2誌合同。「日本語教育有識者会議」を読む(10)
引きつづき、
「日本語教育の質の維持向上の仕組みに
ついて(報告)(素案) 」
https://bit.ly/3hxTout
を2誌合同で解説。
2誌連番で解説いたしますので、片方しか
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下記サイトをご参照ください。
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また、かなり膨大な資料ですので、かいつま
んだ解説となることを予めお伝えしておきま
す。
詳しくは、上記資料をご参照ください。
第10回は、
「4.「就労」「生活」類型への対応」
です。
そのうち、今回は
「就労者向けの日本語教育課程を置く
機関に関する評価の在り方」
を扱います。
以下、読んでいきましょう。
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(就労者向けの日本語教育課程を置く機関に
関する評価の在り方)
○ 「就労」類型の認定機関は、外国人を雇
用する事業主その他の関係者と連携した
教育課程の編成等について相当の実績を
有するとともに、
それらの者との連携体制を確保すること
などを検討する。
また、就労者向けの日本語教育の目的を踏
まえた認定基準や審査基準等の在り方につ
いて、
組織の概要や理念・使命、経営状況、遵法
状況、教育上の基本組織など他の類型と共
通する項目とともに、次のような検討を行
う。
・教育課程の習得レベルについては、「日
本語教育の参照枠」と関連付けた習得レ
ベルB1以上に応じた就労者向けの教育
課程の授業内容・方法、授業時数など
・教員資格、目的や教育課程等を踏まえた
教員配置、例えば、教員要件について、
就労や就労のための研修を目的とした学
習者に対する日本語教師経歴(経験年数
や指導時間数)
・外国人を雇用する事業者や産業界のニー
ズを踏まえた教育プログラムを設定でき
るコーディネーターや、
登録日本語教員の設置、就労支援を行う
機関との連携体制等
・コーディネーター等には、就労や研修を
目的とした学習者に対するコースデザイ
ン等の実績を求めること
・組織の質の維持向上に関する取組の評価、
自己点検評価、第三者評価、情報公開な
ど
・留学生を対象とした教育課程を置く機関
が就労者を対象とする課程を置く場合や、
収容定員等、施設・設備等の評価につい
ては、
上記の要件とともに、就労者向けの学習
環境を念頭に、それらの在り方について
引き続き検討する。
〇 制度開始以降も、実態把握を進めつつ、段
階的に認定の対象となる機関を広げていく
ことも考えられる。
その際には、技能実習制度や特定技能制度
等の見直しなどの関連施策の状況やそれら
の施策との連携を適切に図った上で、
実効性のある形で制度設計していく必要が
ある。
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引用の最後に、
「技能実習制度や特定技能制度等の見直しな
どの関連施策の状況やそれらの施策との連
携を適切に図った上で」
とあるので、
ここでの「就労」は、主に技能実習生や特定
技能の外国人を指すと思われます。
つまり、ブルーカラーの外国人ですね。
そこで気になるのが、なぜ十把一絡に習得
目標を
「日本語教育の参照枠」と関連付けた習得レ
ベルB1以上
と設定するのかということです。
なぜなら、対人サービス業種かそうでないか
など、
就労者の業種によって求められる日本語力が
かなり異なるからです。
B1のレベルは、
「仕事、学校、娯楽でふだん出合うような
身近な話題について、共通語による話し
方であれば、主要点を理解できる。
身近で個人的にも関心のある話題につい
て、単純な方法で結び付けられた、脈絡
のあるテクストを作ることができる。」
です。
自立した言語使用者にまで高まるためには
相応の教育コストや学習時間が必要です。
それを、技能実習や特定技能に関わるすべ
ての業種に適用しようとすれば、
「うちの会社では、そこまでの日本語力は
必要ない。
そこまで教育コストはかけられない。」
という企業が出てくるのではないかと
思います。
それでも、本制度を実行しようとすれば、
「じゃ、教育コストは国や自治体が被って
ね。」
と企業は言いかねない。
しかし、そんな予算は今のところ国も自治
体もない。
そもそも本素案も「日本語の参照枠」も
委員名簿を見ると、ほとんどが大学教員や
その日本語教育関連機関の職員で、
産業界や厚生労働省の関係者は参加して
いません。
制度設計の段階で産業界や厚生労働省が
入らなければ、かりに素案が固まったと
しても、
「何?この案。聞いてない。
こんなんじゃ、協力できない。」
となりはしないか。
どこまで、いや、本当に実効性のある
制度設計ができるのか。
今後も注目したいと思います。