ、同行していた
先輩のお坊さんが、ぼそっと。

「百丈禅師が座っていた時も、
 こんな雨が降っとったんかなぁ。」

それを聞いたお坊さんは、「はっ!」
と我に返ったそうです。

「大雄峰の山頂は、いい天気なはず。」

悟りの境地というのも晴れやかで、
清々しいはず。

そう勝手に思い込んでいた自分に気が
ついたと。

私達はつい「いい天気」「悪い天気」
というが、

そもそも天気にいいも悪いもない。

ただ晴れているだけであり、
ただ雨が降っているだけ。

それを、いいとか悪いとか言うのは、
単に人間の勝手な都合でしかない。

そんな自分本位な先入観に囚われていた
自分に気が付いたというのです。

百丈禅師も、きっと雨晴れに関係なく
ひたすら座禅をしていたに違いない。

それこそが、悟りの境地なのだと。

そして、

「ありがたいことは、何か特別な所
 にあるのではなく、

 日常の当たり前の中にひっそりと
 佇んでいる。

 そして、気づいてもらうのを待って
 いるのである。」

ということの意味を、しみじみと噛み
しめたそうです。

考えてみれば、日本語教育能力検定試験
の勉強も、

そして、日本語教師という仕事もまったく
同じ。

検定試験に合格すれば、たちどころに
何もかも変わる、というものではありま
せん。

周囲の状況は、何も変わらない。

ですが、勉強している最中から徐々に
徐々に自分の内面が変わり、

日本語や日本語教育への感度が上がって
いき、

そして、現場に立った時にさまざまな
気づきが得られる。

その気づきが学習者の課題であれば、
知識とスキルで改善にあたるし、

その気づきが学習者の成長であれば、
喜びに変わる。

その通過点に「合格」があるにすぎない
んですね。

そして、なにより「試験勉強ができている今」
こそ、この上なく尊いこと。

ありがたいことなのです。


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