実はおもしろい検定試験(罪を犯さないと触れない文型)
今まで当たり前のように授業で扱って
きた文型が、
実は、日常生活ではほとんど使われて
いなかった。
コーパス言語学研究の発展で、そんな
ことまでわかってきています。
ちなみに、コーパス言語学とは
「自然言語をデジタルデータ化した
もの」
今回は、そんな研究成果の一端を垣間
見ることができる問題を紹介します。
平成27年の問題から。
以下。
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次の文章を読み,下の問い(問1~5)に答えよ。
(問題文前略)
また「なければならない」には類似する形式
E
として「なければいけない」などがある。
(以下、略)
問 5 文章中の下線部Eについて,「なければ
ならない」と「なければいけない」の差異に
関する記述として最も適当なものを,次の
1~4の中から一つ選べ。
1 「なければならない」は丁寧形にできないが,
「なければいけない」は丁寧形にできる。
2 「なければ」の部分が縮約した「なきゃ」と
いう形が現れやすいのは「なければならない」
である。
3 日本語学習者用の教科書では「なければなら
ない」のほうが多く取り上げられているが,
話し言葉の使用頻度は「なければいけない」
のほうが高い。
4 「なければならない」のほうが話し言葉的な
ニュアンスが強く,「なければいけない」の
ほうが書き言葉的なニュアンスが強い。
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いかがでしょうか。
正解は、3番。
実は、初級の授業では、動詞のナイ形を
導入する時に、それと関連する表現として
「~なければなりません(なければならない)」
を学習することが多いんですね。
ところが、実際の日本人はこの表現を普段の
生活でほとんど使っていない。
代わって、
「~なければいけません(なければいけない)」
の方を使っている。
これは、現場経験者の方にとってはなかなか
ショックなことと思います。
「私たちが今までやってきたことは
いったい何だったのか!」
こうしたことが分かってきたのは、冒頭でも
お伝えした通り、コーパス言語学研究の発展
があったから。
コーパス言語学の発展によって、特定の
文型がどのような場面でよく使われているか
ということが明らかになってきています。
これによって、今、現場の常識がどんどん
塗り替えられているんですね。
では、この「~なければならない」は
実際どのような場面で使われているのか。
典型的なのは、法律の条文。
それから、法廷の判決文。
そう考えると、この「なければならない」
は、罪の1つも犯さないとなかなか目に
触れることのない文型と言えるかもしれません。
できれば、私の学習者には目に触れて
ほしくない(笑)
こうした情報は、下記書籍に詳しく述べ
られています。
中俣尚己(2014)『日本語教育のための文法
コロケーションハンドブック』くろしお出版
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