音声学の基本は「アンポンタン」が教えてくれた。
音声学の基本中の基本と言えば、
▼音声学と音韻論の違い
▼音素と単音の違い
をあげることができます。
それぞれの違い、ちゃんと説明でき
ますか。
こういう知識は、あまりにも基本過ぎて
逆にスルーしてしまう方がいますが、
こういう所をしっかり抑えておくという
ことが、音声学の本質を理解し、
どんな問題にも適切に対処できるために
とても重要なんですね。
で、それぞれの違いがどうなのかというと、
例えば、日本語の「ん」の音で考えて
みましょう。
皆さん、「アンポンタン」と言ってみて
ください。
ここでは、「ん」の音が3つあります。
では、「アンポンタン」とナチュラル
スピードで言いながら、
それぞれの「ん」の音を発音する時に
・口が開いているか閉じているか
・舌が上あごのどこにくっついているか
をよく観察してみてください。
音声学に強くなるためには、何度も
声に出して言うこと、
そして、自分の声や発声の際の口の
動きをよく観察することが重要です。
いかがですか。
何度も何度も発音してみると、
「アンポンタン」
のそれぞれの「ん」の音の出し方が
違うことに気づかれるかと思います。
最初の「ん」の音は、
・必ず口を閉じる
・舌は上あごにつかない
はずです。
実は、この時の「ん」を音声記号で
表すと[m]となります。
つまり、マ行の子音と同じなんですね。
同様に、真ん中の「ん」の音は、
・基本口を開ける
・舌先が上の歯茎の裏側につく
はずです。
この時の「ん」を音声記号で表すと
[n]となります。
つまり、ナヌネノ(ニ以外のナ行)
の子音と同じなんですね。
最後の「ん」の音は少し難しいの
ですが、
・基本口を開ける
・奥舌が口蓋垂(いわゆるのどちんこ)
につく
はずです。
この時の「ん」を音声記号で表すと
[N]となります。
文末・語末の「ん」はこの音になります。
いかがでしょうか。
つまり、私たち日本人は、「アンポンタン」
の「ん」の音はすべて同じ音と認識
しますが、
発声方法の違いを詳しく観察してみると
「ん」にもいろいろな音があるという
ことがわかるわけです。
とはいえ、私たちは「ん」の音を、
[m]と言おうが、[n]と言おうが、
[N]と言おうが、
それによって言葉の意味が変わるという
ことはありません。
とすると、私たちは音声というものを
2つの側面に分けて考えなければなら
ない。
1つは、
「意味の違いに関わる音のレベル」
もう1つは、
「発声方法の違いに関わる音のレベル」
前者を扱う学問が音韻論で、
後者を扱う学問が音声学
となります。
で、音韻論のうち、
「意味の違いに関わる音の最小の単位」
を【音素】といい、
音声学のうち、
「発声方法の違いによる音の最小の単位」
を【単音】というわけです。
この辺り、もう少し話がありますので
続きは次回お話しますね。