実はおもしろい検定試験(思わぬ濡れ衣を着せられる?)
ものの言い方をちょっと間違えてしまった
ばかりに、
思わぬミスコミュニケーションに発展して
しまうということが、世の中ままあるもの
です。
ましてや、日本語学習者は日本語力が限定的
なわけですから、なおさら。
それだけに、私たち日本語教師は責任重大。
今回は、思わずヒヤッとさせられる問題を
ご紹介いたします。
令和2年試験試験III問題1から。
以下。
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問題1 次の文章を読み,下の問い(問 1~5)
に答えよ。
(本文中略)
また,テンス・アスペクトの諸形式は,運用
の観点からも留意すべき点が少なくない。例え
ば,学習者が試着しようと思った服が既に破れ
E
ていたときに,店員に「すみません,破れまし
た」と言ってしまうような誤用は重大なコミュ
ニケーション上のトラブルを引き起こす可能性
がある。
問 5 文章中の下線部Eに関して,こうした誤用
を避けるために必要なテンス・アスペクトの
知識として最も適当なものを,次の 1~4 の
中から一つ選べ。
1 「破れました」と言うと,目的を持ってある
動作を完了したことを表す。
2 「破れました」と言うと,直接その場面を確
認したということを表す。
3 「破れました」と言うと,出来事に対する話
し手の残念な気持ちを表す。
4 「破れました」と言うと,一回的な出来事で
はない属性や性質を表す。
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いかがでしょうか。
正解は、2番。
動詞のタ形は、単に過去を表すだけでなく、
このような意味を表すことがあるので、
注意が必要なんですね。
これを知らないと、学習者は思わぬ濡れ衣
を着せられてしまう可能性があります。
ですので、学習者には、
「こういう時は、『破れていましたよ』と
言うんですよ。」
と、しっかり伝えましょう。
ところで、日本語のタ形には今回の他にも
思わぬ用法があります。
例えば、下の例。
例)以前、ここに喫茶店があった。
これ、単に以前喫茶店があったことを
述べているだけでなく、
同時に「今はもうない。」ということを
表しているんですね。
こうしたタ形の用法は中級以降で学習
すると思いますが、
文法項目として取り上げているテキスト
も少なく、見過ごされがちですので、
私たち教師の方でしっかりチェックして、
授業で扱いましょう。