直接発話行為と間接発話行為(講義資料No.034 語用論的規範より)
先日改訂した
【WEBで学ぶ通信講座
「篠研の日本語教育能力検定試験対策」】
https://www.kanjifumi.jp/become/distancelearning/
の講義資料「No.034 語用論的規範」で
「直接発話行為と間接発話行為」
の加筆部分を含んだ一節をご紹介します。
発話行為は語用論的規範の中でもしばしば
出題されるテーマです。
しっかりインテイクしてくださいね(^_^)
以下。
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直接発話行為と間接発話行為
発話行為には、遂行動詞(何らかの発話の効力を
明示的に述べる動詞(日本語教育学会(2005)p.317)
を使って発話通りの意図を伝える直接発話行為と、
発話内容とは別にその裏の意図を伝える間接発話
行為の2種類があります。
まず、直接発話行為から説明しましょう。(2)を
見てください。
(2)母:もう宿題済んだの?
子:うん、済んだよ。
この場合、「母」の発話と「子」の発話は一貫性
(=宿題実施の有無)も結束性(=「済んだ」)も
明示的に満たされています。
こうした発話行為のことを直接発話行為といいま
す。
直接発話行為では「済む」のような遂行動詞が使
われていることがその特徴ですが、
遂行動詞にはいくつかのタイプがあることが知ら
れています。
(3)遂行動詞のタイプ
・事実陳述型(representatives)
:例)「断言する」「抗議する」
・行為指導型(directives)
:例)「命ずる」「頼む」
・行為拘束型(commissives)
:例)「約束する」「誓う」
・心理表出型(expressives)
:例)「謝る」「感謝する」
・宣告命令型(declaratives)
:例)「宣言する」「命令する」
(日本語教育学会(2005)p.317)
では、以下の会話はどうでしょうか。
(4)母:もう宿題済んだの?
子:今テレビ見てるとこ。
この場合、先にあげた一貫性も結束性も一見
満たされていないようですが
(後で述べるグライスの協調の原理の中の
「関係の公理」にも反しているように見え
ます)、
実際には会話として成立しています。
なぜでしょうか。これは、「母」の発話は疑問文
でありながら意味としては「早く宿題をすませな
さい。」という命令の意味が含まれているからで
あり、
一方、「子」の発話も宿題と無関係なテレビを話
題に上げつつ、「テレビを見終わったら、宿題を
する。」と暗に言っているからです。
このように、間接的になされる発話行為(間接的
表現)のことを間接発話行為と呼び、
特定の会話場面の中で用いられることで醸し出さ
れる意味内容、すなわち「早く宿題をすませなさ
い。」や「テレビを見終わったら、宿題をする。」
といったものを会話の含意といいます。
実際の会話の中では、発話の意図すなわち会話の
含意が相手にうまく伝わらなかったために、
コミュニケーションが成立しなかったということ
もあります。
例えば、時間が知りたかったので友人に「時計
ある?」と聞いたところ、友人は「あるよ。」
と答えただけで先へ行ってしまったなどがそれ
にあたります。
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いかがでしたか。
検定試験では、これまで間接発話行為について
はよく出題されましたが、
(私の記憶が正しければ)令和2年に直接発話
行為が初めて出題されました。
出題者も考えていますね(^_^)
しっかりインテイクしてくださいね(^_^)