言語の曖昧性(講義資料No.005 一般言語学より)
先日改訂した
【WEBで学ぶ通信講座
「篠研の日本語教育能力検定試験対策」】
https://www.kanjifumi.jp/become/distancelearning/
の講義資料「No.005 一般言語学」の加筆部分
「言語の曖昧性」
をご紹介します。
この内容は、実際に平成30年に出題された
ものです。
しっかりインテイクしてくださいね(^_^)
以下。
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言語の曖昧性
◆曖昧性とは
曖昧性とは、「ある語連続(句・文など)が概念
的に異なる複数の意味を持つ」(日本語文法学会
(2014)p.3)性質を言います。
(26)を見てください。
(26)眠れる森の美女
(26)は「〔眠れる森〕の美女」と解釈すれば森
が眠っていることを、「眠れる〔森の美女〕」と解
釈すれば美女が眠っているというように、
異なる2つの解釈が可能です。
このように複数の解釈を持つ表現を「曖昧な表現」
といいます。
◆語彙的曖昧性と構造的曖昧性
語彙的曖昧性とは、語彙の多義性やたまたま音形
が同じである同音異義語が原因で複数の解釈が起こ
る曖昧性のことを言います。
(27)(28)を見てください。
(27)日記を読まれた。
(28)スーパーでかきを買った。
(27)の場合の「読まれた」は尊敬表現とも受身
表現とも取れます。
また、(28)の「かき」は「柿」「牡蠣」「花器」
など、複数の解釈が可能です。
このような語彙の性質に起因する曖昧性を語彙的
曖昧性と呼びます。
一方、先の(26)は二義文(両義文とも)とも
呼ばれるもので、
文構造の捉え方によって複数の解釈を生んでいま
す。
このように文構造(=統語構造)に基づく曖昧性
を構造的曖昧性といいます。
◆漠然性
曖昧性とよく似たものに漠然性があります。
漠然性とはもともと語や表現の意味の解像度が
低いために起こる曖昧性を言います。
(29)(30)を見てください。
(29)昨日、運動中に足をけがした。
(30)そのケーキ、ちょっとちょうだい。
(29)では「足」が右足なのか、左足なのか、
あるいは両足なのかはっきりしません。
これは、もととも「足」という語の意味の中に
左右や数についての指定がないからです。
また、(30)の「ちょっと」もその量について
指定されていません。
結果、思わぬ量を食べられてしまったというこ
とも起こり得るわけです。
このような曖昧性を漠然性といいます。
◆言語運用上の曖昧性
曖昧性の中には、言語運用に基づくものも
あります。
(31)(32)を見てください。
(31)A:一緒にご飯食べようよ。
B:いいよ。
(32)(授業後に学習者が教師に)
先生、自宅のメダカが死にました。
(31)の「いいよ」は「食べる」と「食べな
い」の両方の解釈が可能です。
これは、「いいよ」の解釈についての情報が不
足していることが原因です。
また、(32)のように発話内容は1つに解釈で
きても、発話者の意図がはっきりしないため
はっきり理解できないといったこともあります。
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いかがでしたか。
「言語の曖昧性」、理解できましたか。
しっかり勉強してくださいね(^_^)