褒めに対する返答の表現形式
前回に引き続き、
通信講座講義資料No.077「談話理解」から。
皆さんは、人に褒められた時、どう返答しますか。
例えば、着ている服を褒められた時。
日本語の教科書では、よく
日本人:デイビッドさん、日本語が上手ですね。
デイビッド:いえいえ、まだまだです。
のような会話をよく目にしますが、それだけ
ではありません。
以下、「談話理解」から。
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では、褒めに対する返答には、どのような種類
があるのでしょうか。
これには大きく肯定応答(21B1)、否定応答
(21B2) 、回避(21B3)があります。
(21)A :素敵なお召し物ですね。
B1:ありがとうございます。
B2:いえいえ、そんなことないですよ。
B3:Aさんのスカーフこそ素敵ですよ。
清水(2009)は、上記3種類の内訳を下の表に
まとめました。
褒めに対する返答のストラテジー
肯定型:感謝・同意・喜びの表明・肯定的
コメント
回避型:ほめ返し・冗談・説明・功績の移譲・
疑い・トピックの変更・否定的コメ
ント・提供・嫉妬の表明・無返答
否定型:不同意・後悔の表明・困惑の表明
実際の授業では、同化教育に繋がりかねない
ことから学習者に特定の表現のみを指導する
ことは避け、
いくつかの表現を紹介しつつ、自分なら日本語
でどのように言うかを検討させ、それに合った
表現を提供するようにするといいでしょう。
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ここでの「同化教育」とは、簡単に言うと、
「日本人と同じように振舞え。」
というような教育のことです。
例えば、上記の教科書のように
「いえいえ、まだまだです。」
のような謙遜の返答しか教えないという
ことですね。
実際、日本人でも肯定型、否定型、回避と
いろいろな返答をするわけですし、
学習者も自分の考えに沿った返答をしたい
でしょうから、
1つの表現しか教えないというのは、
やはりよくないわけです。
そう考えると、同化教育はかなりステレオ
タイプなものの押し付けといえそうです。
とはいえ、これは教科書が悪いわけでは
ありません。
紙面の関係などもあるわけですから。
ですので、私たち教師は、
「教科書の会話例は、あくまでもサンプル。」
と考え、
授業の中で肯定型や回避型の表現も提示したり、
講義資料にあるように、
「自分なら日本語でどのように言うかを検討
させ、それに合った表現を提供する」
というような柔軟な対応が必要なのです。
「教科書を教えるのではなく、
教科書で教える。」
とよく言われますが、
教科書を使っていかに広がりのある授業を
展開するかが、教師には求められるわけ
ですね。
そのためにも、
「実際の日本人の言語行動はどうなっている
のか。」
ということに、常にアンテナを張っておく
必要があるのです。
とはいえ、一人であれこれ論文を探し回る
のは、大変。
その点、篠研の通信講座なら、そのあたりの
こともしっかり書かれているので、
試験対策にも、普段の授業にも、ひとまず
これで充分かと思います。
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