音韻論はローカル、音声学はグローバル。
前回、
「アンポンタン」
という語を使って、音韻論と音声学
の違い、
そして、
「意味の違いに関わる音の最小の単位」
としての【音素】、
「発声方法の違いによる音の最小の単位」
としての【単音】
について解説しました。
今回はその続きです。
音韻論は、
「意味の違いに関わる音のレベル」
です。
ここで重要なのは「意味の違い」の部分。
[m]でも[n]でも[N]でも、日本人の耳にはすべて「ん」と聞こえるわけですが、
これは、日本人の頭の中に日本語の音韻
地図があるためです。
簡単に言うと、無数にある言語音を、
効率的に処理するために、
私達は、五十音図の子音配列にほぼ従って
仕分けているわけですね。
その結果、「ん」の場合、
「1拍分の鼻音は全部『ん』。
だから、[m]も[n]も[N]も全部『ん』。」
と認識するわけです。
で、この認識は日本語の音韻地図を持った
日本人ならではであって、
他の言語を母語とする外国人が同じ認識を
するとは限りません。
なぜなら、彼らは彼らで別の音韻地図を
持っているからです。
つまり、音韻論というのは、言語によって
それぞれ内容が違う。
つまり、すこぶるローカルなのです。
その結果、
例えば、私たちが授業中、うっかり
「アンポンタン」とか「とんちんかん」
とか言った時に、学習者から、
「先生、今の『ン』は[n]ですか、[m]ですか、
[N]ですか。どれですか?」
と言うような、私たち日本人には一見
何のことやらわからないような質問が
飛んでくることがあるわけです。
一方、音声学は、
「発声方法の違いに関わる音のレベル」
ここで重要なのは「発声方法の違い」の
部分。
要は声の出し方ですので、これは極めて
客観的。
例えば、子音であれば、すべて
▼声帯振動の有無
▼調音点
▼調音法
の違いによって仕分けることができます。
例えば、[p](パ行の子音)は、
日本人であっても、アメリカ人であっても
インド人であっても、アフリカ人であっても、
▼声帯を震わさず
▼両唇で
▼息を破裂させるように
発音すると、必ず[p]の音が出ます。
つまり、音声学はグローバルなわけです。
「じゃあ、世界中の子音や母音を発声方法
の違い別に整理して表にすればわかりや
すいじゃね?」
というわけで生まれたが国際音声記号。
略してIPA。
これです。
IPA 国際音声字母(記号)
http://www.coelang.tufs.ac.jp/ipa/
特に、上記の東京外大のサイトはとても
便利。
音声記号をクリックすると、口腔断面図
が表示されて、音声も聞けます。
こちらの動画で使い方を見てみてください。
便利ですねぇ(^_^)
ぜひ使ってくださいね(^_^)